中国で越境ECを楽しむ「海購」の属性とトレンドを読み解く - TmallとCBNDataによる詳細データ

 

第一財経ビジネス·データーセンター(CBNData)Tmall(天猫)と共同で、「2015年度中国越境EC消費レポート」を発表した。当該レポートによると、中国において越境ECが急速に発展している中で、Tmall Global(天猫国際)は中国の消費者が中国国外からオンラインを通じてモノを買う場合に、最も利用されているサイトとなっているようだ。中国の消費者は、越境ECで育児・ファッション関連から化粧品などの日用品まで、幅広い商品を購入するようになってきている。そのような越境ECをオンラインで楽しむ「海購」族がここ数年で非常に増えてきている。また地域別に見ると、新疆をはじめ中国の中西部地域(地図左側)での興味が非常に高くなってきている。

また、越境ECで人気のある育児関連製品の消費層から見ると、中規模以下の都市(中国では、三、四線都市と呼ばれている)に住んでいる世帯では、大都市より越境ECで大きな金額を費やしているようだ。それではレポートの中身をしっかり見ていこう。

 

<参考>

【中国ECニュース】2016年上半期中国での海外からのEC購入レポート - 日本のインテリア、デジタル製品、化粧品は人気

 

 

中国における越境ECのトレンドの急速な高まり - 海購は高品質なライフスタイルを求める

 

多くの中国の消費者のイメージでは、ブランドものの皮製品を買うならイタリア製、時計を買うならスイス製のような「世界地図」が頭の中に存在している。そのため、ドイツからの乳製品、フランスとイタリアからのブランド品、日本からのオムツ、韓国ブランドの化粧品はそれぞれの商品カテゴリにおいて最高の品質だと考えられている

また、一連の政府による越境EC施策によって、中国における越境ECは2014年から2015年までの一年間で飛躍的な発展を遂げた。そしてこれからの3~5年も引き続き高いスピードで発展していくことが期待されている。今やおよそ53ヶ国、5,400ブランド以上の店舗がTmall Globalで出店しているため、中国全土の消費者にとって、「海購するならTmall」というような大きな存在になってきている。

また、Tmall Globalは2015年に中国国内の保税区を活用した購買・物流モデルを構築。事前に保税区で審査を済ますことで、越境ECにおける注文から商品到着までの時間を短縮することに成功し、海外商品の輸入価格も低減した。さらに、Tmallは、中国消費者がより便利に“海購”をするために、「地球村」というコンセプトを作り、14カ国の国別の店舗である“国家館”を導入した。

報告書のデータによると、中国全土で最も人気のある外国商品のジャンルは、育児関連、美容・健康であった。Tmall Globalでは、そのようなニーズに呼応するように日本のMIKI HOUSEと花王、アメリカのWyeth、Heinz、Abbott、Nestle、フランスのDANONE、ニュージーランドのA2などの有名ブランドが出店している。これらのブランドはTmall Globalでのオンライン店舗で中国のママに中国国外の良い商品を直接提供している。

中国の消費者は、育児関連商品から、靴・服・化粧品など様々なジャンルにおいて高品質な商品を求め、クオリティの高い生活レベルを求めている。Tmall Globalが稼働し始めた2014年度の第一四半期では、育児関連商品は最もホットな商品ジャンルであり、その以降も高い人気を維持している。一方で2014年第三四半期から2015年にかけて、化粧品やファッション関連商品の全体の売上シェアは徐々に下がってきている。また逆に茶類と酒類、健康食品、インテリアのシェアは上昇してきている。

 

 

地域別のトレンド - 主要都市だけでなく地方へも急速に広がりを見せる

 

Tmall Globalのユーザー居住地域とカテゴリ毎の人気度合いの分析を見ていこう。まずは主要都市について見ていく。大都市でも、北上広深(北京、上海、広州、深セン)の消費者は、異なる商品ジャンルのニーズが高くなっているようだ。

北京人は「遊び」好きのため、アウトドア商品と家電などのデジタル製品へのニーズが大きかった。上海人は生活の品質を重視するため、インテリア・雑貨や飲料・食料へのニーズが大きい。また、広州と深センに在住する消費者は、育児、ファッション、健康食品へのニーズが高かった。

地域別に見ると、ネットショッピングがかなり普及している華東(地図右側)と華北(地図中央上部)は、輸入商品の購買でも非常にニーズが高いようだ。

華北は健康食品や化粧品、華東の沿岸部は育児関連商品の人気が高い。華東の沿岸部と京津(北京と天津)は元々ネットショッピングの浸透率が高く、輸入商品を取り扱うスーパーも普及しているため、消費者の輸入商品への親近感が高い。一方でそれほど親近感が高くないはずの内陸地域でも化粧品や健康食品などの商品への人気があり、越境ECが中国全土に広がってきていることが分かる。

また、越境ECの浸透率を見ても地方の勢いは非常に大きくなってきている。「お金持ち」が隠れているといわれている新疆、貴州、四川、青海、広西及び重慶をはじめ、中国西部に在住している消費者は、上海、杭州などの大都市の海購族より購買意欲が高くなっている。特に新疆省は、江浙沪(江蘇省、浙江省、上海市)と並んで、「輸入大省」と呼ばれている。そして、新疆省の海購族の主力消費層は、中年女性(いわゆるおばさん層)であることも興味深い。彼女たちは、健康食品から、化粧品、香水、カバンや腕時計まであらゆるジャンルの贅沢品を強く求めている。

このように、「海購」というキーワードは主に大都市圏で生み出されたものの、今や中規模以下の都市や華北や華東などを中心に広がりを見せている。これは、高品質な生活へのニーズが地方でも高まっているが、輸入商品の購入ルートが限られていることが影響している。店頭ではなかなか手に入らない輸入商品を、オンラインの越境ECプラットフォームを通じて、そのニーズを解消しているのだ。こうして今や地域を問わず中国全土で「海購族」が浸透するようになったのだ。

 

 

年代別のトレンド - 「90後辣媽」と「育児パパ」が新たなトレンドを作る

 

年代別にも面白い傾向が見えてくる。中国の消費のトレンドを牽引するのはもちろん女性だ。特に「90後辣媽」(90年以降生まれのラマ:出産後も美しいスタイルを保ち、個性的で、はつらつとした生き方を追求する1990年以降生まれの女性)がトレンドの中心だ。ここ数年、彼女たちの世代が出産を迎えたことにより、大きく消費構造が変わってきている。元々美意識が高い辣媽たちは、出産前はマスク、乳液、化粧水などのコスメへの出費が最も大きかった。出産を期に辣媽の消費観は、「すべては子供のために」という母性的なものに一気に変化していく。そのため育児関連商品への出費は一気に上昇し、年増加率は246%まで上がったとともに、自分への出費が急速に減っていった。

辣媽が一番信頼されている乳児向けの輸入粉ミルクのブランドはAptamil、Nutrilonだ。また、粉ミルクの原産地として、ドイツ、オランダ、オーストラリア、イギリス、アメリカは最も安心できるようだ。これらの国の製品は粉ミルクで信頼を獲得したことで、他の育児関連商品でも人気が高くなっている。

一方で育児をしっかり行うパパ世代、「育児パパ」も増えてきている。育児パパは中・小規模都市に在住し、20代から30代までの男性が中心。このような育児パパは越境ECプラットフォームを利用して、海外のおむつと粉ミルクを積極的に購入している。このような海購に熱中する中・小規模都市の「育児パパ」の出現は、実店舗での海外製品の供給不足を反映しているものともいえる。

 

このように中国で盛り上がってきている越境ECを行う「海購」だが、地域や年代によっても異なる傾向を示しており、今後中国市場を攻略していくためには、このようなトレンドへの理解も重要なものとなってくるだろう。

 

 

※当記事は中国メディア「第一財経」の記事、及びレポートを翻訳・補足したものです。