年末年始も動き続けたEC業界再編 - 買収・資金調達から占う2016年の展望 | EC業界ニュース・まとめ・コラム「eコマースコンバージョンラボ」
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更新日2016/10/07 公開日2016/01/27

年末年始も動き続けたEC業界再編 - 買収・資金調達から占う2016年の展望

年末年始も動き続けたEC業界再編 - 買収・資金調達から占う2016年の展望

 

既に年が明けてから1ヶ月が経とうとしているが、この年末年始のEC業界の動きについてまとめてみたい。EC業界ではいくつかの買収・統合、そして資金調達のニュースが流れてきた。この手の再編は水面下で数ヶ月程度の調整が行われるのが通常で、年内や期内に資金の動きを行うことが一つの目安となるので、この時期のリリースが多いという側面もある。今回はこれらの買収と資金調達の狙いを見ていきたい。

 

<参考>

動き出したEC業界再編の流れ - 大規模買収・提携でEC業界地図はどのように塗り替わるのか

 

 

GILT

 

高級百貨店「Saks Fifth Avenue(サックス・フィフス・アベニュー)」や「Lord & Taylor(ロード&テイラー)」を展開するカナダの老舗デパートチェーングループHudson’s Bay Company(以下HBC)は、フラッシュセールサイト大手の「GILT(ギルト)」のGilt Groupe Holdingsを2億5000万ドル(約300億円)で買収すると1月7日に発表した。

GILTは毎日21時から限定78時間でブランド品を最大70%オフで販売するセールサイトで、2007年にサービスを開始。日本にも2009年に進出し、現在は全世界で900万、日本国内だけでも200万人を超える会員に利用されている。

GILTはファッションアイテムやインテリア雑貨の過剰在庫をアウトレット価格で販売することで急成長し、2011年には10億ドル(約1200億円)もの企業価値が付けられた。しかし小売企業が自社でアウトレット事業を行なうようになり、次第に業績が悪化。今回はピーク時の4分の1の価格での買収となった。

HBCは今後、同社が運営するアウトレット・チェーン「Saks OFF 5TH」の店舗内でGILTのコンセプトストアを展開し、新規ユーザーの獲得とSaks Off 5thの小売りネットワークのマルチチャネル化を強化する考えだ。Saks OFF 5THのEC事業はここ数年で急速に伸びており、ここにGILTが加わることでさらなる成長が見込めると考えている。5年前にフラッシュセールサイトの「HauteLook(オートルック)」を買収したNordstrom(ノードストローム)のように、老舗デパートがいかにオンラインの顧客を取り込んでいけるかが鍵となるだろう。Saks OFF 5THは現在全米で90店舗を展開しており、今後は年間で約25店舗の新規出店を計画しているとのこと。なお、今後はGILTで購入した商品の返品をSaks OFF 5THの店舗で受け付けるようにするという。

 

<参考>

フラッシュセールサイト - ブランドイメージを維持しながら巧みに購買意欲を煽るGILT、BRANDS for FRIENDS、GLAMOUR-SALES

 

 

Cloud Robot

 

楽天株式会社は、昨年末にEC事業者支援サービスの「Cloud Robot(クラウドロボ)」を展開するハングリード株式会社を完全子会社化した。

Cloud Robotは、ECサイト運営におけるさまざまな業務を効率化するためのクラウド型システムで、店舗に合わせて必要な製品を組み合わせて利用するというもの。楽天市場の広告効果を測定して改善につなげる「アドロボ」や、複数店舗の在庫を自動で連動自動化させる「ザイコロボ」、商品管理を簡単に行なえる「アイテムロボ」、受注業務を効率化する「ロボットイン」といった4つの機能を提供しており、これらのサービスはこれまで1,000社を超えるEC事業者に導入されてきた。今回同社が楽天の傘下に入ったことで、より楽天市場の出店店舗に特化したEC支援サービスが提供されることとなる。

 

 

ショップチャンネル

 

ケーブルテレビ最大手のジュピターテレコム(以下J:COM)は、テレビ通販最大手のジュピターショップチャンネル(以下ショップチャンネル)を買収すると発表した。

J:COMとショップチャンネルはともに住友商事が50%ずつの株式を持っており、ショップチャンネルは元々住友商事の完全子会社であった。今回の買収は、住友商事が過去に米投資ファンドのベインキャピタル・パートナーズに売却したショップチャンネルの株式を買い戻すということになる。これに伴い、KDDI株式会社も住友商事が現在保有しているショップチャンネル株式のうち5%を取得。J:COM、住友商事、KDDIの3社は、今後協力してショップチャンネルのさらなる企業価値と顧客満足度の向上に努めるとしている。

ショップチャンネルは、全国2,871万世帯で視聴可能となっている国内最大級のテレビショッピング専門チャンネルで、1996年に日本で初めて生放送を取り入れたショッピング専門チャンネルを開局。以来、ファションアイテムやコスメ、インテリア雑貨、家電、美容・ダイエット用品といった幅広いジャンルの商品を視聴者に紹介してきた。現在は24時間365日生放送を実施し、年間売上高は1,365億円と創業以来18期連続増収を続けている。一方J:COMは、約500万世帯にサービスを提供する国内最大のケーブルテレビ事業者として、視聴者の暮らしを便利で快適、かつ豊かにする取り組みを続けてきた。ショップチャンネルとJ:COMの利用者は50歳代~60歳代と共に顧客層が重なるため、今後は両社がより協力して営業活動やプロモーション施策を行っていく考えだ。また、J:COMはケーブルテレビの動画サービスとインターネットを結びつける戦略を強化しているが、高齢者を中心に訴求力があるテレビ通販番組を持つショップチャンネルを買収することで、コンテンツをさらに強化していくとしている。

 

<参考>

テレビ・ネットの融合に取り組むテレビ通販の奮闘 - 巨大メディア視点での次世代メディア活用から学べること

 

 

その他の資金調達

 

買収以外にもいくつかの大型の資金調達のニュースも入ってきた。

 

BASE

ネットショップを無料で簡単に開設できる「BASE(ベイス)」を提供するBASE株式会社は、日本最大のフリマアプリ「mercari(メルカリ)」を運営する株式会社メルカリを引受先とした最大4.5億円の第三者割当増資を実施し、資本業務提携を締結した。

BASEで開設された店舗数は現在20万店舗。今回の資金調達により、ショップへの集客を強化し、各店舗へ送客することによる販売促進を狙う。

 

<参考>

フリマアプリで気軽にモノを売る - フリル、メルカリ、STULIOは群雄割拠のC2Cコマースの勝者に成り得るのか

Stores.jp・BASE・ZEROSTORE 最近話題の無料出店可能な3モールを徹底比較

 

フロムスクラッチ

次世代型マーケティングプラットフォーム「B→Dash」を提供する株式会社フロムスクラッチは、電通デジタル・ホールディングスグローバル・ブレイン日本ベンチャーキャピタルおよび既存株主を割当先とした総額10億円の第三者割当増資を昨年11月に実施した。

B→Dashは企業のマーケティングプロセス全体のデータを統合し、一気通貫で分析するSaaS型のマーケティングプラットフォームで、Web上の集客から顧客管理までを一元管理することができる。同社は今回調達した資金をもとに、オフライン・非構造データの取得機能の開発や、人工知能の開発強化を進めていく考えだ。

 

 

買収・資金調達から占う2016年の展望

 

GILTのケースは、オンラインの強みを持つ企業をリアルで強みを持つ企業が買収した事例といえる。昨年5月に日本でも、大丸松坂屋百貨店やパルコなどの持ち株会社であるJ.フロント リテイリング千趣会を子会社化した事例が記憶に新しいが、その流れと似ているものと見ることができるだろう。

楽天は電子図書館サービスOverDriveを昨年3月に、バーチャル試着室のFits.Meと旅行計画スタートアップVoyaginを昨年7月に買収するなど、国内外に亘り買収の動きを少し強めており、今年に入ってもその動きが変わらず継続しているという形だろう。国内では長きに渡ってEC業界の覇者であったが、ここ数年はAmazonなどの他の勢力に押され気味なところがあり、積極的に次の展開を模索している状況といえよう。

一方、J:COMとショップチャンネルはコンテンツの統合という視点で見ることもできるが、ケーブルテレビとTV通販というオンライン上でのコマースやメディアと言ったトレンドの以前からあったチャネル同士の統合という守りの側面の印象も強い。この統合後、オンライン上での取り組みを強化していくことが出来るのか、はたまた既存チャネルとしての足元を固めるだけの取り組みに終始するのか気になるところだ。

資金調達を行ったBASEは今後の方向性が少し見えにくい中、新たな打開策を見出すことができるのか。また、フロムスクラッチは今年度の期待のサービスの仕込みといえよう。

いずれの買収、資金調達も2016年のEC業界の激動の幕開けとなるのか、今後の動きに注目していきたい。

 

 

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