各業界の識者によるソーシャル、eコマース、動画などの2021年の予測をシェアし、“波乱に富んだ”1年を振り返る。

 

米国のクラウドコミュニケーションプラットフォーム、TwilioのEMEA(ヨーロッパ、中東、アフリカ)担当VP、David Parry-Jones氏

「2020年は、新型コロナウイルスの影響によりデジタル化が大きく加速され、フレキシブルなカスタマーエンゲージメントプラットフォームへのニーズが増した。パンデミックの影響で顧客行動が変化したため、迅速に規模を拡大し、一つのチャネルに急速に高まった需要に適応できるコミュニケーションソリューションがまさに必要となっている」。

 

「誰もが急速に変化する一連のサービスを使いこなそうとする中で、消費者が使いやすいチャネルで彼らにリーチすることが、これまで以上に重要になってきている。53%の企業がパンデミック中にライブチャットなどの新しいチャネルを追加したことがわかっているが、2021年の焦点は、チャネルミックスを顧客の好みに対応できるように拡充することだ」。

 

「消費者の期待はそれほど変化していないが、企業は最も適したチャネルを使って消費者のニーズに応え続けるために、よりフレキシブルにコミュニケーションを取るようになると考えている。異なるシナリオや顧客セグメントに対する各チャネルの適合性を把握することで、最も効果的なコミュニケーションを実現し、顧客エンゲージメントを促進することができる」。

 

TikTokのヨーロッパグローバルビジネスソリューションのトップ、Stuart Flint氏

「2021年は、ブランドにとってもマーケティング担当者にとっても節目となると1年となるだろう。来年の12ヶ月は、経済と人々が、どのように今年の(新型コロナウイルスによる)世界的な余波から回復し、新たな現実を定義するかによって変わってくる」。

 

「ワクチンが提供されるようになれば、2021年には、ある程度の日常が戻ると期待できるが、今年1年がもたらした人々の生活や働き方の体系的な変化を過小評価することはできない」。

 

「マーケティング担当者は楽観視してはいけない、ということだ。コロナ禍以前のやり方には戻れないのだ」。

 

「競争の激しいデジタルファーストの環境で突出することが不可欠で、明確なブランドの“パーソナリティ”と、見込み客を会話に引き込む真の能力が必要だ。この1年、あらゆる規模のブランドが、TikTokプラットフォームとクリエイターのコミュニティを使って、顧客とのコミュニケーションの方法を変えようと動き出した。このトレンドは、まだ表面的なものに取り組んだに過ぎず、まだまだやるべきことがある」。

 

英国のeコマースコンサルタントのOMG TransactのAmazonディレクターの、Dan Simmons氏

「2020年の新型コロナウイルスのパンデミックによって、世界中がロックダウンしたため、従来の店頭でのショッピングが制限され、買い物客がインターネットに集まる買い物客の数が記録的に増加した。モバイルコマースは、クリック&コレクト(ECサイトで商品を購入し、リアル店舗や宅配ボックス、ドライブスルーなどで商品を受け取る仕組み)サービスを導入し、店舗にいる時間を減らすことで健康リスクを最小限にする独自の取組みを提供している。これは、特に、移動中で、その同日に商品を受け取りたい場合には、有効である」。

 

「この成長は、モバイルデバイスでのアクセスしやすさと、簡素化されたモバイルチェックアウトによりコンバージョンが容易になり、商品コンテンツの改善とオンラインでの視認性の向上というモバイル最適化の進歩と相まって、携帯端末で購入するユーザーの増加につながるだろう」。

 

「加えて、Amazonのような大手小売業者向けのネイティブアプリケーションの成長により、特定の配送窓口や、ポイント加算やメンバー割引などのロイヤルティ制度のような通常の特典をすべて受けることができ、ユーザーがどこにいても簡素化されたエクスペリエンスを得られるようになるだろう」。

 

動画再生ソフトを開発した米国のJW Playerの共同創設者兼CIO(チーフ・イノベーション・オフィサー)Jeroen Wijering氏

「cookieの終了が近づいている。これは、パブリッシャーが、コンテンツ収益化方法を再考する必要があるということだ。2021年は、広告主がcookieの代わりというだけでなく、現時点で消費者に会うより効果的な代替手段として、コンテクストターゲティングを導入する年になるだろう。来年は、ブランドが新たな視聴者を取り込み、新たな収入源の開拓を模索しているため、ライブストリーミングや別の動画コンテンツが新しい業界でも拡大するだろう」。

 

チェコのソーシャルメディアマーケティング会社、Socialbakersの社長、Yuval Ben-Itzhak氏

「ソーシャルコマースは、もはや新しいトピックではないが、多くのブランドが完全に活用しているとはいえない分野だ。今日のデジタル化した消費者は、今まで以上にオンラインで購入することが増えている。今日のソーシャルメディアプラットフォームは製品の発見から購入後の顧客ケアやコミュニティ管理まですべてをまかなうツールを提供しているため、企業は、これらのプラットフォームが提供するリーチやインフラを活用するべきであることは明白である。オンライン購入がますます増加する時代においては、カスタマージャーニーのソーシャルコマースコンポーネントにスマートに投資することによって、企業は将来的な収益を確保することができる」。

 

「新型コロナウイルスのパンデミックは、顧客のブランドとの関わりに大きな影響を与えた。この影響は広範囲に渡っているが、顕著なのは会話型メッセージングの活用だ。現在の顧客との会話は、従来型のコールセンターやメールからソーシャルメディアやメッセージングアプリに変わりつつある。顧客はオンラインを利用しており、ブランドにも質問への返信やフィードバックの提供を迅速にオンラインで行うことを期待している。顧客の期待に応えるために、人間による応対とAIによるチャットボットの両方を活用するモデルを検討するブランドが増えるだろう。会話型AIチャットボットは、量、時間帯、言語に関係なく、繰り返し、頻繁に聞かれる質問を即座にフラグを立て回答する。そして、より重要な案件を人間のエージェントに迅速にエスカレーションするためのパイプとしての役割を果たしている」。

 

米国の個人・ビジネス用の仕事効率化とコラボレーション・ソリューションのプロバイダー、MoxtraのCBO(最高ブランド責任者)、Leena Iya氏

「2021年以降、企業と消費者とのデジタルでのやりとりは、より人間らしくなっていくだろう。現実には、オンデマンドサービスはパンデミック後になくなりはしない。それに伴い、特にコロナ禍後の世界では、消費者が対面時に当然のように受けていたパーソナライズされたサービスの期待レベルを、オンライン環境でも提供する必要がある。企業はこれまで主流だった返信不可のメールアドレスを、顧客とコミュニケーションを取り、問題をより適切に解決できるエクスペリエンスであるオンデマンドに置き換えている」。

 

「革新的なブランドは顧客とシングルラインのコミュニケーションを採用し、会社の中心部に属する人物が最初から最後まで顧客に対応する。これは、金融サービス、法律、不動産業界のように電話一本で対応し、従来は対面での顧客との関わりが主流だった企業にとって、特に重要なポイントとなる。こういった分野のビジネスリーダーはデジタルインタラクションに足りないものを明確にして2020年を終えようとしている。2021年には、ビデオ会議、ダイレクトメッセージング、ファイル共有、ドキュメント署名などの必要なビジネス機能を一元化したシングルプラットフォームソリューションを用いて、人との一対一のやり取りをデジタルサービスに取り入れる新しい方法を引き続き見つけていくことになるだろう」。

 

米国の写真共有サービスPinterestの英国およびアイルランド担当マネージャー、Milka Kramer氏

「2020年のオンラインショッピングの加速は、消費者が選択する買い物方法と何を購入するかの両方に変化をもたらした。今年起きた消費者行動の変化は、どのように、ブランドや小売業者がオーディエンスと関わり、購入決定を促すべきかの羅針盤となっている。“実生活”で商品が並んだ通路をあれこれ見て歩くようなオンラインショッピング体験を作り出し、消費者に刺激を与えなければならない。ブランドはポジティブなオンライン環境での露出を重視すべきであり、そうすることがブランドの信頼や購買意欲に直接影響することが調査で明らかになっている。2021年には、インサイトを活用し、ショッピングジャーニーの早い段階で消費者との関わりを重視するブランドと小売業者が、視覚的に刺激的なアイディアを絶好のタイミングで消費者に届けることで、消費者を顧客に変えることができる」。

 

米国の企業向けの分析、A/Bテスト、パーソナライズコンサルティングを行うBrooks BellのイノベーションVPのSuzi Tripp氏

「オンライン購入、店頭受け取り(BOPIS)、配送までにおいてオンラインで一貫したブランド体験を提供する小売業者が、ショッピングのピークシーズンと来年を勝ち抜く。成功するかどうかは、より高まるロジスティクス需要に対応し、オムニチャネルデータのインサイトを戦略的に活用し、社内の文化的変革を推進できるかどうかにかかっている」。

 

「2021年には、十分な予算のある企業は、顧客との交流があるすべての分野でのテスト戦略に投資するだろう。これは、アプリ内テストにより注力することを意味するかもしれないし、キオスク(情報端末)や画面で何らかのテストをするかもしれない。テストは、最終的には顧客体験の改善につながる。しかし、メンタリティや能力のない企業は必ず失敗し、強者と弱者を分けることにもなる」。

 

「多くのマーケティング担当者は、2020年の消費者行動の変化に悩まされたが、コロナ禍によって引き起こされた行動は、これからも続くといえるだろう。企業は、利便性と安全性の面で顧客の期待に確実に応えられるように、戦略を確認する必要がある。新型コロナウイルスの影響で、最小限の発売可能な製品をすぐに発売しなければならない時は、戦略の確認を繰り返し、さらなる進化を探し続ける必要がある」。

 

米国とスウェーデンに本部を置き、Webコンテンツ管理、デジタルコマース、およびデジタルマーケティングを提供するEpiserverのCMO(最高マーケティング責任者)、Kirsten Allegri Williams氏

「テクノロジーによって、消費者の小売体験が改善された。しかし、同じだけ、今日の消費者は、非常に多くのタッチポイントにおいて、自分をブランドに紹介しなければならないのが現実である。そのため、フリクションのないエンゲージメントをより重視し、商品の発見、購入、返品のプロセスを、従来よりも簡素化しなければならない。発見から購入までのプロセスの合理化に関しては、革新の余地が多くあり、スムーズなエンゲージメントに的を絞った取り組みは、そのビジョンの達成に役立つ」。

 

「2021年以降に成長する小売業者は、デジタル体験をできる限り統合し、パーソナライズする業者である。シンプルか、もしくは、高度のどちらかではない。その両方が必要である。つまり、モジュール化した製品の提供、広範なパートナーネットワーク、包括的なモニタリングとサポート、および既存のインフラストラクチャと簡単に統合できるAPIを意味する。複数のチームがデジタル体験をパーソナライズし続ける間、バックエンドでは高度化したUX、フロントエンドではシンプルなUXを提供できるブランドが成功を収めるだろう」。

 

米国の食品に関するクラウドベースのビッグデータプラットフォームを提供するLabel InsightのCEO、Todd Morris氏

「2021年に向けて、ますます多くの消費者が、特定のブランドから離れ、代わりに自分の体に取り入れたり身に着けたりする製品が自分の価値観と一致し、健康やウェルネスのニーズを満たしているかに注目するだろう」。

 

「eコマースの成長が加速していることを考えると、この傾向は、特に日用消費財分野で、ブランドのデジタル広告費の配分方法に変化をもたらすだろう。企業は、持続可能な製品や植物由来の製品、特定のアレルゲンを含まない製品など、消費者が健康やライフスタイルのニーズに基づいて実際に求めているものについて、より良いデータを必要としている。ビジネスリーダーたちが、これらのニーズを理解するために適切なデータとツールに投資すれば、より効率的にマイクロターゲティング広告への支出が行われ、非常にロイヤルティの高い顧客と売上高の増加につながるだろう」。

 

「すべての業界を俯瞰で見てみると、消費者が本当に求めているのはシンプルなものであることがわかる。つまり、ブランドが、自分たちのライフスタイル、健康、ウェルネスについてのニーズを理解し、これらのニーズに合う適切な製品を簡単に見つけて購入できるようにしてほしいと考えている。2021年の“勝ち組”はこの両方ができるブランドだ」。

 

米国のデジタルマーケティング会社Code3のコマースEVP(エグゼクティブ・バイス・プレジデント)Greg Wolny氏

2019年と比較すると、世界全体で小売売上高の大幅な減少が予想される。米国単体では、2020年末までに10%以上の減少が見込まれる。これらの数字を踏まえると、全ての規模、全てのカテゴリーでブランドは大幅な調整を行う必要がある。特に、経済の完全な回復は少なくとも2022年以降になると思われるためである。企業は、2021年を最大限に活用し、自分たちのペースで回復し、失われた時間を取り戻す必要があるだろう。ある程度、小売ブランドはeコマースに移行するか完全に受け入れるしかないといえる」。

 

「デジタル広告は競争が激化している。Amazonでは、同チャネルにおける競争によりCPC(クリック単価)が増加している。そしてAmazonの検索結果は、スポンサー枠のよって一層飽和状態となっている。これらの状態に加えて、ブランドのマーケットプレイスメディア戦略の理解と実行は、成熟状態にある。これにより、ブランドはDSP(広告主のプラットフォーム)を活用して、ファネルの上位に移動し、リサーチ段階の顧客との関係を築くことがより緊急に必要となった。もはや、スポンサープロダクト広告だけで、購入前の顧客の前に表示されるだけでは不十分である。今日の状況では、自社製品の優れている理由を消費者に伝えるために、ショッパージャーニーのなるべく早い段階に投資する必要がある。また、ブランドはソーシャルメディアやその他のマーケットプレイスへの進出によって競争の激化に対応している。そうすることで、効率性が改善し、特定のチャネルに限定されない消費者行動に関するインサイトが得られる」。

 

英国の新聞社、News UKのパブリッシング・コマーシャルディレクターのBen Walmsley氏

「2021年の年次予測は、コロナ禍がなければ、2023年と似たようなものになっただろう。これはeコマースの世界では明白だ。10年以上にわたる安定成長の後、eコマースは2月の総売上高19%から5月には33%へと急激に増加した。この変化に多くの小売業者は不意を突かれ、オンライン体験からサプライチェーンまでエンドトゥエンドの弱点が露呈した。そして、売上増加という変化は定着するだろう。予想外の急成長により、パブリッシャー、代理店、ブランドは、競争に勝つためには戦略を非常に早いスピードで加速させる必要がある。ブランドにとっては、オンラインでのプライベートコンサルテーションやAR製品のデモなど、物理的な世界を模した体験を提供し、購入体験や受注処理に残っているフリクションをなくし、DTC(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)の簡易さを再現することを意味する。これまで以上にオンラインチャネルでの購入が増加する中、ブランドはいかに物理的な空間がバーチャルなショッピング体験を補完できるかを再考せざるを得ないだろう」。

 

「パブリッシャーにとっては、測定可能な販売成果をもたらす、または、ブランド体験への没入度を高める広告製品の多様化を意味する。パブリッシャーは、購入プロセスを支援するオファーやサービスを提供し、価値あるインテントデータを生成し、顧客のIDを持続的に維持することで、さらに小売業者に似た存在になるだろう。小売の新時代を迎えるにあたり、パブリッシャーはトランザクションに影響を与える存在になりつつある。英国のメディアグローバルプラットフォームFutureが提案している英国金融サービス比較ウェブサイトGoCompare買収は大きな賭けだ。同社への需要は、マーテックとAmazonやその他のeコマースチャネルを通じたシームレスなトランザクションの統合へと次第に発展していくだろう」。

 

「2020年は、誰もの予想以上に早く、消費者行動に恒久的な変化をもたらし、企業はそれに適応するために、場合によっては生き残りをかけて、迅速な決定を迫られた。2021年は、加速する未来の新たな需要に対応する、恒久的なコマース構造を構築する年だ」。

 

米国のマーケティング会社ImpactのEMEA担当マーケティングディレクター、Owen Hancock氏

「Impactは、マーケティング担当者による広告費支出が、他のデジタルマーケティングチャネルからインフルエンサーマーケティングにシフトしていくと予測している。いくつかのレポートで示唆されているように、ブランドは2022年までに世界で150億ドル以上をインフルエンサーマーケティングに費やすと確信している。実際、パンデミック期間中に消費者のデジタルデバイスへの移行が増加するにつれて、日用消費財企業はインフルエンサーマーケティング費用をパンデミック前の規模を維持するか、若干増加させている。そして、コロナウイルス後に、多くの企業は、ソーシャルメディアインフルエンサーにマーケティング予算の最大50%を割り当てる予定だ」。

 

「もう一つのエキサイティングな予測は、ストリーミングによるショッピングブームで、中国ではすでに爆発的に普及しており、2019年の売上高が610億ドルに達した。パンデミック真っ只中の2020年3月には、6千万人がライブストリームショッピングを閲覧し、2019年6月と比較すると、利用者は1億2,600万人も増加している。欧米においては、7月にインフルエンサー向けのAmazon Liveがリリースされ、8月にはFacebookやInstagramのライブショッピング機能を発表しレたため、このトレンドは拡大するだろう。世界のライブストリームの売上が、今年は2倍の1200億ドルになるという予想は驚くものではない」。

 

「引き続きソーシャルコマースの話題として、TikTokはeコマースプラットフォームのShopifyと提携し、100万を超える加盟店がオーダーメイドの広告キャンペーンを通じてTikTokの若いオーディエンスに簡単にリーチできるようになった。このパートナーシップは、ソーシャルコマースの重要性と、2021年の止まらない成長予測を示唆している」。

 

米国の広告メディア、GumGumのEMEAマネージングディレクター、Peter Wallace氏

世界的に多くの人が在宅勤務に移行し、画面閲覧時間が31%増加したため、オンライン動画は、収益とエンゲージメントでリードする地位を確実にしている。では、モバイルマーケティング担当者は、マルチチャネルの中で、ブランドに関連した重要な会話にどう対応すればいいだろうか。次世代のコンテクストターゲティングにおいては、高度な画像認識と自然言語処理により、OTT(インターネットを介した動画配信、音声通話、SNSなど、マルチメディアを提供するサービスを総称した言葉)やCTV(スマートテレビ)で何百万本もの動画の分析とターゲティングに対し人間に似た知覚を備えたソリューションの提供が増えている」。

 

「この高度な技術は、コンテキストエンジンがすべての動画コンテンツをスキャンできることを意味する。これにより標準のメタデータのタグ付け分析と比較して、動画の内容についてより適したイメージを構築することができる。コンテンツ動画ターゲットの人気が高まっているのは、このようなニュアンス機能に加えて、cookieに関する法律が制定され、よりプライバシーに配慮したソリューションの必要性が高まっていることが理由だ。しかし、より重要なのは、マーケティング担当者がより記憶に残り、神経学的に魅力的な広告を提供するために、コンテンツの力を活用しようとしていることだ」。

 

英国のモバイルアプリとWEBアプリケーションの拡張現実を専門とするテクノロジー企業、BlipparのCEO、Faisal Galaria氏

「拡張現実(AR)は、近年成熟しつつある技術だが、5G回線の利用により待ち時間が減り、デバイスの相互接続性が向上すると、2021年にはARテクノロジーがマーケティング戦略において実行可能でアクセスしやすい要素になるだろう。特に、ARはライブイベントに不可欠で、消費者にアクションを促し、ブランドとオーディエンスをグローバルに結びつける高い双方向性の体験へと形を変える」。

 

「ARは、製品のビジュアライゼーション(可視化)も次のレベルに引き上げる。世界で消費者の42%が、これからもオンラインでのショッピングを頻繁に行うと予測される。そのような状況で、2、3例を挙げると小売業、出版業、旅行業などをはじめあらゆる分野の企業が、ARを利用して、消費者がオンライン上でバーチャルにブランドと対話できるような没入型エクスペリエンスを作りだすことで恩恵を受けることができる」。

 

「消費者がQRコードをスキャンしてコンテンツを起動することに慣れてきたことで、ARは以前より利用しやすいものとなっている。特にWeb ARは、アプリのダウンロードが不要でウェブブラウザ上でシームレスなデジタル体験を提供できるため普及促進に役立っている」。

 

カナダのマーケティングテクノロジー企業HivestackのCRO(最高リスク管理責任者)、Nigel Clarkson氏

「世界中でステイホームが強制され、2020年は確かにOOH(屋外広告)チャネルにとって困難な年となった。しかし水面下では、OOHはプログラマティックプランニングとバイイングを提供する最後のチャネルなになるべく、信じられないような進化をした1年となった。需要と供給の両サイドがプログマティック機能を必要としていることは認識しており、スムーズなプログラムの移行を実現するためにOOHの専門性が増した」。

 

「この1年、特にロックダウンが行われたり解除されたりする状況は、キーとなるOOHデジタルスクリーンで獲得できるインプレッションに影響を及ぼすため、フレキシビリティの重要性が強調された。プログラマティックプラットフォームでは、広告主は、数百万のモバイルロケーションデータポイントから得られるインプレッション倍率データを利用し、広告出稿を増減することができる。これにより、オンラインでの1対1の世界と、OOHでの1対多の世界との違いを理解することができる」。

 

「また、2020年には、パブリッシャーが次の年にインベントリを収益化する真のチャンスがあることがわかった。2021年には、2020年にプログラマティックDOOH(デジタル屋外広告)によって実証済みの敏捷性と効率性の向上が、従来のアウトオブホームエコシステム内での継続的な成長を後押しすることになると考えている。これを実現するためには、DOOH環境のDSPやSSP( Supply Side Platform:メディア側の収益を最大化するプラットフォーム)がメディアオーナーやバイヤーと協力して、プログラムマティックがDOOHの改善にどのように役立つかを伝え、クロスチャネルの世界でOOHがより効果的に運用できるようにする必要がある」。

 

スイスを拠点とするビットコインの開発運用を行うグローバル組織Bitcoin Associationの創設会長、Jimmy Nguyen氏

Facebook、YouTube、Twitter、Instagram、TikTok などの現行のソーシャルメディアとオンラインコンテンツプラットフォームは、ユーザーコンテンツから発生した収益のほぼすべてを得ているが、ユーザーアカウントを終了したり、収益を制限したり、停止したり、コンテンツを節度あるものに管理したり無効にしたりと、一方的に力を行使している。ブロックチェーン技術に支えられた新しいソーシャルネットワークは、このパラダイムを変えようとしている。コンテンツ作成者が投稿したコンテンツに対するエンゲージメントごとに、直接かつ即座の少額決済を可能にする一方で、相互運用性のロックを解除し、ユーザーに対するパワーバランスを回復する。これらの新しいビジネスモデルは、従来型の広告やデータマイニングビジネスモデルの脅威となるだろう。2021年には、デジタルコンテンツのクリエイターやインフルエンサーは、ブロックチェーンベースのアプリケーションを活用して、コンテンツから直接収益を得られるようになり、プラットフォームからの除外リスクを避けられることにようやく気付くだろう」。

 

米国に本社を置き、パーソナライゼーション・プラットフォームを構築、提供するBloomreachのCEO、Raj De Datta氏

「実店舗の小売店には、Apple Storeにありサポートを受けられるGenius Barのようなエクスペリエンスを期待されるだろう。小売店の従業員はそれほど多くはないかもしれないが、顧客からこの商品が今、どこにあるかを聞かれるだろう。購入者は、オンラインでわからなかったことを実店舗の店員に質問することがあるからだ」。

 

「さらに店舗は倉庫になる可能性があり、地価の安い売り場の一部は、ショールームではなく、在庫置き場に使われるだろう。そして、オンラインで同じ製品を購入することができ、その商品をどこからでも出荷することができるので、より高いエンターテインメント性を打ち出す売り場もあるだろう。エンターテインメント性を重視するか、サプライチェーンを重視するか、売り場はその選択が迫られる。小売業者が競争のためにどのようなチョイスをするかで売り場の見え方が決まる」。

 

米国の通信大手AT&Tグループのプログラマティック広告を手掛けるXandrのEMEA動画マーケット開発トップ、Austin Scott氏

2021年に向けて、ブランドは広告戦略において柔軟性を保つ必要がある。ブランドが関連性と競争力を維持するには、動画キャンペーンを最適化して推進し、今の時代の感情的状況を反映したフォーマットに拡大していくための先進的なテクノロジーを採用する必要がある。テクノロジーを最も効果的な方法で利用することで、ブランドはこの妙な時代に消費者と真に関わり、成功をつかむ機会を得ることができる」。

 

「テレビ用動画広告のコストは、アドレス可能なメッセージングのメリットをスケーリングするための障壁となっている。そのため、バイヤーはカスタム仕様のメッセージングと代替のバーチャル/アニメーション/インタラクティブなフォーマットを考慮しなければならない。先行投資が必要なくなり、AVOD(広告付きビデオオンデマンド)の市場への参入者が増加すると、リアルタイムで予約され収益化されていないインベントリの将来に、マーケティング担当者、メディアオーナー、消費者側の収益モデルを再考するチャンスがあるだろう。2021年には、オーディエンスターゲティングと検証ソリューションが、どのように自社ビジネスニーズを満たし、目指す結果を追跡するかという課題に誰もが取り組むだろう。また、特定の視聴したい番組がある場合にサブスクリプションサービスを利用する消費者の行動変化に伴い、視聴者の細分化が進むだろう」。

 

電通のグローバルネットワークブランドの一つで、日本に本社のあるメディアエージェンシー、dentsu XのAurelia Noel氏

「新型コロナウイルスとの戦いにおいて、消費者の動きを制限し、多くの店舗の閉鎖という極端な手段が取られた。逆境に直面した小売業者は、デジタルへの移行を加速させ、メディアとコマースを融合させた360度の小売体験をオンラインで実現した。2021年に向けて、従来型eコマースのニッチ分野と、消費者向けパッケージ商品(CPG)などの非従来型ニッチ分野の両方でデジタルトランスフォーメーションが加速し、売上を牽引し、消費者との関係を構築していくことが今後も予想される」。

 

「小売業者がオンラインにシフトする利点の一つは、オーディエンスデータを利用した顧客体験の向上だ。しかし、今年は消費者のデータプライバシーに対する懸念が高まり、小売業者を含む企業が消費者を追跡する方法は大幅に変わった。Googleのような大手テクノロジー企業は、もはやサードパーティのcookieをサポートしないという、プライバシーに関して思い切った措置を取っている。AppleのiOS14は、アプリの収益化を難しくする“オプトイン”の変更を実装予定だ。つまり、2021年には、ファーストパーティのデータ戦略をもたない企業にとって、キャンペーンの最適化やリターゲティングがより難しくなるということだ。優れた顧客体験を提供し続けたい小売業者やブランドにとって、ファーストパーティにデータスタックを構築することは不可欠だ。それは、かつては〝あると助かる〟ものとされていたが、今ではプライバシーファーストの世界で顧客中心主義であり続けるために必須のものである」。

 

※当記事は英国メディア「Mobile Marketing Magazine」の12/24公開の記事を翻訳・補足したものです。