これは、モバイルアプリマーケティング企業LocalyticsのマーケティングコミュニケーションディレクターKristin Cronin氏による、プッシュ通知の利点を活かしたアプリユーザーのエンゲージメントとリテンション向上施策についての寄稿である。
モバイルマーケターにとって、かつて今ほど困難な時期はなかったのではないだろうか。アプリのユーザー数は減少を続けている。どうしてこのような事態になったのだろうか。さらに、どうすればユーザーの減少を食い止めることができるのだろうか。
今こそ事実に向き合うべきである。すべてのアプリがSnapchatやInstagramのようになれるわけではないのだ。さらに、iPhoneやAndroidの最大容量デバイスでさえ、主要なアプリストア内にいくつも存在するアプリをほんの一部ダウンロードするのに、十分な容量を有していないのも事実である。
2018年第1四半期における主要アプリストアにおける有効アプリ数
ユーザーは最終的に、最も重要で価値のあるアプリのみを選択し、使い続ける。
この”ユーザーがいかに気まぐれであるか”という点は、しばしば見落とされがちである。実際のところ、ユーザーの21%は、アプリを一度しか使用しない。そして、71%が、90日以内にアプリの使用をやめてしまうという。
それでは、こうしたモバイルアプリの”休眠ユーザー”を引き止めるためには、どのような具体的な施策があるだろうか?見過ごされがちな方法の1つに、「プッシュ通知」の活用がある。
プッシュ通知
「プッシュ通知」は、主要なモバイルアプリマーケティング戦略であり、正しく実行すれば、信じられないほどの効果をもたらすものである。
一般的に、ユーザーがプッシュ通知の受信に寛容になっていることは、マーケティング担当者にとって好ましい状況だ。モバイルアプリのマーケティング会社であるLocalyticsが最近行った調査によると、52%のユーザーが、数年前と比較して、現在のプッシュ通知はより有益であると回答しているのだ。
ユーザーにとってより有益なプッシュ通知を発信するヒントがある。そのいくつかの方法を考察してみよう。
プッシュ通知の送信頻度
まず、(マーケターはユーザーに)莫大な量のプッシュ通知を送信していないか、ということを常に意識すべきである。限度を超えた量のプッシュ通知は、多くの無意味で役に立たないメッセージによってユーザーを不快にしがちであるからだ。仮にそれが有益なメッセージであっても、ユーザーは大量のメッセージを受け取ることを好まないものである。
個人情報の保護が最重要視されている昨今では、行き過ぎた行動ターゲティング(オンライン上の行動履歴情報を利用するターゲティング手法)によるプッシュ通知送信は、特に注意の必要がある。ユーザーの行動情報ベースのキャンペーンにおけるプッシュメッセージの最も効果的な送信頻度は、1週間に1回だというデータもある。
一方、一部の事業者にとっては「ユーザー行動をベースとして送信するプッシュ通知」は、非常に効果的であると言えよう。たとえば、NBCやNetflixなどのストリーミングアプリにて、ある番組の最初の3つのエピソードを視聴したが、まだ4番目のエピソードを視聴していないユーザーにアプローチしたい場合には、アプリに再度アクセスさせる有効な手段となるだろう。
90%のユーザーが「1週間に1件のプッシュ通知を受信することに問題はない」と考えていることは実証されており、この頻度でプッシュ通知送信を試してみることは比較的安全である。しかし、1週間に複数回のプッシュ通知の送信は、ユーザーに度を越していると感じさせ、オプトアウトさせる危険性がある。
プッシュ通知設定
ユーザーにとって問題ないだろうと仮定し、ユーザーの位置情報や行動データに基づいて通知を送信し続けるよりも、ユーザーにより多くの設定の選択肢を提供することが重要であることがわかっている。
つまり、送信する前に、ユーザーが「どのような通知を受け取りたいと考えているか」を尋ねるべきである。特定の種類の通知を受信するかどうかのオプションを(事前に)提供することで、プッシュ通知受信により前向きなオーディエンスを獲得することができるのだ。
また、”コンテンツの種類”に関する通知の、受信オプションの提供を検討すべきだ。プッシュ通知は、新しいコンテンツを紹介するための優れたツールである。たとえば、ユーザーサイズのブラックドレスの衣装や、最新ニュースといったタイムリーな情報を提供したり、待望の「Game of Thrones( HBOのテレビドラマシリーズ)」のプレビュー版を紹介したりするプッシュ通知などが良い例である。
ユーザーは、自身によるプッシュ通知の設定に次ぐ最も有益なトリガーとして、プッシュ通知の”位置情報トラッキング”を挙げている。このことから、物理的な拠点を有するビジネスであれば、ジオフェンシング(地図上にバーチャルなフェンスを設置し、ユーザーが特定のフェンスに出入りした時に、システムから特定のメッセージなどを送るシステム)は試してみる価値があるということだ。モバイルは本質的にロケーションベースであるため、マーケターはこのジオフェンスを活用し、ユーザーの位置情報をベースにユーザーが望む瞬間に、望む方法でコンタクトすることが可能なのだ。
結論
結局すべてのマーケターは、アプリのリテンションを向上させ、ユーザーの離脱を減らすことを最優先に考える必要がある。前述のプッシュ通知に関するヒントのいくつかを実行することで、既存ユーザーを長期的に引き止めることができるだろう。結局のところ、ユーザーは、アプリ事業者が自分達に関心があるかどうか、ニーズに対応しようとしてくれているかどうかを知りたいのである。
※当記事は米国メディア「Marketing Land」の6/14公開の記事を翻訳・補足したものです。