総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済は、国内では初の試みとなる、各種ECサイトを経由して流通する市販薬EC市場の調査を実施した。
国内の市販薬EC市場
2023年の市販薬EC市場は904億円、国内の市販薬全体市場における比率(EC比率)は6.9%と、まだまだ成長の余地がある市場となっている。とはいえ、ECチャネルからの購入は徐々に増えており、EC比率も着実に伸びている。特に近年は発毛剤やビタミン剤、ドリンク剤がの売上が好調で、市場拡大をけん引している。発毛剤は実店舗より気軽に買えることからEC適性が高く、ビタミン剤は購入の緊急性が低く、特にひざの痛みや関節痛に効くビタミンB1主薬製剤はリピート購入があるためECとの親和性が高い。ドリンク剤は購入量によっては重くかさばるためEC利用者も多くなっており、ECチャネル別では仮想ショッピングモールが市場の7割弱を占めてる。また、2割強を占める参入メーカーのECサイトはブランド指名買いによる安定した売上を確保している一方で、ドラッグストア・調剤薬局ECサイトはチェーンによって注力度に温度差がある状況だ。
今後について、2029年の市場は2023年比24.6%増が予測されており、EC比率も1.2ポイント上昇するとみられている。商品としては、発毛剤やビタミン剤、ドリンク剤に加え、実店舗で購入しづらい製品、購入の緊急性が低い製品、持ち運びにくい製品、まとめ買いに向いた製品、大容量帯が好まれる製品などが購入されると考えられる。また、実店舗の棚に入りにくいニッチな製品もECサイトでは検索により見つけ出すことができることから今後もECへのシフトが予想され、さらに2025年以降には要指導医薬品のネット販売解禁が予定されていることも市場へのプラス要因になるとみられる。
注目市場
発毛促進、育毛、脱毛の予防、ふけ・かゆみの防止、また、壮年性脱毛症や円形脱毛症、薄毛等における発毛、育毛および脱毛の進行予防などの効果・効能をもつ市販薬といった発毛剤市場が現在注目されている。また、2023年の発毛剤EC市場は110億円で、実店舗での購入は人の目が気になったり、抵抗感を感じたりする利用者が多いため、EC比率は32.2%と高くなっている。毛髪が成長するまで時間を要することから、複数本のまとめ買いニーズに対応した展開や、実店舗や競合製品に対して価格面で優位性を打ち出す展開なども行われている。