ECサイトの商品画像をカイゼンせよ - どれだけ手軽に消費者の心に刺さる商品画像を提供できるか
ECでの購入と、店頭での購入の最も大きな違いは、商品を目で見ることが出来るのか、商品を実際に触れることが出来るのか、と言う点だ。そして、商品を実際に手にとれない状況下にある消費者にとっては、商品画像が購買するか否かの重要な判断材料となる。実際、商品画像を変えたらCVR(コンバージョンレート)が大幅に改善したという事例は多く、特に型番商品ではない、雑貨・アパレル・食品などのジャンルでは商品画像の重要性は年々高まっている。今回は、魅力的な商品画像を手軽に作成・掲載するサービスについて紹介し、消費者の心に刺さる商品画像を提供していく取り組みについて見ていきたい。
売上に対する商品画像の影響力
オンラインで消費者の購買意欲を刺激し、商品を効果的に売り込むために、ECサイトにおける商品画像は重要なファクターとなっていることはデータでも裏付けられているようだ。ニールセンが実施した調査によれば、ECサイトにおいて購入完了までに至らなかった理由として「不十分あるいは曖昧な商品情報」が20%にのぼった。商品画像だけが商品情報ではないのも事実だが、商品情報の大部分のウェイトを占めるのは商品画像である。
また、楽天リサーチの「スマートフォン利用に関する調査」では、スマートフォンでEC利用の経験がない理由として「商品の画像が見にくいから」が53.8%に達し、理由の断トツ1位となっている。こちらはスマートフォンの画面自体の小ささを指摘している調査ではあるが、商品画像がオンラインでの購買の重要な要素となっていることが分かる。
このように同じ商品を販売していたとしても、サイトにおける商品の見せ方、商品画像の品質によって売り上げが大きく変わってくることは業界の定説となっている。特に一般的にPCサイトよりもコンバージョン率が低くなりがちなスマートフォンサイトでは画像の重要性が高まるといわれている。そして、単純な商品画像だけでなく、利用シーンをイメージすることができる画像や、ディテールのアップ画像、カラーバリエーションそれぞれの画像など多くの種類が必要となってきており、それらの画像がECサイトの売上に大きな影響を及ぼしてきている。そして、このような消費者のニーズを満たす商品画像をECサイト事業者が用意することは、品質・バリエーションの増加と共に大きく頭を悩ます問題ともなってきている。
それでは、そのようなECサイト事業者の悩みを解決する3つのサービスを見ていこう。
ブツドリソーシャル
アライドアーキテクツが提供するブツドリソーシャルは、消費者がInstagram上に投稿した商品の”物撮り写真”を自動的に収集・蓄積し、ECサイト上でのイメージカットとして活用するサービスだ。
サイトに掲載される画像の多くはスタジオなどで撮影された無機質な商品画像が中心であり、「よりリアルな使用感が知りたい」といった消費者ニーズには対応しきれていない傾向にあった。多くのEC事業者が抱えるこの問題に対し、「ブツドリソーシャル」は、低コスト・短期間での画像訴求を可能にしている。
Instagram上に投稿された”物撮り写真”を、キャンペーンやハッシュタグを用いて収集・蓄積し、ワンタッチでECサイトに表示することができる。これにより、従来の商品画像だけでは伝わりづらい、リアルな消費シーンを通じた「生活者視点の商品特性」の訴求が可能となり、購買率の向上が期待できるのだ。
また、システムが訪問ユーザーごとに候補となっている複数の商品画像の差し替えをランダムに行い、実際に消費者の反応を見ながら、それぞれの画像の購買率を可視化・比較を行うA/Bテスタの機能もある。このように、徹底した消費者視点でのデータ取り込みと改善を行うことで、販売サイトの最適化をサポートするサービスとなっている。そのため、実際の消費者の動向から客観的かつより実践的で正確な情報を得られるというのが最大のメリットだろう。
Zen Fotomatic(ゼンフォトマティック)
グラムスが提供するZen Fotomaticは、自分で撮った写真に格安で白抜きや切り取りなどの画像処理を行うサービスだ。
撮影された商品の写真をオンラインショップやカタログにアップロードするまでには、トリミング、センタリング、画像切り抜き、余分な背景のカット、白抜き加工、色彩補正など、様々な加工が必要となる。自力で加工する技術もないし、加工を外注すると費用がかさんでしまうなどといった画像加工における問題点をZen Fotomaticは解決する。
通常専門の業者に1枚1枚依頼する写真加工を、(1.商品を撮影2.画像をアップロード3.加工ボタンを1クリック)というシンプルな3ステップで美しい商品画像へ大量変換してくれる。一般的なソフトウェアと異なり、必要な作業がすべて自動化されているため、大量の画像も一括自動処理できる。また、細かい設定やフレームやスタンプ、枠線の除去などのこだわりの加工も可能だ。
自分のパソコンだけですべて終わらせることができるという利便性に加え、1枚たったの10~25円という格安の値段であること、完全な成果報酬型のサービスで仕上がりに満足できなければ料金が発生しない点も大きな魅力。
Zen Fotomaticの導入は、煩雑な画像加工作業の時間・コスト面で圧倒的な効率化を実現する。そのため、これまで運営体制の問題で上限があったような、自社サイトへの大量仕入れ・出品が可能になり、自店舗の商品が検索上位に表示され、結果的により多くの顧客を呼び込めるようになるような副次的効果も見込める。また、作業効率上昇に伴い、削減した外注費や余剰人員・時間をさらに重要な仕事に再投資できるという好循環が生まれ、結果として販売活性化につながる。従って大手ファッションサイトとは違い、新商品が入り次第すぐにサイトに掲出して販売することが必須なモール内店舗や、運営体制が限られているが商品数が勝敗を分けるようなECサイトに最適なサービスとなっている。
A/Bテスタ for 楽天市場
インフォマークスが提供するA/Bテスタ for 楽天市場は、楽天市場で販売している製品の商品画像を自動でA/Bテストし、効果が最も高い画像を自動選択してECサイトに掲載するサービスだ。
複数の商品画像候補から、実際に顧客から利用してもらうことで、売れる商品画像を販売実績から自動で選定し、「どの画像が1番売れるか」をシミュレーションしてくれる。
従来、EC事業者は「商品画像を掲載」「売り上げなどの効果を検証」「写真の差し替え」「どの画像が一番売れるか仮説を立てる」といった“PDCAサイクル”を通じて、効果の高い商品画像を選択していた。ただ、こうした作業には多くの時間と労力がかかるといった問題があった。しかしA/Bテスタ for 楽天市場を使うと、商品画像を選んで通販・ECサイトの管理画面で設定するための作業負担を軽減。「どの商品画像が1番売れるのか」という「仮説」を省き、「商品画像の掲載」「売り上げなどの効果検証」「写真の差し替え」のPDCAサイクルを自動化し、消費者に選ばれるために最適な商品画像を統計データから選定してくれるので、スタッフの手間を大幅に軽減する。
A/Bテスタ for 楽天市場で試した画像を他のモールや自社サイト利用する画像選択にも活用できるので、投下資本に対する利益率の最大化を実現することができるのだ。加えて、商品ページのファーストビューが商品画像となっているスマホではより一層の効果が見込める。
どれだけ手軽に消費者の心に刺さる商品画像を提供できるか
紹介したサービスはそれぞれ異なる手法でECサイト上の商品画像を“手軽に”改善するサービスだ。
ブツドリソーシャルでは、Instagram上に画像が無い場合でもモニプラを利用して0から画像収集することも可能にするなど、とにかく消費者視点に徹底的にこだわっていることが強みだ。従来は販売側だけで組み立てていたサイト作りや商品の宣伝に消費者の視点を取り入れることによって、CVR(コンバージョンレート)の上昇が期待できる。写真を提供するインスタグラマーの嗜好に左右される可能性は否定できないが、撮影コストを下げながら魅力的かつリアルな消費シーンが伝わる画像を収集できるブツドリソーシャルは、スマホ時代の最適解になる可能性を秘めている。
Zen Fotomaticは従来の写真加工サービスに比べ、圧倒的にシンプルな機能と1枚10円~25円という良心的な価格設定、処理スピードの速さが魅力である。加えて機械による一括処理となっているため、均一した品質が期待できる。その代わり、白い壁の前で撮った均一な背景の写真や、背景と被写体の境目がはっきりしている写真が前提のサービスであるため、あまりにも複雑な背景の写真は自動で切り取ることはできない。そのため、「これぞ!」という宣伝用の写真は専門の手動業者に頼んだ方がよい場合もある。
A/Bテスタ for 楽天市場は、楽天市場での需要に特化し、楽天独自のサービス機能(サーチワード検索やランキングなど)に対応しているため、競争率の高い楽天市場において最大限の費用対効果が期待できる。また、試行結果をYahoo!ショッピングや、DeNAショッピングなど他サイトにおいても反映させることができる。しかし、商品画像自体はECサイト事業者側が選んだ画像の中から選ばれるので、消費者にとってはbetterではあってもbestではない可能性は否定できない。
このように各サービスには一長一短があるのも事実だが、従来の商品画像作成プロセスを考慮すると、これらのサービスは非常に有意なものといえるだろう。撮影した商品画像をZen Fotomaticを使って一括加工。消費者目線での画像をブツドリソーシャルを用いて収集し、モール上などを中心にA/Bテスタ for 楽天市場を用いて商品画像を選別する。など、ここで紹介した3つのサービスを全て絡めることで非常に高度な商品画像を提供するECサイトを実現することができるのではないだろうか。