eコマースはそもそも多くの包装と輸送を必要とするビジネスであるが、eコマース企業は、商品の配達方法を常にコントロールできるとは限らない。しかし、この包装と輸送の過程において、よりサステイナブル(持続可能)な方法は存在し、その恩恵は努力する価値があるといえよう。

 

スペイン、ポルトガル、オランダでオンラインストア用のデジタル配信管理ソリューションを展開するShiptimizeのCEO、Mark Bastiaanssen氏は「eコマースの成長が、近い将来止まる、ということはない」と語った。

「現在、超地元密着の倉庫からドローンでの配送や、環境に優しい都市配送など、多くのモデルがテストされている」。「これらの全てのイノベーションは、配送の時間やコストの削減を目標に展開している。燃料費は、依然として輸送の主なコスト要素だ。電気自動車の大量導入は、そのコスト構造をすっかり変えるだろう」と述べた。

 

いずれは、eコマースを取り巻くシステムがより環境に優しいものになる可能性があるが、移行するタイミングを予測するのは困難だ。

 

Bastiaanssen氏は「システム移行は起こるだろう。問題は、いつなのかという点だ。それは、物流業界全体が変化し、環境への負担が大幅に軽減される時になるだろう」と語った。

 

環境に配慮したパッケージ

eコマースの環境への影響の大部分を占めるのは“包装方法”の問題であり、企業が取り組みを始めるにはよい着眼点である。

 

米国の梱包資材会社Ecology Packagingのパートナーを務めるAliece Dorsch氏は「環境に優しい包装の採用は、ささやかな取り組みであるが、変化をもたらすことができる方法の1つだろう」と述べている。

 

eコマースの成長に伴い、包装の大幅な増加や、その環境に与える潜在的な影響も大きくなるのだ。

 

米国の梱包資材会社Salazar Packagingの社長Dennis Salazar氏は「eコマースが登場する前は、製造業者は12個の製品を1つの箱に梱包し、小売店に出荷していた。小売店は、その箱を開梱し、空になった箱を潰しリサイクルしていた」と言う。

しかし「現在は、これらの12個の商品を、DTCモデル(ネット直販)で消費者に直接配送している。そのための12の個々の箱に梱包されることになる」。そして、「その12個に分かれた箱は、12個用の箱より明らかに小さいものになるだろうが、それらのうちのいくつが適切な方法でリサイクルされるだろうか」と続けた。

 

包装をより地球に優しいものにしたいと考える企業は、現状を分析することから始めるべきだ。そして、自社の梱包を改善する方法を検討すべきである。

 

eコマース企業は、現状を評価することから始め、次に、より地球に優しい梱包資材を採用することから始めなければならない、と語るのは、Ecology PackagingのDorsch氏。そして、「梱包資材の改善が難しい場合は、より小規模なサステイナブルな取り組みから徐々にスタートし、持続可能なビジネスの実現に向けて努力し続けることを公約すべきである。日々、取り入れやすい新たなサステイナブルな方法の選択肢は増加している」と語った。

 

企業が自社にとっての「サステイナビリティ(持続可能性)」の正確な定義と、その達成方法を決定することは有効である。

 

「5人の人々に対し、『サステイナビリティ』とは何を意味するかという質問をすると、5つの異なる答えが返ってくる可能性がある」とSalazar氏。「たとえば、リサイクル可能性、再利用可能性、リサイクル成分、リサイクル製品認証という回答になるだろうか。通常、我々は、クライアントにとって何が重要かを特定し、パッケージ設計と仕様に組み込む。また、最小限の梱包材を使用した控えめなデザインにし、見やすく、魅力的な方法で、商品が保護され届くように常に注力している」と続けた。

 

eコマース企業が、自社を差別化できるもう一つの方法は、環境に優しく、サステイナブルな成分、なおかつ、リサイクル可能な材料からなる梱包材を選ぶことだ。

 

「その極めて大きい悪影響について情報を得るにつれ、プラスチックやビニールに対する懸念を除外できない」とDorsch氏は語った。「ある情報ソースによると、毎年900万トン以上のプラスチックが海洋投棄されているという。さらに、マイクロプラスチックがいたるところに堆積している。まだ、マイクロプラスチックの悪影響を完全に把握してはいないが、良くないことは明白である」とのこと。

 

どこから取り組みを始めれば良いかわからない企業には、環境に配慮したパッケージを提供するサプライヤーが存在する。

 

Salazar氏によると「始めは、経験豊富なグリーンパッケージング・サプライヤーと提携し、効率的にスタートを切ることが望ましい」と言う。「すでに自社に既存の梱包パッケージが存在する場合は、再設計と再構築を検討してほしい。ビジネスは成長し進化する。出荷する製品は、形状、サイズ、構造によって変化する。自社で使用している包装が数年以上前のものなら、ブランドアイデンティティを損なうことがない範囲で、デザインや機能をマイナーチェンジする時に来ているのかもしれない」と語った。

 

グリーンパッケージ化における企業の小さなステップの積み重ねは、やがて大きな変化をもたらすだろう。

 

Dorsch氏は、「毎年、驚異的に進歩している」と語った。「サステイナブルペーパーが使用され、配送業界はますますエコフレンドリーになってきている。これは非常に素晴らしいことである。加えて、コーンスターチ、サトウキビ、海藻などからつくられた梱包資材もある。これらの資材は、今まさに新しい代替案となる、エキサイティングで、大いに期待できる方法だ」と述べた。

 

配送ニュース

”配送”はeコマースの心臓部であり、業界をより地球に優しいものにするためのあらゆる活動は、まず配送に焦点を当てなければならない。

 

ShiptimizeのBastiaanssen氏は、「原則はシンプルだ。距離、スピード、重量によって輸送コストと環境への影響が決まる」と語った。「顧客の都合のよい場所で荷物を受け取る配送オプションを提供することで、通常よりコストを抑え、環境への影響も減らすことができる。運送会社は、何度も玄関口へ配達するために何マイルも移動する必要はない」。

 

配送にかかる時間を長めに設定した、より環境に優しい配送オプションの提供も、EC企業が取り入れやすいもう一つの手段であろう。このオプションは、配送プロセスのグリーン化の責任の一部を消費者の手に委ねるものだ。消費者が、「サステイナビリティが自分にとってどれだけ重要であるか」を判断するのである。

 

「時間的な制約がなければ、『ゆっくり配送』というオプションは問題なくうまくいくだろう」とBastiaanssen氏。「物流会社に対する配達時間に関するプレッシャーが減れば、配達の効率性を最大限化する余裕が生まれる。結果として、配送1回あたりのコストと距離が削減される。また、自転車によるローカル配送も増えている。これは必ずしもすべての配送に対する解決策になるとは限らないが、配送サービスを利用する際に環境に対する意識を持つことによって、環境への悪影響を減らすことができるのではなかろうか」。

 

※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の6/24公開の記事を翻訳・補足したものです。