ECサイトのコンバージョン率アップの切り札となるのか - Web接客サービスの究極の「おもてなし」

 

1990年代のEC草創期には10%を越えることも珍しくなかったコンバージョン率(CVR、コンバージョンレート)も、ECのユーザーへの浸透や競合との熾烈な競争などにより、昨今では1%を目指すのもやっとという状況となっている。また、顧客獲得単価も高騰しているにも関わらず、多額の費用をかけ獲得したユーザーの多くがリピートになることなく離脱してしまうことも珍しくない。そのため実店舗と比較するとオンラインのコンバージョン率は低くなり、費用対効果も悪化しているケースが多くなってきた。ECが救世主になった時代は終焉を迎え、ECが足枷になる時代の足音が聞こえてきている、と言ってもいいかもしれない。そんな状況の中で、ECサイトでの接客を行うことでコンバージョン率を高めるための「Web接客サービス」が注目を浴びている。今回はWeb接客サービスを紹介し、コンバージョン率アップの可能性について考えていく。

 

<参考>

オンライン上の接客は顧客から個客へ - ECサイト運営もビッグデータの恩恵を受けよ

 

 

Web接客プラットフォーム「KARTE」

 

KARTE」は株式会社プレイドが提供する、ウェブサイトに数行のコードを埋め込むだけで、来訪者の特徴や行動をリアルタイムに解析し可視化し、会員登録や購買に繋げるためのWeb接客サービスを可能にするサービスだ。

 

 

2014年9月からクローズドβ版としてサービスを開始して以降、大手企業を含む50社以上が導入しており、2015年3月12日にから正式にサービスを開始した。

アクセス情報、来訪パターン、ユーザー情報(会員情報や購買履歴)等をリアルタイムに更新し、常に最新の状況を確認することで、サイトに訪問中の「いまこの瞬間」の状況をリアルタイムに可視化。また、属性データ、購入・閲覧情報、SNS情報などあらゆるデータから、ユーザー単位でも来訪者を可視化している。さらに、既存の会員データとKARTEのデータを統合して活用することができ、非会員(ビジター)のユーザーであっても、サイト内の閲覧、問い合わせ、購買等の行動を可視化することが出来る。これらの可視化した情報から、来訪者に対して「適切な接客」を「適切なタイミング」で行うのだ。

KARTEではそれらの接客パターンを簡単な操作で行なうことが出来るのも◎。多くのテンプレートが用意してあり、専門的な知識が必要なく文字や写真の変更だけで接客アクションの作成が出来る。また、アクセス情報、来訪パターン、ユーザー情報(会員情報や購買履歴)等を自由に組み合わせて、接客アクション対象のターゲットを設定できる機能もある。ターゲットに設定するユーザーの数も瞬時に把握できるため、効果的な接客アクションを自由なタイミングで、実施することが可能になる。このように、簡単に、サイト来訪者の情報をリアルタイムで可視化し、最適なタイミングで、ユーザーに合わせた接客アクションを行なうことで、会員登録や購買に繋げるための臨機応変なアプローチを、自動で実行するのである。

 

 

スマホEC向け販促プラットフォーム「Flipdesk」

 

Flipdesk」は株式会社Socketが提供するネットショップ上で実店舗のような接客・販促を提供するサービスだ。

 

 

オンラインショッピングの利用者が増加する一方で、検索などに不慣れで、目的の商品にたどり着けないユーザーも増えている。このような状況の中で、商品に関するユーザーの疑問や不安をオンライン上で解消し、個々のユーザーに合わせたお勧め情報などを提供する接客・販促サービスが、ネットショップおよび運営事業者に求められるようになったという背景から開発された。スマホEC向け販促プラットフォームである「Flipdesk」は、リアルタイムチャット機能、クーポン発行機能、ダイレクトメッセージ機能を搭載している。

リアルタイムチャット機能は、サイトに訪れた顧客に対し、メールや電話とは違った、カジュアルでスピーディーな接客を行なう。こうすることで、その場で不安や疑問を解消でき、初めてでも安心して買い物が出来る。クーポン発行機能は、顧客に合わせたクーポンを、最適なタイミングで自動発行する。最適なタイミングで、特別なオファーができ、購買促進に役立てることが出来る。他にも、会員登録、アップセル、離脱防止など、さまざまな場面で活用可能となっている。ダイレクトメッセージ機能は、サイトに訪問した顧客に対して、おすすめの商品やキャンペーン情報など、顧客に合わせたメッセージを自然に「置き手紙」感覚で配信することが出来る。

このように、サイト内での顧客情報を集め、その情報を元に顧客をグルーピングし、そのグループにあった上記のような施策を打ち出すことによって、実際に、コンバージョン率が20%も上昇し、顧客の離脱率は40%も減少した。そして全体的に、顧客満足度が80%も上昇したという実績を残している。

 

 

AIを搭載したオンライン接客システム「Bemattch

 

Bemattch」は株式会社ピアラが提供する、即時解析AIを用いたソリューションで、One to One接客を可能にするサービスだ。

 

 

タグをウェブサイトに埋め込むだけで、お客様のオンライン上の行動から離脱ポイントなどの“水漏れポイント”を見える化し、お客様ごとに最適化したナビゲーションを表示させる事で、One to One接客を可能にする。導入するのには5分しかかからず、手軽さが特徴となっている。また、BemattchにはAIが搭載されており、データが貯まるとそのデータを基に顧客の特性を機械学習する。送客に成功したユーザーの特徴と似たユーザーの動きを特定し、表示することも出来る優れものだ。ユーザーの特性を6つに分けて、そのデータを基にAIが学習し、特定のユーザーに対して、最適なアクションを決定し、オンライン上でのOne to Oneの接客を実現するため、コンバージョン率の向上が望める。

 

 

接客のエキスパートが最新技術を駆使して行うオンライン接客サービス「LiveCall

 

LiveCall」はスピンシェル株式会社が提供する、接客のエキスパートが最新技術を駆使してオンライン接客をブラウザで行うサービスだ。

 

 

接客のエキスパートである「コンバートエージェント」がビデオ・音声・テキストチャットを使ったリアルタイムのオンライン接客を行うことで、 顧客が持つ疑問や不安をその場で解決する。IT技術を駆使したサービスが多い中、生身の人間がオンライン上で対応を行うという一風変わったものだ。

ビデオ接客では、実際の商品を見せながら接客できるため、ウェブサイトを見ただけではわかりづらい商品の質感や細部を伝えられる。また、ビデオにより、顔の見える接客が出来るので、安心感や親近感を抱きやすい。それに加え、ブラウザに対応しているため、ネットショッピング中の顧客はボタンをクリックするだけで、ビデオ・音声・テキストチャット用のウィジェットを呼び出すことも出来るようになっている。

このサービスの特徴は、主に3つある。1つ目は、これまではあまり、肝心な購入ステップのコンバージョンを改善する施策はなかったが、LiveCallは、購入ステップにいる顧客の不安や疑問をリアルタイムで払拭するという新しいタイプのサービスであること。2つ目は、接客のプロ、 コンバートエージェントによって、まるでお店で接客を受けているような体験を生み出すことで、離脱をコンバージョンへと変えていくことを可能にすること。3つ目は、先進リアルタイム・コミュニケーション技術WebRTCを採用することで、アプリやプラグインのインストールを不要なものとし、対応ブラウザさえあれば提供できる高品質リアルタイム接客を実現することである。

 

 

Web接客サービスの究極の「おもてなし」

 

実店舗とECサイトの大きな違いの一つに接客の有無が挙げられる。実店舗の場合、店舗滞在時間は比較的長くなり、直接店員さんから接客を受けることが出来、お店にいればいるほど購入率は高くなる。一方ECサイトでは、例えばアパレル系サイトであれば平均滞在時間は2分~5分と短く、かつ直接店員さんから接客を受けることが出来ない。このことは、少なからずともオンライン上でのコンバージョン率に関わっているだろう。

今回紹介したサービスは、ユーザー情報をリアルタイム解析したり、顧客グループ毎に施策を打ったり、AIが最適なアクションを実行したり、オンライン上で生身の人間が対応するものなど、手法は様々。

 

ECサイトのコンバージョン率アップの切り札となるのか - Web接客サービスの究極の「おもてなし」

 

実店舗ではリアルタイムにユーザー情報は入手出来ないし、AIがお客様の導線から販売員に買いたいものを教えるサービスも存在しない。それだけを見ると既に実店舗を超えるロジックを持つサービスもあるが、2次元のディスプレイを介して商品と接するのと、実際に商品を手に取るのではやはり雲泥の差があるのも事実だ。

一方でこれらのサービスが勃興してきた背景には別の理由もありそうだ。会社でデジタルに接してきていた世代が徐々に高齢化したことで、高齢者のEC利用は確実に伸びている(総務省データ)。しかしまだまだ高齢者はオンラインでの購入に抵抗がある人も多く、サイトへ訪れても購買にまで至らないケースもある。そのようなユーザーに対してこれらのサービスは実店舗での安心感や親近感に近いものを提供していくことが出来ると考えられる。

実店舗に迫る「おもてなし」によってどこまでコンバージョン率を上げることができるのか。ECサービスが本当にかゆいところに手が届く接客サービスを身に纏う日もそう遠くはないのかもしれない。