オンライン上の接客は顧客から個客へ

 

アクセスした顧客それぞれに異なったマーケティング施策を打つべく、ビックデータを活用したECサイト向けのオンライン接客サービスが注目を集めつつある。7月には株式会社プレイドがフェムト・グロースキャピタルから1億5000万円調達して注目を集めた。今回は最近注目を集めているカルテ、flipdesk、zopimを取り上げてオンライン接客の現状とこれからについて考えていく。

 

 

そもそもオンライン上での接客とは?

 

オンライン上での接客とはどのようなものかパッと想像がつなかい方も多いだろう。ECサイトでは全ての顧客に対して同じ情報を表示することが基本となる。一部レコメンドエンジンなどを実装しているサイトやモールでは顧客の趣味・嗜好に合わせてオススメ商品を表示されるケースがあるが、それもごく一部に限られた。そしてそれはアクセスしている顧客の属性やその店舗への愛着度などによって変わるものではない。この商品を買おうとしている人にはこの情報を表示する、などのくくりとなる。しかしオンライン接客サービスは、アクセスした顧客に応じて表示する情報を変え、“個”客の属性、例えば前回いつアクセスしたのか、どのページを見ていたのか、何を買ったのか、場合によってはそのサイト外における購買履歴やサイト閲覧履歴ですら条件に加えて、その個客に応じた情報提供を行っていくものだ。それを実現するためには、膨大なデータの蓄積と連携が必要となり、その解析やマッチングにより瞬時にユーザーの条件を特定してアクション(販促施策の表示など)を起こすものだ。

 

 

KARTE (カルテ)

 

リアルタイム解析によって、ECサイトなどでも実店舗さながらの接客を実現しようとしているのがKARTE(カルテ)だ。

 

 

同サービスは楽天出身の倉橋健太氏が代表を務めるプレイドが今秋に発表したもので、数行のコードをウェブサイトに埋め込むだけで、サイトを訪れるユーザーの行動に合わせた接客を可能にするものだ。

KARTEにはあらかじめ用意された施策のテンプレートがあり、サイト運営者は導入後に利用したい施策を選ぶだけで効果的な接客ができるのだ。例えば、長時間カートに商品を入れたままサイト内に滞在しているユーザーがいたらチャットで話しかけたり、購入を迷っているユーザーやお得意様にはお買い得価格でアプローチするなど、その接客姿勢はリアル店舗を超えていると言っても過言ではない。

これまでECにおけるマーケティングは顧客情報や購入情報といった過去のデータからの分析が主だったが、KARTEは「今何が起こっているか」に対して施策を投じることができる。ローンチ前のテスト導入では購入転換率が平均15〜20%向上し、最大で3倍の数値を記録するなど、早くもその接客効果が実証され始めている。まだ本格的なサービス開始前となるが、今後さまざまな改善を重ねることによってより効果的な接客方法が生み出されるだろう。

 

 

flipdesk (フリップデスク)

 

一方、株式会社Socketが今年9月にローンチしたflipdesk(フリップデスク)は、スマホECに特化した販促・接客ツールだ。既に累計100社以上に導入が進んでおり、国内の同種のサービスでは最大の実績を誇る。

 

 

主な機能は、サイト訪問者をサポートするリアルタイムチャット機能、購買促進のためのクーポン発行機能、メールマガジンの代替となるダイレクトメッセージ機能の3つ。サイト運営者が専用のタグをサイトに埋め込むだけで、スマートフォンおよびPCサイト上での訪問者の行動履歴が自動解析される。その解析をもとに、初めてサイトを訪れたユーザーにはクーポンを発行したり、訪問中のユーザーにはダイレクトメッセージを送るなど、自由度の高い接客が可能となっているのだ。

試験的に導入したECサイトでは、コンバージョン率が20%向上し、顧客単価は35%増、離脱率が40%下がった事例もあり、すでに東急ハンズネットストア丸善&ジュンク堂ネットストアなど、複数の大手ECサイトへの導入も始まっている。利用料金はPV数によって料金が上がる仕組みで、10万PVまでで月額5,000円となっている。初年度は600社への導入を目標とし、売上高は1億円を目指すとしている。

 

 

zopim (ゾピム)

 

これまでECサイトに特化した接客サービスを紹介してきたが、次に紹介するのはECだけでなく、さまざまなシチュエーションを想定したビジネスチャットサービスだ。ウェブコンサルティング事業などを手掛けるフォー・フュージョンが昨年3月に提供を開始したzopim(ゾピム)は、サイト上で困っているユーザーに対し、チャットなどで問題を解決するサービスとして注目を集めている。

 

 

zopimはもともとシンガポールのサービスで、既に全世界で13万サイトに導入されている非常に強力なツールだ。サイト運営者は発行されるタグを入れるだけで簡単に導入が可能。訪問者はサイト内で分からないことなどがあれば、Web上で質問してリアルタイムでの解決を図れる。

またzopimでは、ユーザーがどこから訪問したのか、どのページを閲覧しているかといった情報を蓄積する顧客情報管理(CRM)機能も備えているため、それらをマーケティングに活用することができるのだ。さらに訪問者のサイト閲覧状況に合わせてメッセージを自動送信できるトリガー機能を使えば、コンバージョン率を上げることも可能。例えばトリガー機能では、興味関心を持っているユーザーや重要な顧客が訪れた際に通知してくれるため、サイト側から先行して会話を始めることもできる。

zopimにはiPhoneアプリも用意されているので、より気軽に使いこなすことができるサービスと言えるだろう。中小事業者を主なターゲットにしているzopimは、1アカウントあたり月額2400円から提供している。

 

 

ECの接客におけるビックデータの活用の現状

 

いずれのサービスも中国のECサイトを中心に導入が進んでいるECサイトにおけるチャット機能を有しているが、これらのサービスの本質はチャットではない。これらの接客サービスの本質は、顧客の情報(メールアドレスなど)とサイト内の遷移動向を紐付けた、プライベートDMPと言われる企業のマーケティング活動を根底から変える可能性のあるデータの蓄積が可能となる点だ。

従来のECサイトでは、顧客へ商品の販促を行う際には購入者や会員登録したユーザーのメールアドレスに対してメルマガを送ることが基本であった。その情報が格納されている顧客DBは氏名・住所だけでなくメールアドレス、購買履歴などが含まれてる。一方アクセス解析サービスを利用するとサイトの詳細の閲覧状況を確認することが出来る。個々のユーザーやマスのユーザーのサイト内の遷移動向や、場合によってはCookie情報があれば過去の購買履歴なども確認することが出来る。しかし確認出来るのはアクセスした後であるだけでなく、アクセスしている顧客の属性情報はアクセス解析サービス上では分からなかった。従来は顧客DBとアクセス解析系のデータの紐付けは行うことはできていないのだ。

 

 

 

EC事業者によるプライベートDMPの活用の可能性

 

今回紹介したオンライン接客サービスはサイト内に新たなタグを入れるという、EC事業者にすると少し面倒な手間がかかり導入のハードルを上げるものとなる。しかし、タグを入れることで顧客DBとアクセス解析系のデータを紐付け、アクセスしている最中にそのユーザーが誰でどのような嗜好性があるかを特定しアクションを起こすことが可能となるのだ。顧客DBとアクセス解析系のデータの結合によりEC事業者にはマーケティング施策のバリエーションが格段に増えていくことになる。

また、将来的にはこれらのサービスはDMPと呼ばれる数億のブラウザ属性情報を保有するサービスとの連携を行っていくことなるだろう。ブラウザ属性情報は、そのブラウザを利用しているユーザーが過去にどのようなサイトに行って、どのようなものを購入し、どのようなコンテンツを見ているかなどの様々な情報が蓄積されている。そのため連携することでEC事業者は新規の顧客だったとしてもその顧客が以前にどのような購買行動を他のサイトで行っていたのか、などを条件にマーケティング施策を打つことが出来る。

このように、これらのサービスはEC事業者の本格的なビッグデータ活用の第一歩となり、マーケティング施策のバリエーションを増大させる可能性を秘めたものなのだ。今後ますますこれらのサービスの重要性は増していくだろう。