グローバルでも国内でも、Amazonにおける不正レビュー、詐欺レビューが増加してきている。その影響でAmazon自体の信頼度も揺らぎかねない状況にもなりつつあり、Amazonも手をこまねいているわけではない。中国のセラーの増加がその状況に拍車をかけているとの説もあるが、それには確固たる証拠はない。

 

偽レビューの取引が非合法かどうかは分からないが、そのような慣行は明らかに非倫理的であり、不正な行為が発見された場合には悪影響を受けることになるとAmazonは警告している。現金報酬や手数料と引き換えに、虚偽のレビュー取引を行っている買い物客や販売者は、Amazonに発見された場合、法的措置に直面する可能性がある。

 

オンラインの買い物客は、偽レビューの取引が盛んな市場では、主要なデジタルストアサイトやソーシャルメディアで商品を購入するように、買い物客を誘惑しようとすることに注意していく必要がある。このような最新レビュー詐欺には、Amazonの販売者の間で運営されている秘密の偽レビューネットワークが関与しているという。

 

Amazonは、偽レビュー詐欺に関与した者に対して法的措置を取っており、今後も継続すると述べている。Amazonは、顧客がより質の高い情報に基づいた購買決定ができるよう、真実、かつ、関連性の高いレビューを参照できるようにしたいと考えているのだ。

 

関連するデータはAmazonから公開されていない。Incumetrics(米国のコンサルティング企業)の社長である Robin Gaster博士によると、何年も前からレビュー屋についての報告が表面化しているという。

 

Amazonは、散発的に、レビュー屋(報酬を受け偽レビュー投稿行為を行う人)に対して公然と行動を起こし、また、かなりランダムに非公開でレビューを削除している。また、例えば、悪意の行為者が偽レビューによって、競合相手を非常に高く評価することでAmazonのシステムを操作しているという信憑性の高い報告もある。Amazonは、偽レビュー行為を行っていることを理由に彼らを追放する可能性がある、と同氏は説明する。

 

「全体として、これが広範囲にわたる問題であることは確実であると言えるだろう。また、最近、Amazonは、レビュアーがコメントの必要がない星の数だけによる評価を投稿できるようにしたことで、問題をさらに悪化させた。これは、英語のスキルを必要としないこともあって、偽レビューを大いに助長している」とGaster氏は語った。

 

 

違反の痕跡

マーケターは、現在、絶えず変化するデジタルストアフロントの世界では、リファラルと商品レビューがオンライン購入を成立させるための金メッキの誘惑であることを知っている。しかし、消費者は、虚偽のレビューが信頼を壊す一番の近道の一つと見なす傾向がある。調査によると、虚偽のレビューによって激怒した消費者は、その事業者から購入することはないだろう。

 

「長期的には、偽レビューはプラットフォームに対する顧客や販売者の信頼を損なうが、信頼は長期的な優位性のためには絶対的に重要だ。顧客や販売者が去り始めることは、Amazonにとって問題であり、一旦、顧客や販売者離れが始まると、元に戻るのは非常に難しいだろう」とGaster氏は述べた。

 

The Washington Postは、2018年にAmazonでの電子機器に関するレビューの61%が偽物であるという調査結果を報じている。また、他の数多くの記事からも、Amazon、eBayやその他における信憑性のない商品レビューの掲載が明らかになっている。

 

英国の消費者権利団体Which? (「Which」)は今週、繁盛している偽レビュー業界によってAmazonのマーケットプレイスが操作されていると報告した

 

Whichの調査によると、商品の評価を上げようとしているAmazonの販売店向けに、偽レビューを販売しているウェブサイトがあるという。一例として、ドイツのウェブサイトAMZTigersが1,000件のレビューを10,950USドルで販売していたことが明らかになった。別のウェブサイトでは、購入者が熱望する自社商品へのAmazon’s Choice(アマゾンチョイス)のステータスを二週間以内に獲得するための協力を申し出ていた。

 

Whichは、偽レビュー詐欺の数々の事例を公開した。例えば、あるサイトでは、1件18ドルでレビューを販売していた。別のサイトでは、Amazonのレビュアーの連絡先やソーシャルメディアの詳細情報が売りに出されていた。一部のサイトでは、レビューと引き換えに、無料あるいは割引された商品提供まで要求していた。

 

Whichの調査報告では、「インセンティブレビュー」と呼ばれる、取引においてよく使われる慣行についても指摘している。この慣行は、払い戻し金やコミッションと引き換えに、消費者が商品レビューを書くことを募集したり、奨励したりするものだ。

 

 

Amazonは無関心ではない 

Amazonのガイドラインでは、販売者がサードパーティーのレビュー獲得のために金銭を支払うことを明確に禁じている。同社は、そのような詐欺を根絶するために気を配っていると主張する。

 

「我々は偽レビューを削除し、悪用に関与する者に対して行動を起こしている。我々は、ヨーロッパ全土において、偽レビュー提供業者に対する数十件の差止命令を勝ち取っており、法的措置を取ることを躊躇することはない」と、Amazonの広報担当者のMary Kate McCarthy氏は回答した。

 

しかし、Amazonやその他のオンライン小売事業者は、偽レビューに対する措置を単独で行うことはできない。顧客がオンラインで目にするレビューは、信頼できるものである必要がある。Amazonによると、組織的なレビュー操作行為に対しては、悪意の行為者に対するより強力な執行力が規制当局に与えられ、一貫したエンフォースメントとグローバルな調整を行うことが必要になるという。

 

「我々は、顧客レビューの信憑性を守るべく努力し続けている。商品のレビューの信頼性に疑念を抱く顧客には、各レビューの下にある『違反を報告』のリンクをクリックするようアドバイスしている。その後、当社で調査を行い、必要な措置を講じる」とAmazonの広報担当者。

 

Amazonは、強力な機械学習ツールと専門スキルを持った調査員を動員し、毎週一千万件を超えるレビュー投稿を分析することでこれを実現しているという。その目的は、不正なレビューを掲載される前に阻止することだ。

 

「さらに、我々は既存のすべてのレビューに不正の兆候がないか監視を続け、問題を発見した場合には迅速に対応している」と同社広報担当者は話し、同社はまた、ソーシャルメディアサイトにも積極的に働きかけ、Amazonストア外で不正なレビューを助長している悪意の行為者を報告していることに言及した。

 

Amazonは、レビューシステムを悪用しようとしたとして、数千人もの悪意の行為者を提訴したと主張している。

 

 

おとり調査

調査を行うため、Whichの団体は、Amazonの販売者を装った。そして、その販売会社は「レビュー操作サービス」を販売するために10件のeコマースサイトに登録した。

 

同社の販売する「商品」には、レビューと引き換えの無料または割引商品が含まれていた。また、顧客の肯定的な商品レビューを押し上げるための販売キャンペーンも提供した。

 

Whichが実施した調査では、わずか5社の企業に702,000人の商品レビュワーが存在し、Amazonでのレビューに対して890万ドルの払い戻し金を処理したとするサイトも見つかった。

 

Whichの発表した調査結果によると、今回の調査は、消費者団体が主要なオンラインマーケットプレイスを操作している販売者に対して行った最初のものではないという。

 

2年前、Whichは、Facebook上でのAmazonの偽レビュー取引が発覚した、盛んに取引が行われている市場についての記事を公開した

 

Whichは、2020年1月の英国公正取引委員会(CMA / Competitionand Markets Authority)による法的措置の結果、FacebookとeBayの双方が、サイト上の虚偽や誤解を招くおそれがあるレビューに対抗するための取り組みを強化することに合意したと報じた。両社は、より適切な特定・調査を行い、偽レビュー行為に対応することに合意する協定に署名した。

 

 

大きな賭けとなるレビュー

顧客のレビューは、Amazonで成功するための重要な要素だ。UpstartWorks(米国のコンサルティング企業)の社長であるRohan Thambrahalli氏によると、Amazonと詐欺レビュアーの間では長く激しい戦いが続いているという。

 

第一に、レビューは、顧客がAmazonで検索した際に、商品の関連性を判断するために使用されるAmazonのA9アルゴリズムをフィードしているため。そして、第二に、顧客は購入前、レビューを頼りに商品についての情報を得ているためである。

 

「今のこの状況が変わるとは考えられないので、迅速に容易くレビューを得る方法を探している販売者は常に存在するだろう」と同氏。

 

偽レビューは、見た目以上に深刻だ。偽レビューは明らかに市場の公平性に影響を及ぼす。そして、レビューは、Amazonで極めて重要となっている「ショッピングカートボックス」獲得に影響を与えると、IncumetricsのGaster博士は認める。

 

「レビューは、詐欺師が競争に影響を与えるための経路でもある。悪意の行為者が偽レビューを通じて標的にしたために、Amazonの不条理な司法制度に巻き込まれることは、深刻な問題だ」と同氏。

 

Amazonのベンダーが肯定的なレビューを維持することにおけるリスクの大きさを考えると、Amazonの経営陣はレビュートレーダーを特定するために、AIやその他のテクノロジーへの投資を続ける必要がある。UpstartworksのThambraahalli氏は、偽レビューは手動で捕捉するにはあまりに大きな規模で出現していると示唆している。

 

「顧客による購入数と一致しない顧客レビューの突然の急増などの傾向をレビューすることで、Amazonは疑わしい行動を検知できるだろう」と同氏は提案する。

 

 

ポリシー変更は予定されていない

保留となっていたAmazonトップ交代がこの夏に決定したことで、レビュー基準の変更をもたらす可能性があるとの憶測もある。おそらくそれが、一部の販売者が自身のステータスを高めるためにまだ偽レビューに頼っている理由であろう。だが、その推論は間違いなく、現在の偽の商品レビューと同じくらい誤っている。

 

「私はそうは思わない。Jassy(次期Amazon CEO)は同じリーダーシップチームの出身であり、少なくとも最初は大きな変化はないだろう。そして、間違いなく、偽レビューに対する措置が緩和されるということはない。さらなる広報と規制圧力の下で引き締められる可能性が高いだろう」とGaster博士。

 

同様に、Thambrahalli氏は、Amazonが、最も顧客中心の企業になるという使命を変えるとは考えていない。顧客は、商品リサーチと最終的な購入決定において、レビューに大きく依存している。

 

「偽レビューの横行によって、顧客がレビュー情報は信用できないと感じ始めたら、顧客のAmazonに対する信頼に大きな影響を与えるだろう。Amazonでの偽造品販売を撲滅することを目的とした『Project Zero(プロジェクト・ゼロ)』などの取り組みとともに、今後も偽レビューに対する取り組みを優先させていくと強く信じている」と同氏は締めくくった。

 

 

いかがわしい商売

商品販売促進のためにシステムを操作する販売業者もいる。AmazonのFBA(Fulfillment by Amazon)事業を買収し、運営するPerch(米国のコマース企業)のカスタマーオペレーション担当副社長である Claire Lefevre氏によると、eコマース市場は、がむしゃらな起業家であふれているという。

 

「彼らの多くは、規則に従って行動しているが、そうでない者も多い。Amazonは、偽レビュー分野での取り締まりや執行に対して、有効なリソースを用意する必要が常にあると思う」と同氏。

 

レビューは、Amazonビジネスの生命線である。そして、ブランドの評判を守ることは、販売者にとって大きな賭けだ。このような大きな賭けにおいては、一部の人はルールのグレーゾーン内にいることを、一部はグレーゾーンをはるかに超えてしまうことを選択してしまう、と Lefevre氏は説明する。

 

「Amazonは、何年にもわたって様々な種類の取締りを実施してきた。実際に、同社によるレビューの削除は、過去に違法に獲得したレビューを一掃するのに非常に効果的であったが、ボットで行われるものは何でも、途中で巻き添え被害をもたらす可能性がある」と同氏は指摘する。

 

 

※当記事は米国メディア「Ecommerce Times」の2/18公開の記事を翻訳・補足したものです。