株式会社東京商工リサーチは2018年(1-12月)通信販売・訪問販売小売業者に関する調査結果を公開。
この結果の一部を紹介する。
2018年の倒産は過去ワースト2の66件
2018年通信販売・訪問販売小売業者の倒産件数は66件(前年比24.5%、前年53件)。この数字は、年次ベースで2015年(77件)に次ぐ過去2番目に多い件数だ。倒産の形態をみると、企業の解体・消滅である破産(64件)によるものが全体の9割を占めた一方、再建型の民事再生法は1件だけと、業績不振に陥った企業の事業再建は困難であることが反映されている。
負債総額は、1,037億円(前年30億6,300万円)と大きく膨らんでおり、食品通信販売の株式会社ケフィア事業振興会(負債1,001億9,400万円)の大型倒産が押し上げた。また、全体では負債5千万円未満が52件(前年比36.8%、前年38件)で全体の7割を占めており、メイン商品を持たない小規模企業の脱落が進んでいるとみられる。
なお、業種別倒産の内訳では、衣食住にわたる各種商品を扱う「各種商品小売」が最多の23件(前年比43.7%増、前年16件)、次いでインテリア用品や美術工芸品などの「その他」が16 件(同15.7%減、同19件)、アパレル関連などの「衣服・身の回り品小売」が14件(同75.0%増、同8件)、「飲食料品小売」が11件(同37.5%増、同8件)、家電などの「機械器具小売」が前年同数の2件であった。
市場が成長を続ける一方でシビアな競争に直面する事業者
今回の調査で小規模事業者の倒産が全体の9割に上ることが明らかとなっている。(従業員5人未満の倒産件数61件(前年比32.6%増、前年46件))また、2013年以降に設立された事業者の倒産は20件と、設立から日の浅い5年以内の新規事業者が全体の3割を占めている。
通販市場が成長を続ける一方、倒産件数が増加した要因として挙げられたのは、相次ぐ中小企業のネット通販への参入による過当競争の激化だ。通販事業は個人でも事業の立ち上げることができることに加え、スマートフォンやパソコンを経由した取引が拡大している。地方や小規模企業でも十分に成長が見込まれ、参入障壁は低いのだ。その一方で競争相手は多い。同業他社に対する差別化の「強み」がなければ、消費者や市場からいとも簡単に淘汰されてしまう。市場の拡大とともに、淘汰されるスピードが速まっているのだ。
急速なネット取引の拡大が影響をもたらすのは小規模事業者だけではない。2018年に大手カタログ販売の千趣会が希望退職者を募集した様に、大手といえども経営に大きな影響を受ける。競争強化に通信販売事業の利益率は低下しており、とりわけ「多品種」を扱う「総合通販」の効率は悪化しているという。とはいえ、多くの事業者は「専門店」へのシフトがなかなか進んでいない。
今年10月に予定される消費税率の引き上げに伴う個人消費の節約志向の強まりも相まって、成長を続ける通販市場内での業績を伸ばす企業と低迷から抜け出せない企業の差が大きくなることが考えられる。EC構築システムは年々使いやすいものにアップデートされ、「誰でも気軽に」始めることが実現されつつある一方、そう簡単に利益は上げられない市場となりつつある。