人は、購入前にその商品を試してみるのが好きだ。インタラクティブな商品ビジュアルは、こうした商品を触わり、感じ、見て、聞きたいという願望から生まれたものである。デジタルインターフェースが主流の世界では、インタラクティブな商品ビジュアル提供によって、消費者は商品を購入する前に体験したり見たり理解したりすることができるようになる。
フランスの3DプラットフォームEmersyaのCEO、 Aurélien Vaysset氏は「インタラクティブな3D商品体験によって、消費者はまるで実店舗でのショッピングと同じようにオンライン上で商品を自由に検索できる。充実したコンテンツやカスタマイズ機能へ直接アクセスできるのだ」と語った。
さらにこれらの体験は、「オンライン消費者が、商品と完全にインタラクティブに触れ合い、商品のあらゆるディーテールの発見し、可動部を動画にし、内装部品を可視化し、臨機応変に色や材質のオプションを切り替え、部品をカスタマイズし、特別な機能について知ることを可能にする」と述べた。
時にリアルで物理的な実社会からかけなれていると感じてしまうショッピングプロセスで購入を検討している顧客は、インタラクティブな商品ビジュアルを利用することによって、その商品をより身近に感じることができる。この機能は消費者が商品の機能や用途、性能を調べる際に信頼感を与える。
米国のクリエイティブマーケティング代理店Column FiveのアカウントディレクターTravis Keith氏は、「直感的であるインタラクティブな商品ビジュアルの提供によって、消費者は、本質的に商品閲覧プロセスを完全にコントロールし、新しい方法で商品へアクセスすることが可能になる」と述べている。
インタラクティブの利点
インタラクティブな商品ビジュアル提供が非常に重要な理由の一つは、消費者の購入過程に利用することで、実際に購入に至る可能性が高まるということだ。
フランスの3Dエクスペリエンス企業Dassault Systèmesの3DEXCITE担当専務取締役Philipp Krambeer氏は、「商品のビジュアル化は、消費者が購入に至るジャーニーにおいて本質的に備わっているべき要素である。その理由は、多数ある」と語っている。
「最も重要なのは、実際の商品に触れる前に、所有感を植え付けることができることだ」と述べ、さらに「これは通常コンバージョン率の向上をももたらす」と加えた。
インタラクティブ化は商品カスタマイズにも活用できる。それは、カスタマージャーニーの特に強力なツールとなり、消費者の参加意識を増幅し、ブランドへのロイヤルティを強化することができる。
「可視化に加えて、商品カスタマイズ機能を提供することにより、消費者個々の嗜好や要望をハイパーリアリティに反映することができるようになる」とKrambeer氏。さらに「潜在顧客は、ビジュアル化を活用するブランドや商品のアドボケイツやアンバサダー、さらにはアドバイザーになる可能性が高くなる」と続けた。
カスタマイズの過程は、企業とその顧客との間に有益な双方向の交流関係を築くのにも役立つ。
Krambeer氏は「ビジュアル化は、カスタマイズをサポートするので、特定の地理的ロケーションや性別による嗜好などに基づく商品の好みに応じてターゲティングするための、非常に重要なデータをバックエンドで収集することが可能になる」と説明した。
同氏は、商品ビジュアル化によって、消費者は最終的により深く商品を理解することができると述べた。そして、「デジタルベースのビジュアル化された商品情報を提供することにより、商品の構成要素や独自の特徴や機能が可視化され、潜在的な購入者は前もってそれらを調べ、理解することが可能となる」と語った。
ポジティブな双方向
商品の実生活における体験をもたらすことにより、最終的にインタラクティブな商品ビジュアル化は効果の高いものとなる。そして、この体験の重要な部分は、直感的なユーザーインターフェースである。
「直感的でない、もしくは、操作が非常にやりにくい商品ビジュアルやそのツールを利用することほど、最悪なことはない」とColumn FiveのKeith氏。さらに「ほとんどの場合、質の悪いインタラクティブな商品ビジュアル体験の提供は、有害無益だ」と加える。
ユーザーインターフェースの効果は、ビジュアル化にアクセスするブラウザとデバイスによって決まる。そのため、この種の技術を販売やマーケティング戦略に組み込んでいる企業は、ユーザーが確実にビジュアルを利用できるブラウザやデバイスにアクセスできるようにすることが非常に重要となる。
Keith氏は「顧客がどのブラウザを使用しているか、徹底的なペルソナ調査を行うことが重要だ」と言う。「日常的に最近のブラウザを使用している若い世代にマーケティングを行っている企業もあれば、従来のブラウザを使用しているB2B企業に焦点を絞っている場合もある」と語った。
また、レンダリング自体の質も、インタラクティブな商品ビジュアルを成功させるための鍵となる。
Vaysset氏は、「レンダリングのリアリズム、インタラクティブ機能のスムーズさ、そして充実したコンテンツによってもたらされる付加価値が重要だ」と語る。さらに「技術的な観点から言えば、インタラクティブなデジタル体験を実現するには、適切な技術を備え、最適化された3Dモデルを使用することが必要だ」とのこと。
また、商品と会社について語られるすべてのストーリーに商品ビジュアル化を組み込むことは、消費者の体験と購買決定に良い影響を与えることができるもう1つの方法である。
EmersyaのVaysset氏は「優れたストーリーテリングによって、さらなる効果が生じる。それは、商品の主要な価値を消費者に伝えることができるからである」と述べた。
双方向の未来
今後、インタラクティブな商品ビジュアル化の進化は、3Dレンダリング、拡張現実、仮想現実の技術開発と並行して実現し、消費者により現実に近い形で商品に触れさせることを最終目標とする。
Vaysset氏は「拡張現実を使用し、ユーザーの好きな場所で商品を試すことを可能にすることは、次の大きなステップだ」と言う。そして「それは、アプリ単独ではしばらく前から実現していたが、顧客がそのアプリをインストールするためにeコマースサイトを一度離れなければならなかったため、大した成功には至らなかった。私たちは、eコマースのショッピングページを離れることなく、通常のEmersya 3Dの商品体験から拡張現実の体験への切り替えを可能にする、独自のアルゴリズムに基づくまったく新しいコンセプトをまさに発表しようとしている」と語った。
仮想現実と拡張現実の技術によって、消費者は商品そのものだけでなく、商品が特定の生活、家庭、車、その他のパーソナルスペースにどのように合うかを可視化できる。
Keith氏は「今後、商品ビジュアル化に関連した仮想現実と拡張現実の活用が増えるだろう」と語る。「Amazonは最近、商品を購入する前にその商品が自宅でどのように見えるかを確認する、拡張現実を使った動画機能をリリースしている」と加えた。
モバイル分野において、インタラクティブな商品ビジュアル化はますます導入が進んでおり、モバイルデバイスを経由してこれらのビジュアル化を探索することを可能にする技術は、この分野の成功のカギとなるだろう。
「当面はモバイルに絞られるだろう」とKrambeer氏。「消費者は、パソコンや実店舗で購入する前に、商品をモバイルで検索することが多い。変化は、新たなデバイスやチャネルにも起こるだろう」と語っている。
※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の5/13公開の記事を翻訳・補足したものです。