確かなことは、今日のeコマースは、1995年とは違っているということである。1995年にグローバルECプラットフォームを運営する「eBay」という名の会社がeコマースシーンに登場し、Jeff Bezos氏によってAmazonが最初の本の注文を出荷した。それは、オンラインショッピングの飛躍的な普及の始まりとなり、その後、企業や消費者が、後ろを振り返ることは決してなかった。

 

<参考>

「eコマースの歴史」 コマースコラム

 

過去25年でeコマースは、小売やサプライチェーンなどの産業に革命をもたらしたといえる。米国国勢調査によると、2019年第3四半期におけるアメリカ人によるオンライン支出は1,545億ドルに到達。eコマースは、未熟な新参者から巨人に成長し、従来の実店舗小売モデルと競合しているのだ。

 

ハイテクハードウェアとインターネットの両方における過去10年間の進歩は、eコマースの台頭と直接的な相関関係がある。買い物客は、自宅やスマートフォン、お気に入りのアプリから商品を購入することを期待するようになっている。

 

現在では、多くの買い物客が、オンラインショッピングをショッピングプランに取り入れており、その高い利便性が従来型実店舗に変化をもたらした。顧客は、オンラインで購入した商品を店舗で受け取ることができるようになったからだ。

 

eコマース業界がいかに進歩したかを振り返ると、消費者向けとバックエンドテクノロジーへの投資、および絶え間ない進歩への機敏な適応能力が、eコマースの継続的な成功を保証する主要な要素であることは明らかであろう。

 

デジタル時代の幕開けにおけるeコマースの台頭

eコマースの歴史は、想像よりずっと以前に遡る。eコマースが最初に導入されたのは、約40年前の1969年、最初の大手eコマース会社であるCompuServeが設立されたときである。CompuServe は、企業向けにパソコン通信時間レンタルサービスを行っていた。

 

1970年代後半には、CompuServeは直接消費者向けのサービスを提供し始めた。そして、それから約20年後に、もう1つの大きなゲームチェンジャーとなるWebブラウジングツールのNetscape Navigatorが登場し、Googleといった現代の巨大企業の台頭以前のWindowsプラットフォームにおける主要なWebブラウザーとなった。

 

世界は、新しく登場したショッピング方法を歓迎したが、2000年代までのeコマースはかなり制限的なサービスであった。カスタマイゼーションとローカリゼーションといった選択肢はなく、最大手ブランドだけがeコマースにおけるプレゼンスを築くためのリソースを持っていた。

 

しかし、状況は変わった。2020年に向けて、その規模に関係なく、ほぼすべてのビジネスがオンラインでビジネスを行うことが可能となったのだ。カスタマイゼーションは、オンライン小売業者にとって標準となった。ハンドメイド商品販売サイトであるEtsyなどでは、ユーザーがカスタムデザインをオンラインマーケットプレイスにアップロードして、売り手が自分で作った商品を販売し利益を得ることが可能になっている。

 

企業は、自社に最適な独自のソリューションを構築することができるようになり、コンプライアンスを遵守し、自社が希望する支払い方法と顧客体験を提供している。顧客は、多くの選択肢と、よりパーソナライズされたサービスを提供されることにより、さらに力を与えられたと感じている。

 

今後買い物客の関心を引くために、大企業と中小企業の双方がすべきことは多くあるが、ブランドと消費者とのつながりを構築するための道筋は明確である。

 

eコマースの進化がもたらすグローバルなストアフロント

多くの意味で、eコマースは国境をなくした。グローバルeコマースは、2019年末までに20.7%増加し、3.535兆ドルに達すると予測されている。電子決済送信がより迅速で安価になったことで、グローバルにビジネスを展開することは当たり前のこととなっている。

 

とはいえ、グローバル市場への進出はリスクが高く、困難で、費用がかかる場合もある。 企業は、生き残るために、eコマースプラットフォーム、ベンダー契約、現地の銀行との関係構築、優先決済方法、現地の法律と規制の順守、税金と詐欺といった複雑な環境に対応する必要がある。新しい国への進出は、単に自国内で機能しているものを持ち出し、海外の別市場に適用するだけでは十分ではない。

 

ブランドが国境を越えて事業を展開する中で、決済処理が、より注力すべき重要な分野となるだろう。ブランドは、顧客の混乱を最小限に抑え、障壁を排除する決済処理戦略を策定する必要がある。

 

重要なことは、課金請求を最適化するために地元の銀行との関係を確立することである。この専門家チームを社内組織内に構築しようと考えている企業もあるだろう。しかし、それは時間とコストの両方がかかるかもしれない。事業者がビジネスを行うことを希望する国で、決済プロセスを適切に管理するためのインフラストラクチャと、現地のインサイトを備えた決済サービスプロバイダーと提携することにより、成功の可能性がより高くなるだろう。

 

急速な成長がもたらす規制の加速化

eコマースによって、グローバルな販売事業をより簡単にスタートできるようになった一方で、潜在的な法的問題も生み出すことになる。消費者はこの過去5年間、だれが自分の個人データにアクセスし、収集し、受信し、保存し、また、それ以外の方法で処理しているかという点を、ますます意識するようになった。

 

データ保護要件を標準化し、急速に拡大するデジタル経済における信頼向上のため、各国政府は、EUの一般データ保護規則(GDPR)やカリフォルニア州の消費者プライバシー法(CCPA)などの法律を制定し、全世界におけるビジネスの実行方法を実質的に変化させている。これは、グローバルなeコマースに大きな影響を及ぼしている。

 

オンラインでビジネスを行うブランドオーナーと小売業者向け規制環境では、引き続きより厳しい制限が課されるだろう。そして、消費者のプライバシーに関する懸念を無視した場合、罰金や罰則、ネガティブな報道、さらには顧客との信頼を失うリスクが高まるかもしれない。最終的には、迅速に適応し、効率的なデータプライバシーシステムとプロセスを実装できる企業が、その法的規制分野での取組みを競争優位性として活用できるのだ。

 

今後数年間、ブランドは、個人データの管理者としての役割をより真摯に受け止めるようになるだろう。それは、もはやグローバルなeコマース環境でビジネスを行うために支払うべき対価である。

 

eコマースからMコマースへ:これからの25年

eコマースが進化を続けるなか、オンライン小売業者にとって最も重要な2つのトレンドは、モバイルコマースとパーソナライゼーションである。顧客のニーズを全てのソリューションの中心に位置付けることは、継続的なeコマースの成功にとって不可欠である。

 

多くの消費者は、企業が提供する体験は、その製品やサービスと同じくらい重要だと考えている。消費者にはオンラインショッピングの選択肢が無限にあるため、利便性、信頼性、親しみやすさ、効率性を優先するエクスペリエンスを構築することが、現在および将来のeコマースビジネスを成功させるための鍵となるのだ。

 

顧客中心のアプローチとは、顧客がいる場所でサービスを提供することを意味する。そして顧客は、モバイルデバイスを利用している可能性が高い。購買習慣は、音声コマースやモノのインターネット(IoT)の収益化などの次のイノベーションへとシフトし、いつでもどこでも利便性の高い買い物ができることに対する顧客の期待はますます高まっている。

 

マーケティングリサーチ会社であるWorld Advertising Research Centerの調査によると、インターネットユーザーのほぼ4分の3(72.6%)に相当する約25億人が、2025年までにスマートフォンのみでWebにアクセスすることになるという。モバイルコマース(mコマース)では、小さな画面上で、ジャーニーの全過程を体験したいと考える大多数のユーザーに対応しなければならないのだ。

 

コマースが次に進む先を予測するのは簡単ではない。しかし、ブランドにとって、イノベーションの必須条件は、次の2つに要約されることは確実だろう。1つ目は、コンシューマテクノロジーの急速なペースに追いつくこと。そして、2つ目は、コンシューマテクノロジーを使用して、コアビジネスプロセスにおける新しい効率性を生み出すことである。

 

小売業者は、競争力を維持し、顧客ファーストであり続けるために、機敏で革新的で、消費者がどのチャネルを好むかに関係なく購買ジャーニーのあらゆる段階で消費者に接触する必要がある。

 

我々は、消費者が25年前に初めて経験した、オンラインで何かを購入できるという最初の発見から、さらに先へと進んでいる。今後25年間を見据えた顧客エクスペリエンスへの投資は、eコマースの継続的な成功の鍵となるだろう。

 

※当記事は米国メディア「E-commerce Times」の12/11公開の記事を翻訳・補足したものです。