観光庁は、「平成29年度観光の状況」及び「平成30年度観光施策」(観光白書)を公開。越境ECの動向や、日本製品で人気の商品、訪日観光による越境EC売上高への影響に関してまとめている。
観光白書より、越境ECに関する部分をピックアップし紹介する。
世界の越境EC売上高は2020年には1兆ドル近くにまで達する
越境ECの動向に関して、経済産業省による「平成28年度我が国におけるデータ駆使形社会に係る基盤整備」(電子商取引に関する市場調査)によると、全世界の越境ECの売上高の推計値は2015年が約3,040億ドルで、その後毎年対前年比で20~30%程度の成長が見込まれている。2020年には9,940億ドルに達すると推計されている。
さらに、同調査では日本、米国、中国の3カ国の越境ECの市場規模を調査しており、米国からの購入額は2016年に6,156億円、中国からの購入額は10,366億円とされ、日本にとって、中国への越境EC規模が特に拡大していることが分かる。
越境ECで人気の製品の多くは輸出額が増加
越境ECでの人気商品は、中国、香港、台湾で傾向が似通っている。紙おむつ、スキンケア商品、ヘアケア用品、健康食品、サプリメント、シリアル食品、ベビー服、空気清浄機、電気炊飯器が人気商品とされている。これらのうち、紙おむつ、スキンケア化粧品、ヘアケア用品、健康食品、サプリメントについては、品目により差はあるものの、2014年または2015年に旅行商品額の増加とともに輸出額も増加していることが見て取れる。
このことから、訪日観光がきっかけとなり、帰国後も何らかの手段で日本製品を購買する動きが広まっていることが伺われる。
訪日観光をきっかけとした越境ECの規模は6,000~8,000億円程度
観光庁において、日本製品の購買動機についてのアンケート調査を実施したところ、「自身の訪日観光がきっかけとなった」と回答した割合が3~4割と最も多く、「訪日した知人から貰って/買って/見聞きして良かったから」「SNSの投稿や記事、報道などがきっかけになった」それぞれで2割程度の回答を得ている。
また、自身の訪日観光をきっかけとした越境ECによる日本製品購買規模を推計したところ、訪日外国人旅行者による旅行消費額が多い上位5か国(中国、台湾、韓国、香港、米国)において、約6,300億円程度と見込まれた(2017年)。また、その多くを中国が占めており、3,500億円程度の規模だと見込まれる。さらに、訪日した家族・知人による購買がきっかけとなって自身が越境ECを通じて購買した場合は1,500億円程度だと考えられ、間接的な訪日観光の影響を含めれば、8,000億円程度の越境EC取引を創出したことが伺われる。
今回の観光白書から、世界の越境ECは拡大しており、日本での越境EC売上高の拡大に関しては、訪日旅行で日本製品に触れたほか、実際に日本製品にふれた人の口コミやSNSの影響も越境ECでの購買に影響を与えていることがわかる。他国の商品を取り扱う越境ECにおいて、ユーザーは国内ECを利用するよりも商品に関して、よりリアルな情報を欲していることが伺われる。