新規顧客の獲得や既存顧客を維持するため、対面販売に頼ってきた化粧品会社。しかし、新型コロナウイルスのパンデミックによりこの業界は大きく変わり、新たな課題だけでなく、機敏で創造性のある企業にとっては数々のチャンスをもたらした。

このように、ダイナミックに進化する業界のトレンドについて、識者の見解をもとに、ポイントを整理していく。

 

パーソナライゼーションというトレンド

化粧品会社がオンライン顧客にアピールための方法の一つは、よりいっそうパーソナライズされたサービスを提供することだ。

 

アメリカの自然派化粧品会社のNakedPoppy の共同創設者でCEOのJaleh Bisharat氏は「私たちが他社と違うのは、データ科学者、メイクアップアーティストやスキンケア専門家によるチームで開発している専門家によるオンライン美容診断サービスを構築したことだ」と語った。

 

「これは、いわゆるオンラインの美容コンサルタントである。3分間の診断を受けると、特許出願中の技術を使用して、その顧客に適しているかどうか、ストア内の全製品を評価する。つまり、顧客に完璧にマッチしたパーソナライズされたクリーンビューティーブティックなのだ」と同氏は述べた。

 

この種のパーソナライゼーションによって、顧客とオンラインストアのギャップを埋め、店舗のメイクアップカウンターと同じような、もしくは、それ以上の体験を提供できるようになる。

「未来は、パーソナライゼーションにあると信じている」とBisharat氏。また「いつか、誰もが個性的でパーソナライズされた美容ブティックで買い物ができ、自分に合わない商品で時間を無駄にすることがなくなる日が来るだろう」と説明した。

 

化粧品会社は、新規顧客に関するデータを収集し、既存顧客に関する情報を維持し、各顧客のニーズに合わせた独自のショッピング体験を提供できる。

 

「マーケティング担当者は、初めてのサイト訪問者の好みを知るために、店員が店舗で行うようなアンケートを表示することができる」と語るのは、企業にパーソナライズされた顧客体験を提供するアメリカのテクノロジー企業、Dynamic YieldのカスタマーサクセスディレクターであるBen Malki氏。

「そして、クリーン製品やビーガン製品に興味があるか、敏感肌かなどの収集情報を取り込んで、よりカスタマイズされたエクスペリエンスを提供する。サイトでのおすすめ商品の提示機能は、店舗スタッフの追加購入を勧めるという効果的な役割を担うことができる」と述べた。

 

この種のパーソナライズは、顧客の店舗エクスペリエンスとオンラインショッピングとをリンクさせることにも役立つ。

 

Malki氏は「以前は、オフラインでだけブランドと関わっていたが、現在はデジタルを利用し始めた人向けに、美容業界のマーケティング担当者はオフライン購入とオンライン活動を組み合わせることができる」と語った。

 

「例えば、最近店舗(オフライン)で購入した人で構成されるセグメントを構築し、彼らがサイトにアクセスした時やメールを開いた時に、関連性の高いコンテンツを提供することで、より効率的にオンラインショッピングへ移行させることが可能である」とのこと。

 

つまり、パーソナライズは顧客基盤を維持拡大し、使用できず返品される商品による収益損失を防ぐことができるのだ。

 

「パーソナライズは商品の返品を最小限にすることができる」とMalki氏。「一度購入された美容製品は再度棚に並べることも販売することもできない。したがって、パーソナライゼーションを強化し、顧客のニーズに最も適した商品とのマッチングを図ることが重要である。これにより、製品の満足度が高まるだけでなく、返品に伴うコストも削減できる。

 

価格設定とパッケージの美しさ

化粧品業界にも価格設定やパッケージに新しいトレンドが生まれている。例えば、企業が賢明な価格戦略を実行すれば、競争が激しいeコマースマーケットプレイスで優位性を維持することができる。

 

「化粧品会社はマージンが非常に高いという点で、現在のグローバルeコマースにおいて数少ない幸運な業種だ」と、トルコに本社を置き、競合他社の価格追跡とeコマースビジネスのための動的価格設定エンジンを提供するPrisync のCEO、Burc Tanir氏は語る。

「実際にこれは、顧客基盤が拡大している成長市場では、価格設定がマーケティングの秘密兵器となり得るため、絶好の機会となる。化粧品業界のeコマース企業は、その堅実な利益率を全く犠牲にすることなく、競争力のある価格に調整することができる。言い換えると、競争力のある価格でありながら高い収益性を維持し、売上高と純利益を同時に伸ばすことができるのだ」。

 

同時に、消費者のエコ意識がさらに高まる中、化粧品会社は製品のパッケージや販売方法を変えている。

 

イギリスの高級パッケージ企業、Delta GlobalのCEO、Robert Lockyer氏は「再生プラスチックの利用は環境にやさしい化粧品パッケージへの第一歩だ」と語る。

「それだけでなく、リサイクル可能な包装や、ボトルやチューブに明確なラベルを貼るなど、持続可能な廃棄方法を顧客に啓蒙する努力も必要とされている」と、同氏。

リユース可能なパッケージは、化粧品会社が環境に配慮していることを消費者にアピールできるもう一つの方法となっている。

 

Lockyer氏は、「企業はリユース可能なパッケージを制作することで、循環型経済を促進することができる」と言及。さらに「例えば、香水の瓶やメイクアップ用のチューブは、洗った後オーナメントとして飾ることもできるだろう。しかし、これは高品質で見た目も魅力的なパッケージへの投資が必要である。こうしたことから、パッケージは中身である化粧品自体と同じように、製品の一部となる」と続けた。

 

新たな局面

化粧品eコマースの新しい世界は、まさにグローバルな取り組みである。もはや、特定の国の顧客に限定されていない。

 

アメリカに本社を置くグローバルなeコマースソリューションプロバイダ、Global-eの北米CEOであるMatthew Merrilees氏は、「新型コロナウイルスによって、小売業者のオンラインでの存在感と世界中の買い物客へのアクセスを強化する必要性が加速された」と語った。

 

同氏は「国内のeコマースの売上高が増加する一方、実店舗の損失を補うには必ずしも十分とは言えない。そのため、小売業者は、国外消費者に販売するという未開拓の大きな可能性をさらに活用して収益を拡大しなければならない」と述べた。

 

新型コロナウイルスのパンデミックが化粧品業界にもたらした変化は、コロナ禍が終息した後も続く可能性が高く、オンライン化粧品販売の新しい現実に適応できる企業こそが、将来的に存続し、繁栄できる企業であるといえる。

 

NakedPoppy のBisharat氏は以下のように語った。「非接触ショッピングへの要望はすぐには消えないだろう」。「消費者は、今、あらゆる種類のウイルスやバクテリアがどう拡がるかに敏感になっており、その結果、テスターの使用を避ける、または、最小限に抑えるだろうと予測している」。

 

「他人に、自分の顔に近づいてほしくないと今後も考える人もいるだろう。これは、そういう顧客にぴったりの化粧品を、非接触な方法で見つけ、購入できるソリューションを提供できれば、有利になるということを意味している」。

 

※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の12/17公開の記事を翻訳・補足したものです。