「お得感」は誰しもが好むものであり、それはeコマースの買い物客も例外ではない。クーポン、割引などのオファーは、新規顧客を引き込み、既存顧客のロイヤルティを向上させることができる。

 

実際、Vericast(マーケティングソリューションを提供する米国企業)が行った最近の調査によると、過去6ヶ月間において、クーポンや割引があるという理由で、83%の消費者が少なくとも1つの商品を購入、62%はそのブランドから初めて買い物をしたという。この数字は、買い物客が、おそらくこれまで以上に、少なくとも一部はお金を節約できるという理由で、ブランドや商品に惹かれている側面があることを示している。

 

「割引やクーポンによって、従来型実店舗と同様に、eコマースビジネスの売上やブランド認知度を高めることができる」と、Vericastのブランドマーケティング担当副社長であるSarah O’Grady氏は話す。

 

同氏は次のように説明する。「店内でのショッピング体験が消費者に正常感をもたらす一方で、eコマース事業者にとっては、買い物客を自社のビジネスに惹きつけていたものを足掛かりにして、オンラインでの買い物を継続してもらうための素晴らしい機会が生まれている」。

 

消費者が、割引や節約により高い価値を感じるようになったことで、ブランドはターゲットを絞ったタイムリーで関連性の高いオファーで消費者の要望やニーズに応えることができ、消費者とより深くつながることができる」。

 

購買の促進

消費者は、絶えず広告や購入の機会にさらされており、割引は、面倒で時には操作が難しいデジタルの世界において、購入を決断させるのに役立つ。

 

Diginius(オンラインでの売上拡大に特化したオンラインソフトウェアとサービスを提供する英国企業)のCEOであるNate Burke氏は、「特に競争の激しい、この種の加速するデジタル環境においては、割引やクーポンは強い切迫感を生み出し、迅速な意思決定を促して、販売完了の見通しを立てることができる」と述べる。

 

「割引やクーポンによって、新規顧客や既存顧客と向き合うだけでなく、ユーザーとの関係を深め、ユーザーと事業者をつなぐメーリングリストやニュースレターに誘導し、顧客とのコミュニケーションを前進させることができる」とBurke氏。

 

消費者の意思決定の手助けとなる割引によって、消費者のショッピングジャーニーが容易なものとなり、スムーズに購入へと導くことができる。

 

「今の買い物客は、実店舗で買い物をするだけではない」と、Quotient Technology(デジタルクーポンを提供する、米国のデジタルメディア企業)のeコマース・スポンサー付き検索部門のマネージングディレクターKen Platt氏は語る。

 

「買い物客は、オンラインで購入し、クリック&コレクトを利用し、商品を配送してもらう。最終的に買い物客は、自分がしたいように買い物をするようになるだろう。そうした消費者のジャーニーをできる限りフリクションレスなものにできるかどうかは、小売業者にかかっている。

 

「もしeコマースやオムニチャネル企業が、消費者が実店舗でクーポンと商品を引き換えるのと同じように、自社プラットフォームでクーポンを利用できるようにすれば、消費者が次に何かを購入する際に、自社プラットフォームを選択させる魅力的な要因とになるだろう」と同氏。

 

時として割引は、消費者を購入に踏み切らせるために必要なものとなる。なぜなら、割引は出費を減らし、買い物客に何か新しい商品を試そうという気持ちにさせるからだ。

 

「従来の実店舗での販売と同じように、eコマースクーポンは、購入を決めかねている顧客に決断させるための戦略的な方法となりえる」とKaspien(eコマース用のソフトウェアとサービスを提供する米国企業)のマーケティングマネージャーであるKatie Capka氏は語る。

 

同氏は次のように話す。「具体的には、Amazonでは、クーポンはリスティングのパフォーマンスを向上させる効果的な方法であり、クーポンが終了した後もその効果は継続する。Amazonの検索アルゴリズムA9は多くの要素を考慮するが、その中の1つにリスティングのコンバージョン率がある」。

 

「クーポンはリスティングのコンバージョン率を高める確実な方法であり、これによりAmazonの検索アルゴリズムA9が、そのリスティングを検索結果ページでより上位に表示する価値のあるものとして認識する。そして、結果的に、プロモーション終了後も売上に貢献する」。

 

ロイヤルティの構築

割引やクーポンは、消費者の購買促進に加え、ブランド・ロイヤリティを高めることにも役立つ。ロイヤリティが生まれれば、次にはクーポンがなくとも、将来的に顧客を再来店させるのに役立つ。

 

「今日の企業は、顧客に価値を示す必要があり、オファーやクーポンはそのための方法の一つである」とFormation(人工知能を活用したマーケティングプラットフォームを開発する米国企業)のマーケティング担当上級副社長であるTy Lim氏は語る。

 

「ロイヤルティプログラムや値引きを利用して、エンゲージメントの高い長期的な顧客を獲得することで、eコマース企業はスケーラブルで効率的な方法でビジネスを成長させることができる。企業の既存顧客に対する販売可能性は60〜70%であるのに対し、新規見込み客への販売可能性はわずか5〜20%だ」とLim氏。

 

割引は、顧客に企業の商品や理念を紹介するものである。そして、それが結果的に、顧客が自発的に戻ってくるほど十分に顧客を魅了できるかもしれない。

 

「割引やクーポンは、表面的には商品を販売し顧客を引き付ける方法であるが、本当の目的はロイヤルティを構築することだ」と、Swiftly(エンタープライズソフトウェアを開発する米国企業)のCTO(最高技術責任者)兼共同設立者であるSean Turner氏は説明する。

 

「eコマースと実店舗購入の境界線は曖昧になってきており、適切なテクノロジーソリューションがあれば、小売業者はブランドからの資金提供によるクーポンを買い物客に提供し、最終収益を損なうことなく販売数量を増加させることができる。小売業者は価値を提供する方法を見つけなければならず、できる限りの割引を提供しなければ、せっかくのチャンスを無駄にすることになる」と同氏は主張する。

 

真の価値の提供

クーポンや割引は、テクノロジーやショッピングのトレンドとともに進化しているが、変わらないことが一つある。それは、消費者が「お得感」を感じたいと思っているということだ。

 

「適切なコミュニケーションによって、クーポンや割引はご褒美のように感じられるはずだ」とUeni(企業向けにオンラインツールを提供する英国のハイテク企業)のSEOマネージャーであるMatthew Reevy氏は語る。

 

「消費者の視点で考えると、リアルで具体的な価値があるものを非常にお得に購入していると感じたいはずである。企業が単に古い在庫品を処分しようとしているだけだと感じたり、プロモーション価格が他のオンラインショップで目にするものと大差がない場合には、おそらくその商品を気に掛けることはないだろう」と同氏。

 

最終的には、クーポンや割引は進化しても、eコマース販売にとって消えることのないものとなるだろう。

 

Reevy氏は次のように述べる。「クーポンや割引は、今や期待されるものとなっている。一旦そうなれば、クーポンや割引は、例外的なプロモーションではなく、eコマース企業がビジネスを行ううえでの通常コストになるかもしれない」。

 

 

※当記事は米国メディア「E-commerce Times」の6/8公開の記事を翻訳・補足したものです。