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2016/02/02

アリババの怒涛の買収攻勢はアジアのEC業界をどのように変えていくのか

アリババの怒涛の買収攻勢はアジアのEC業界をどのように変えていくのか

 

中国最大のEC事業者として知られているアリババによる買収劇が昨年後半に立て続けに発表され、世界中で大きな注目を集めている。アリババは中国経済の成長の鈍化(2007年の14.16%から2015年は6.81%へ)と足並みを揃えるように、ここ数年は成長のスピードが鈍ってきている。アリババの流通総額(GMV)は成長はしているものの、前年比成長率で見ると、ここ数年は市場予想に届かず右肩下がりの傾向が続いている。今回はその買収がそれぞれ何故行われ、今後どのような影響が出ると予測できるのかを詳しくみていきたい。

アリババの怒涛の買収攻勢はアジアのEC業界をどのように変えていくのか

 

 

アリババとは

 

アリババは1999年にB2Bの商取引をマッチングするサービスのアリババドットコムを開設し、B2Bに特化したECサイトとして世界でも有数の取引高を誇る。

サイト内のやり取りは主に英語が用いられており、中国国内だけでなく、世界各国との商品のやり取りを行うマーケットとして確立されている。その他に、中国ではBtoCよりも流通総額の大きなC2Cサービスで80%のシェアを誇り、アジアでも最大の淘宝網(Taobao.com)や、BtoCのECサイト天猫(Tモール)を運営。これらをはじめ、アリババグループは世界190か国で多数のサービスを展開する、世界でもトップクラスのEC関連企業だ。アリババの買収劇といえば2005年10月にYahoo!の中国版である「Yahoo中国」を買収したことでも業界を騒がせたが、ここ最近もその攻勢は緩む気配がない。

 

<参考>

中国向け越境ECに踏み出す際に活用したい代行サービス - 素早く円滑に越境ECを開始するために

世界を席巻出来るか、中国・日本・韓国のBtoC向け巨大ECモール - 天猫tmall、楽天市場、Gmarket

 

 

Youku Tudou

 

アリババは2015年11月6日、中国最大のオンライン動画サイトを運営する「Youku Tudou(優酷土豆)」を買収することで最終合意に達したと発表した。買収が完了するのは2016年第1四半期頃と見られる。買収金額はアリババからは非公開となっているが、42億ドル程度と予想される。Youku Tudouの取締役会は全会一致で承認しており買収完了は確実なようだ。

 

現在Youku TudouはYoukuとTudouという類似のサービスを共に運営しているが、元々はYoukuとTudouは別会社で長年ライバル関係にあった。しかし2012年に合併しYouku Tudouとなる。その後2014年4月に、アリババはYouku Tudouの18.3%の株式を取得。既に出資をしている状態であり、今回はその流れをさらに進めて強固な形にしたものとなる。完全に買収することで、月間5億8,000万人以上といわれるオンライン動画ユーザーを確保。これは中国の3分の1以上の人口となる。また、中国インターネット管理団体China Internet Network Information Center(CNNIC)によると、そのうち75%以上がスマートフォンからのアクセスとなっているようだ。

動画とEC事業は一見無関係に見えるが、アリババは中国経済全体の減速化などを見越して、事業範囲をEC事業だけでなく、デジタルメディアで行う娯楽全般に広げようとしているようだ。

 

 

香港サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙

 

アリババは2015年12月11日、香港最大の英字紙「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)」を発行するSCMPグループのメディア事業を買収することを発表した。買収額は約2億6,000万ドル。

SCMPグループのメディア事業はSCMPの電子版も含めた新聞だけでなく、雑誌や教育事業も包含されているため、こちらの買収も既存のEC事業とは少し離れたものとなる。さらにこの買収は他の問題も露見した。アリババ会長の馬雲氏は、中国共産党の習近平国家主席と関係が深いと言われており、買収後のSCMPの報道が中国寄りになる可能性が指摘されている。

香港はそもそも1997年にイギリスから中国に返還されたが、その後親中派の新聞が増えてきている。そんな中SCMPは中国本土の情報を自由に伝える革新的な新聞として、支持が高い。このような懸念を受けてか、アリババは即座に買収後の編集の独立性の尊重を宣言。その宣言通りに、アリババが持つデジタル技術によってSCMPの電子版を広く世界規模で拡大していってもらいたい。

 

 

Ele.me

 

アリババグループは2015年12月17日、上海のオンライン料理宅配サービスEle.meに12億5000万ドルを出資することで合意したと、中国のビジネス金融メディアCaixinが報じている。

これにより、アリババはEle.meの27.7%の株式を持つ最大の株主となる。Youku Tudouと同じく、まずは1/3弱の投資を行い、親和性が高ければ完全買収へ踏み切る布石となるものと思われる。

Ele.meはこれまでに10億9,000万ドルの調達を行っており、その大部分がアリババのライバルにあたるTencentによるもの。アリババにとって今回の投資は、O2O戦略の大幅な強化だけでなく、ライバルに釘を刺す意味もあったと考えられる。

 

 

アジアのEC業界をどのように変えていくのか

 

様々な目的で数多くの企業を買収してきたアリババだが、買収したそれぞれの企業とお互いが持つ強みで、技術やノウハウを補完し合おうとしていることがうかがえる。今回の買収によって、各売り手企業が持つ多彩かつ優れた技術を自社に取り込むことに成功した。これによって、コストをかけずに既存事業規模を拡大したり、今まで参入できていなかった市場に参入することができたりと、会社を大きくしていく上で非常に多くのメリットを得たといえる。

中国国内経済が飽和状態の今、アリババのアジア地域におけるインフラ関連の多額の投資と、関連事業への投資は、事業とエリアの両面での拡大を目指していることを意味している。アリババはアジアだけでなく世界最大のデジタルメディアとなるのは、そう遠い未来の話ではないかもしれない。