ECデータ分析サービスを提供する株式会社Nintは、世界中で人々の生活や消費行動に影響を与えている新型コロナウイルスによる外出自粛や休校/在宅ワークの影響がEC市場にどのような変化をもたらしているのか、Nintが提供する「Nint ECommerce」のデータから調査し、「新型コロナウイルスの影響によるEC市場動向調査レポート」を4月20日に公開した。その一部を紹介する。

 

1月31日にWHOより緊急事態宣言が出された新型コロナウィルスは、日本・世界で人々の生活や消費行動に影響を与えている。それによる、外出自粛や休校在宅ワークの影響がEC市場にどのような変化をもたらしているのだろうか。Nint ECommerceでは、ECモールに掲載されている商品ページ、ランキング情報、レビューなどの公開情報を収集・蓄積し、その膨大なビッグデータに独自開発の統計技術をかけあわせ、推計値として売上・販売数を算出している。対象モールは楽天市場、Amazon(マーケットプレイス含む、ドメインはamazon.jpのみ対象)、Yahooショッピング(20年データはpaypayモール含む)の3大ECモールとなる。

 

まずに、2019年1月~3月と2020年1月~3月を対象とした、「3大ECモール合計の月次売上昨対比」を見ていこう。例年2月は1月より売上が少ない傾向にあるが、2020年は2月が1月の売上を上回っている。また、昨対比は1月107%、2月113%、3月114%と月を追うごとに増加している。

 

 

売上伸長ジャンル

次に、月次の売上金額をジャンル毎に調査した結果を見ていこう。調査は、2020年3月の売上1,000万円以上のジャンルを対象とし、売上前年比が高いジャンルから見ていくランキング形式で結果を見ていく。ジャンルは各対象ECモールの定義によるものであり、表には商品の特性や商品レビューからコロナ動向が販売に影響していると推察されるジャンルに緑色のハイライトが引かれている。

 

楽天における売上伸長ジャンル

1位~10位においては、9位/10位以外、コロナの影響が反映され売上が増加したジャンルが並んでいる。
1位/4位/5位にマスク、8位に手作りマスクの材料として「ガーゼ」がランクイン。
2位の「保湿ジェル」は、コロナの影響によるアルコール洗浄タイプの手指ジェルの売上が増加した結果。
3位の「メディアストリーミング端末」はGoogleのクロームキャストが多く販売されており、ユーザーのレビューから学校休校の影響がうかがわれる。
6位のパルスオキシメーターは、簡単に血中の酸素飽和度を測定できる機器でコロナ感染による肺炎発症を確認する1つの参照データとなるとして販売が急増した。
7位の化粧品原料はエタノール原液の販売が伸びている。

11位以下においても、コロナの影響を受けるものが多く、TOP50のうち半数の25ジャンルにおいてコロナの影響が見受けられる。

 

Amazonにおける売上伸長ジャンル

1位~10位においては、1位/2位/4位/5位/7位にコロナの影響がうかがわれる商品ジャンルがランクイン。
1位の「ベビー体温計」は非接触型の体温計が多く購入された。
2位の「チェアパッド・座面クッション」は、長時間の座り仕事対策として体の圧力を分散させる効果が期待できるというゲルクッションが大人気となっている。
4位は自宅で過ごす時間が増えたことと「あつまれ どうぶつの森」のゲームが発売されたことから Nintendo Switch のゲーム機器を購入するユーザーが増えたと推察される。
5位の「除菌剤」は、首から吊り下げるタイプのウイルス除菌剤やアルコール除菌剤の販売が伸びた。
7位の「作業用マスク・防塵マスク」は通常の大人用マスクが入手できない人や、より高い感染予防効果を期待する人が購入して販売が急増した。

11位以下においても、コロナの影響を受けるものが多く、TOP50のうち34ジャンルにおいてコロナの影響が見受けられる。

 

Yahooにおける売上伸長ジャンル

1位~10位においては、7位/9位/10位以外、コロナの影響が反映され売上が増加したジャンルが並んでいる。
5位の「衛生、清拭(>介護用品)」は、除菌効果がある次亜塩素酸水の販売が急増した。

11位以下においても、コロナの影響を受けるものが多く、TOP50のうち31ジャンルにおいてコロナの影響が見受けられる。

 

 

3モール共通して、コロナ対策商品マスクやアルコール消毒等、巣ごもり消費関連商品(食品、ゲーム関連、リラクゼーショングッズ、セルフケアグッズ)、テレワーク関連商品(PC機器関連、チェアパッド)の増加が顕著であった。

 

これらのことから、3大ECモールの売上の昨対比は月を追うごとに増加し、3大ECモールおける売上伸長ジャンルのうち約5割から6割ものジャンルが新型コロナウイルスの影響によるものだといえることがわかった。このレポートは3月までを調査対象としているが、4月以降の緊急事態宣言に伴う外出自粛・テレワーク・休校の延長によって人々の消費行動の変化がEC市場へ更なる影響があると想定される。企業においてはその変化を見逃さないマーケティング活動が必要となるだろう。