株式会社富士経済は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を背景に、百貨店などの臨時休業やカウンセリング活動の一部制限によって各メーカーがECに注力していることや、外出自粛などによって消費者の化粧品購入がECにシフトしているため、拡大している国内の化粧品EC市場を調査した。

 

この調査では、メーカーが自社通販サイトまたはECプラットフォームのメーカー公式店舗を通じて直接消費者に販売する形態を対象とし、ECプラットフォームが運営するモールや、流通企業が運営するECを通じて販売する形態は対象外とした。また、越境ECや海外で販売される商品は対象外としている。

 

 

調査結果の概要

 

 

国内の化粧品全体市場はエイジングケア志向の高まりから機能性を重視した、単価の高い商品を選択する消費者の増加を受け、2019年まで拡大を続けてきたが、2020年はインバウンド需要の消失や実店舗の臨時休業、メイクアップの使用機会が減少し、市場は前年比二桁減となった。しかし、2021年は前年に比べ商業施設の営業状況が改善していることや、外出機会も徐々に増えており、前年比3. 3%増が見込まれる。

 

さらに、楽天市場Amazon.co. jpといったECプラットフォームが好調で、特に化粧品ECは、近年のデジタル化の加速を受けて重点チャネルの1つに位置付けられており、 制度品系メーカーや百貨店系メーカーといった実店舗販売を主体にしてきたメーカーでも市場が拡大している。その結果、化粧品EC市場は2020年に前年比20.6%増の3,757億円となった。

 

化粧ECの拡大要因としては、新型コロナの感染拡大による緊急事態宣言で百貨店や直営店が臨時休業したことで、ウェブ広告やライブコマースが強化され、ECがその需要の受け皿になったと考えられる。

 

 

 

メーカー形態別の化粧品EC市場について調べたところ、ECの実績が最も大きいのが通信販売系メーカーで、次いで大きいのが百貨店・カウンセリング系メーカー、ライフスタイル系となった。2020年は臨時休業を強いられた緊急事態宣言中にEC強化の動きが顕著になり、解除後も肌測定ツールやメイクアップシミュレーションなどをECサイトで展開し、大幅に実績を伸ばした。

 

また、スマートフォンの普及やコスト圧縮を目的に、カタログ発行部数やインフォマーシャルの投下量を減らしてECに注力するメーカーが増加しており、EC化率の上昇が続いている。百貨店や直営店といった実店舗をメインチャネルとしていた百貨店・カウンセリング系メーカーやライフスタイル系メーカーも前年比11.5ポイント増の17.9%、同6.5ポイント増の17.5%と、それぞれEC化率が高まった。2022年以降新型コロナの流行が落ち着けば、百貨店・カウンセリング系メーカーについては、カウンターでの肌測定やタッチアップを求める消費者が実店舗に回帰するた め、EC化率の伸びが一時的に停滞するとみられる。一方、ライフスタイル系メーカーについては、新規性の高い新興ブランドなどが人気となる傾向があり、こうしたブランドでは直営店や配荷店舗数にも限りがあることから、 ECを利用する消費者も多く、EC化率が引き続き高まるとみられる。

 

 

2021年は 外出機会が徐々に増えているが、在宅率が高い状態が続いており、EC利用が増加していることから、市場は続伸するとみられる。