アパレルECに横たわる根源的な3つの課題は解消するのか - サイズ・レコメンド・コーディネート

 

オンラインでアパレル商材を購入することも多くなってきているが、依然として買ったことがないブランドなどでは、購入を躊躇するケースが多いのも実情だ。アパレルECにおけるコンバージョンを阻害する3つの課題として挙げられる、サイズ・レコメンド・コーディネート。この服のサイズが自分に合っているのか、もっと自分好みの服があるんじゃないか、この服をどんなコーディネートで着たらいいのか、と誰もが思ったことがあるのではないだろうか。今回は続々と登場しているこれらの問題を解決するためのサービスついて紹介していく。

 

 

 

サイズ - フィットするサイズの提案

 

オンラインでアパレルを購入する際に最も不安になるケースが多い「サイズ」。サイズ表やモデルの着用写真、口コミなどだけではよくわからないのが正直なところだろう。その課題を解決すべく、ここ数年で持っている服と比較したり、自分のボディサイズを登録することで、その問題を払拭してくれるサービスが登場しているので紹介していきたい。

 

 

Virtusize

 

Virtusizeは自分の持っている服と比較して、サイズ感を測れるサービスだ。

 

 

マガシークが導入したことで話題を集めたが、その後ディノスユナイテッドアローズのオンラインショップなど、導入企業が増加している。 以前に購入したアイテムとの比較ができるため、利用したことがある場合とても簡単に比較ができる。以前に購入したアイテムがない場合は、手持ちの服をメジャーで採寸して登録すれば比較することができる。

 

<参考>

アパレルECでWEAR、Virtusize、VAULTが提案する次世代のオンライン商品選択の姿

 

 

True fit

 

True fitはボディサイズと愛用しているブランドのサイズを登録することで、ブランドごとの利用者のベストなサイズを割り出し、最適な服や着用感などを教えてくれる米国のサービスだ。

 

 

今年に入ってから1,500万ドルの資金調達を行ったことを発表し勢いに乗っている。数多くのECサイトで導入され、1,500社以上のブランドのサイズを確かめることができることで人気を呼んでいる。日本ではまだ導入されていないが、ユニクロやadidas、mizunoなど日本で馴染みのあるブランドも登録されている。

他にも「Fits.me」という米国のサービスも身長や体重、よく着るブランドのサイズなどからおすすめのサイズを提示してくれる。「fashion metric」は、ユーザーのサイズにあった服を提案してくれるという機能がある。

これらのサービスは、EC事業者から見た際の最大のメリットは商品の返品率やサイズに関する問い合わせやクレームの減少に役立っているという点だ。また、サイズが合いそうだから買ってみようと購入への後押しとなり、購買率や顧客満足度がアップするなど、ユーザーの不安を払拭することによってユーザーだけではない嬉しい効果が現われているようだ。

 

 

レコメンド - 好みに合わせておすすめを提案

 

服をおすすめされる際に画一的なレコメンドでは逆に不快感を覚えるときもあるだろう。そんなユーザーの心理を理解し、あくまでユーザー各個人の好みを学習し、おすすめの商品を提案してくれるアプリが登場している。

 

 

SENSY

 

SENSYは、昨年の11月にリリースされた、その人のセンスに合わせてアイテムを選んでくれる新感覚アプリだ(App storeのみ)。

 

 

出てきたアイテムを“like”か“dislike”か選ぶことで、 人工知能(AI)がその人のセンスを学習し、好みのアイテムを表示してくれる。 選べば選ぶほど、その人にあったものがレコメンドされていく仕組みだ。 表示されるアイテムは1,600以上のブランドで、毎日更新される。

また、”like”を選んだアイテムはカテゴリー別やブランド別、値引き額別に整理されて見ることができ、その場で購入することができる。 最近では、リアル店舗での実装実験が行われた。ブランド用にカスタマイズされたアプリを店舗に設置されたタブレットに表示させ、”like”か”dislike”か選ぶことで、好みにあわせたアイテムをランキング形式で表示してくれるというものだった。

このようなアプリが、ECのサービスからリアル店舗での接客サービスとして使われるようになっていくと、街での買い物も思いがけない商品に出会えてより楽しくなるかもしれない。

WISHFEEDも同じようなアプリで、SENSYとほぼ同時期に公開されている。

 

 

STYLESEEK

 

キュレーションコマースというカテゴライズもされることもあるSTYLESEEKもユーザーの好みにあったアイテムを表示してくれるサービスだ。

 

 

会員登録する際に、いくつかのイメージ画像の中から好きな画像を選んでいくと、自分の好みがデータ化され、嗜好に合ったファッションアイテムが自分のトップページに並べられるという仕組みを持つ米国のECサイトである。こちらはメンズのアイテムにも対応しているため、幅広く利用されている。

 

<参考>

キュレーションコマースへの進化の道程(後編)~藤巻百貨店からhatch、SumallyそしてSTYLESEEKへ

 

 

コーディネート - 組み合わせを様々に提案

 

コーディネートアプリといえば、「WEAR」を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。WEARの他にもたくさんのコーディネートサービスが登場している。

 

<参考>

オンラインでの「衝動買い」のムーブメントはそこまできている - Sumally、WEAR、Antennaが提案するワクワク感

ZOZOTOWNの新アプリ“WEAR”で、狙い通りアパレルECにおける店舗のショールーミング化は進むのか

アパレルコーディネートのチャット型提案サービス - オンラインで理想的なコーディネートに巡りあえるのか

 

 

iQON

 

iQONは、60以上のECサイトのアイテムを自由にコラージュしてコーディネートを投稿できるアプリだ。

 

 

20代から30代の女性をターゲットにしたもので、ハイブランドのアイテムも並んでいる。アイテムはすべてECサイトと繋がっているので、気になったアイテムはすぐに購入することもできる。

昨年10月には150万ダウンロードを突破し、アイテムを購入するボタンは月間100万回タップを突破、iQON経由での売上が1億円を超えるECサイトが登場するなど、とても成長していて注目の集まっているサービスだ。

他にも、投稿型コーディネートアプリとして、GMOが運営する「コーデスナップ」がある。累計100万ダウンロードを突破し、台湾版もリリースされている。コーデスナップは、コーディネートを投稿・閲覧するだけでなく、ユーザー間でファッションに関する悩み相談をすることやコメントを投稿することもできて、SNSとしての要素が多く組み込まれている。

 

 

Sutarepi

 

Sutarepiは、プロのスタイリストやおしゃれなユーザーにコーディネートをしてもらえるアプリだ(App storeのみ)。

 

 

クローゼットに自分の持っているアイテムを登録すると、シーンに応じたコーディネートを提案してもらえたり、ファッションチェックをしてもらえたりする。また、カレンダーにコーディネートを登録することができるため、友達に会うときに前回と服がかぶってしまうなんてことも防ぐことができるのだ。

着なくなったアイテムの買取や寄付も受け付けている。ファッションやアイテムに出会うきっかけを作るだけでなく、着終わったアイテムにも次のための場を作ることで、ファッションを通じて環境保全や社会貢献もおこなっているようだ。

 

 

GAZIRU-F

 

GAZIRU-Fは、NECが開発した画像の色や柄を認識し検索する技術を使って、服を撮影するとECサイト内の同系統の服が表示されるサービスだ。アクセス数や商品販売数に応じて課金する(アフィリエイト)形態で販売されている。 このサービスを活用することによって、ECサイト事業者は、売りたい服を順番に表示する、服をコーディネートとして組み合わせて紹介するなどの販売手法を取ることが可能になる。利用者は、気になった服を撮影するだけで、それに似た服を探し出すことができるようになる。 「persona.(ペルソナ)」という全ページ文字のない写真だけで構成された新しいタイプの雑誌に、専用アプリをかざすことでそのアイテムに関する情報やECサイトやクーポンなどが表示されるという仕組みができている。 2016年までに20社の導入を目指しているということで、今後の成長に期待したい。

 

 

アパレルECに横たわる根源的な3つの課題は解消するのか

 

ECサイト黎明期にオンラインでモノをそこまで買えないのではないか、という意見の代名詞にもなったこの3つの根源的な課題に、今回紹介したような多くのサービスが切り込んでいっている。正直まだ絶対的な解決策になっていると言えるものは少ないが、徐々に時代が変わろうとしていることは感じることができる。米国を中心に新たなサービスが登場し、様々な技術をこの領域に転用しようとしているのも楽しみだ。アパレルジャンルはECサービスの中でも市場も大きく新しい技術が集まりやすい土壌を備えているといえる。サイズ、レコメンド、コーディネートの解消だけでなく、質感・触感もオンラインで伝えることができるようになる未来もすぐそこまで来ているかもしれない。