今こそ「Affluencer(アフルエンサー)」に注目すべきである。コラムニストであるPeter Minnium氏は、マーケターが高額消費者やアーリーアダプター(新製品や新サービスを早期に受け入れる人々)であり、かつメジャーなインフルエンサーでもあるという影響力を持つターゲットグループに注目すべき理由を説明している。

 

もし少しでもマーケティングや広告関連の出版物やブログを読んでいれば、インフルエンサーマーケティングに関する記事、リスト記事、ハウツー、ケーススタディなどを、最近数多く目にしているに違いない。なぜならインフルエンサーマーケティングは、有料検索広告、アフィリエイトマーケティング、さらにはディスプレイ広告よりも、急速に成長しているオンラインマーケティングチャネルであるからだ。その急成長にはいくつかの要因がある。

 

インフルエンサーを探して

第一の要因は、よく言われているメディアの断片化と従来のマスメディア発信の衰退である。消費者へのアプローチは、かつてないほどに複雑で理解が難しく、困難になっている。そして、今後も容易になることはないだろう。

また、デジタルオーディエンスの買収と、それに応じたメディアサプライチェーンに関する透明性と品質の問題が無数に浮上している。プログラマティック広告により、数千万のインプレッション(広告の表示回数)を簡単に購入できるようになったが、これらのインプレッションが、実際にユーザーへのリーチにつながっているかどうかを判定することは難しい。ボットによる不正、広告詐欺、視聴されない広告は、全広告枠の50〜75%を占める。マーケターは、何をすべきなのか?

オンラインでの行動中に頻繁に登場し押し付けがましいデジタル広告があるがゆえ、企業はこうした課題にきちんと対応する傾向にある。その結果として、広告ブロックソフトウェアが登場し、さらにインフルエンサーマーケティングの成長の大きな要因となった。デスクトップユーザーの40%以上、モバイルユーザーの15%以上が広告ブロックソフトウェアをインストールしていると推定される。デジタル端末でコンテンツを閲覧中のユーザーにリーチすることさえ、問題視されるようになった。

そして、インフルエンサーの話に戻る。従来のマスメディアを通して、企業メッセージを広範囲に届けることは、今までになく困難になっている。そこで、極めて有力で影響力があり、企業メッセージを積極的に広めることが可能なターゲットグループにリーチすべきだというアイデアは、7月のアトランタよりも熱いコンセプトである。

当然のことだが、マーケターは、インフルエンサーマーケティングに飛びついている。2016年に、米市場調査会であるeMarketer社が実施した調査によると、既にインフルエンサーマーケティングを実践しているマーケターの半数近くが、2017年の予算を増額し、インフルエンサーマーケティング戦略に重点的に取り組むつもりだという。

 

「Affluencers(アフルエンサー)」とは何か?

Forbes誌の寄稿者であるKyle Wong氏は、インフルエンサーマーケティングを「見込み客に対し影響力のある個人を特定し、ターゲットとするマーケティングの一形態」と定義。そして、最も影響力のあるターゲットグループの1つとして、常に富裕層市場が挙げられる。収入が125,000ドルを超える世帯は米国全世帯のわずか16%に過ぎないが、Ipsos Connect社の調査では純資産総額は米国総資産の68%である。また、全業界及びカテゴリでの支出は平均すると非富裕層の2.6倍にのぼる。

さらに、大多数の人がより高級なライフスタイルを切望しているため、富裕層向けの商品やサービスはマスマーケットにおいても高い関心をもたれる傾向にあることは明白だ。こうしたことから、富裕層の影響力は倍増しているのである。

Ipsos Affluent Intelligence GroupのトップであるMichael Baer氏は、「どのカテゴリにおいても存在し、独自のネットワークと圧倒的な影響力を持つ、より有力で濃密な富裕層グループ」を特定し、「Affluencers(アフルエンサー)」と名付けた。

アフルエンサーは、所有財産や消費額においてのみパワフルなわけではない。Ipsos Connect社の調査では、「単なる」富裕層と比較して、アフルエンサーの純資産は6%多いが、消費額は40%も多いことがわかった。また、アフルエンサーは、他人のブランド、ジャンル、新商品の選択に影響力を持つインフルエンサーでもあるのだ。

アフルエンサーは新しい経験と新製品を求め、最先端のイノベーション、技術、サービスのアーリーアダプターとなる傾向がある。

アフルエンサーの半数以上は、どの友人よりもいち早く新製品やサービスを試すことがほとんどだ。大多数はショッピングをする商品カテゴリの中で、最新の技術を採用している商品を好む。そして、エンターテイメント、旅行や趣味まで、新しい経験を求める傾向がある。当然ながら、新しい商品やサービスを早期に採用するアフルエンサーは、友人グループやネットワークにも、新しいものを試すように影響を与え、やがてより広範囲な購買層へもその影響力は浸透していく。

さらにアフルエンサーは、すべてのカテゴリにおいて一般的な富裕層グループよりも著しく高い購買意欲がある。クルーズ旅行や自動車の購入、新居のデザインや購入、2,500ドル以上の宝石の購入など、アフルエンサーはより頻繁に消費する傾向があるので、ほぼ全カテゴリにおいて深い知識があり、流行に敏感である。マーケターにとっては、非常に価値のある存在だ。

重要なことは、アフルエンサーは少なくとも1つのカテゴリにおいて、アドバイスを求められる専門家、インフルエンサーや、リーダーとみなされている点だ。Ipsos Connect社の調査によると、アフルエンサーの50%が、5つ以上のカテゴリにおいてインフルエンサーであるとみなされている。そして97%のアフルエンサーは、他人からアドバイスを求められていることを認識している。企業はそういったアフルエンサーを理解し、見つけ出し、関係を築くと共に、インセンティブと彼らのネットワークで共有すべきコンテンツを提供する必要がある。

 

アフルエンサーへの影響力

アフルエンサー、さらには、ウルトラアフルエンサー(5つ以上のカテゴリにおいて影響力があるアフルエンサー)は、人口統計学的及び地理的には一般的な富裕層と似ている。しかし一般的な富裕層と比較して、年齢が若いという傾向がある。また、幅広い富裕層ターゲットよりも家計所得が高く、純資産が多い。 実際のところ、当社(Ipsos Connect社)の調査結果によると、ウルトラアフルエンサーの平均家計所得は、一般的な富裕層グループの平均家計所得よりも約8万ドル多い。

アフルエンサーを差別化する特徴は、メディアの消費量と使用方法にある。あらゆるカテゴリのアフルエンサーは標準的な富裕層に比べ、より多くのメディアを購読、閲覧しするため、より多くのウェブサイトを訪問し、より多くのモバイルアプリを利用している。例えば、一般的な富裕層に対してのアフルエンサー及びウルトラアフルエンサーのヘビーユース指標は、ウェブサイトについては、119/150、出版物(印刷物およびウェブサイト)については、118/157、テレビ視聴については、113/128となっている。

さらに想像通りではあるが、アフルエンサーはソーシャルメディアのヘービーユーザーであり、一般的な富裕層より平均して週3時間以上多く時間を費やしている。彼らは常に最先端にいる必要があり、自己の考えを共有しなければならないと感じているのだ。

最後に、おそらく最も重要な点であるが、どのカテゴリにおいてもアフルエンサーの消費額は一般的な富裕層の高額な消費額をさらに上回る。一般的には富裕層の33%が「高額消費者」とされているが、アフルエンサーの40%(ウルトラアフルエンサーの50%)が高額消費者であるとの報告だ。

またアフルエンサーは、それぞれが影響力を持つカテゴリにおいて、特に高額を消費する。例えば、自動車分野のアフルエンサーは非富裕層の5.3倍、アルコール飲料分野のアフルエンサーは6.6倍、個人保険のアフルエンサーは9.7倍消費している。アフルエンサーこそが影響力を持つカテゴリを盛り上げていることは明白であり、企業にとって、アフルエンサーを理解し関係を築くことが極めて重要なのだ。

インフルエンサーが、メディアとマーケティングの世界の新たな常識として、有力で永続的な役割を引き続き果たすことは間違いない。だからこそマーケターは、高額消費者やアーリーアダプター、インテンダー(購買意欲がある人)であり、かつメジャーなインフルエンサーでもあるアフルエンサーに注目する必要があるのだ。アフルエンサーの影響力の活用方法を見いだせば、マーケターのマーケティングプランの1ページ以上は容易に埋まるであろう。

 

※当記事は米国メディア「Marketing Land」の12/01公開の記事を翻訳・補足したものです。