オンラインショッピング利用者は、購入手続きを完了できないといったいくつもの基本的な障害に直面している。
カスタマーエンゲージメント企業である goMoxie の調査からは、消費者が、小売ウェブサイトで基本的操作を完了するのに苦戦していることがわかる。そして、ほとんどの消費者は、ヘルプを求めるのではなく、そのショッピング体験を途中で放棄、または、競合他社に乗り換える可能性が高い。
米国のあらゆる年齢、性別、地域の成人消費者1,063人を対象としたgoMoxieの調査結果は、COVID-19の流行により多くの小売業者がすでに直面している課題を考えると、特に懸念すべきものである。
市場調査会社のeMarketerは、2020年のeコマース売上高は、18%増加して7,097億8,000万ドルに達すると予測。これは米国の小売総売上高の14.5%に相当する。
この売上高増加予測は、オンライン小売業者のチャンス拡大を示唆している。しかし、買い物客の障害の大きさと離脱率の高さは、オンライン小売ビジネスの多くが、潜在販売能力を十分に発揮できていないことを示している。ホリデーシーズンのオンラインショッピング消費者に、デジタルで対応する準備ができていない小売業者は多いが、成功するためには迅速に行動し方向転換を図る必要があるだろう。
goMoxieの調査は、極めて重要なホリデーショッピングシーズンが迫る中、オンライン事業者が、顧客に確実に高い利便性を提供し、収益を最大化するために、より積極的なアプローチをとる必要性があることを示している。goMoxieのリサーチャーは、今回の調査結果に基づいて、小売業者がeコマース・プラットフォームで犯している間違いに対処するためのアクションプランを作成した。
goMoxieのマーケティング担当シニア・バイス・プレジデントであるTara Sporrer氏によると、今回の調査によって、小売業者が全ショッピング・ジャーニーを通じて、積極的かつ関連性の高い情報を提供し、顧客を誘導するために、より有効な施策を講じる必要があることが明らかとなったという。
「調査結果によると、企業が行ってきた顧客体験向上の努力にも拘わらず、小売事業者を利用する消費者の40%は、オンライン取引時の基本的タスクを完了するのに苦戦していることが判明した」と、同氏は語っている。
デジタルベーシックは失敗を招く
オンライン販売事業者は、消費者の学習曲線が追いつくのをただ待つべきではない。デジタルで買い物をする消費者は、別のところで、自分達が必要なスキルを習得する。
「消費者が追いつくのを待っていると、小売業者は、長期間待つことになり、競合他社が迅速に採用しているイノベーションを取り入れないことにより潜在的収益を失うことになる」と、Sporrer氏。
「賢明な小売業者は、顧客の期待に応え、顧客が好むインタラクション・チャネルを使ったショッピング体験を通じて、顧客を誘導することに重点を置いている」と言う。
それどころか、インターネット小売業者は、買い物客のスキルの欠如に対応したデジタルストア体験を設計する必要がある。買い物客を無理に適応させることはできないのだ。
「オンラインの買い物客は、店頭で親切な店員が対応してくれるのと同様に、チェックアウト時における専門家のガイダンス的要素を必要としている」とSporrer氏は語る。
優れたデザインのウェブサイトは、困った時に必要な情報を提供し、サポートスタッフの関与を必要としないのである。
消費者の混乱
買い物客の「デジタルIQ」が低いように見えるのは、消費者の能力欠如の問題というよりも、新規利用者による混乱の問題かもしれない。いずれにしても、小売業者は、極めて短時間で、今年のホリデーショッピングシーズンに間に合うように迅速に修正を行わなければならない。
今年は、パンデミックの影響により、特に高齢者をはじめとする多くの買い物客がオンラインショッピングに注目している。デジタルソリューションを提供するQuentelliのエンジニアリング担当バイスプレジデントであるSridhar Jayaraman氏によると、従来、高齢者は、いわゆる昔ながらの「ショッピング体験」を好み、もしくは、慣れ親しんでいるために、店頭で買い物をする傾向にあった。
「今、高齢者は、デジタル世界をナビゲートするという課題に直面している。しかし、多くの場合、デジタル世界は、ミレニアル世代のペルソナ向けに最適化されている。商品検索、サイズチャート、カラーオプション、レコメンドエンジン、ロイヤリティの利用、そして、基本的なナビゲーションさえも、通常はオンラインで買い物をしない人にとっては複雑に思えるかもしれない」と、Jayaraman氏は語った。
同氏は、オンラインショッピング初心者により親しみやすいと思わせるために、小売業者ができるいくつかのことを提案している。1つは、ウェブとモバイルの両方のチャネルで、シンプルなショッピング体験サイト、いわゆる「ライト版」を提供することである。これにより、不慣れな買い物客が、ソフトウェア・エコシステムで諦め離脱する可能性を低くする。
もう一つの迅速に対応できる方法は、ショッピング行動に基づいたウェブオーバーレイを実装することである。例えば、ページのスクロールに時間がかかりすぎている場合などに、サポートエージェントを呼び出す簡単なアクセスを提供する。
セラー向けアクションプラン
小売業者は長年にわたり、企業ウェブサイトを使って顧客体験を向上させようと努力してきた。しかしながら消費者は、オンライン取引で基本的な操作を完了するのに苦戦していると、Sporrer氏は指摘。
消費者は、ほとんど改善されていないと感じているのだ。同氏は、「その結果、eコマースのコンバージョン率は、過去 20 年以上にわたって一貫して低い水準にとどまっている」と言う。
「我々goMoxieの調査結果から、小売業者は、顧客がサービスやサポートを受けるために戻ってくる時だけでなく、自社サイトに訪問してからチェックアウトするまでの全購入ジャーニーにおいて、顧客を誘導すべきだと考えている」と、Sporrer氏はアドバイスする。
企業が、効率性を犠牲にすることなく顧客体験を向上させ、消費者の苦悩を回避することは可能である。どうすればいいのだろうか?それには、2つの基本的なことを実行すればいい。顧客の期待に応えること、そして、顧客が好むアクション・チャネルにフォーカスすることだ。
この2つを行うことで、ショッピングカート放棄によって失われる年間180億ドルの売上高の一部を回復することができる、とSporrer氏は付け加えている。
警告サインを監視する
まず、顧客が好むチャネルにフォーカスしよう。デジタルチャネル上に顧客を維持したい小売業者は、eメールとライブチャットを介したインタラクションに注力すべきだ。goMoxieの調査レポートによると、テキストメッセージングとボットは、最も好まれていないインタラクション・チャネルである。
オンライン買い物客は、事業者ウェブサイトで苦戦するだろう。それは確実である。小売業者は、顧客の苦労を減らす、あるいは完全に失くすために、顧客のオンライン行動を予測し、読み取る必要がある。
事業者は、オンライン顧客がどこにいるか、そして、多くの場合、その行動によって顧客が何を必要としているかを知ることができる。顧客に、自らヘルプを求めることを期待すべきではない。ほとんどの人は、助けを求めない。そうではなく、顧客を誘導しなければならないと、goMoxieレポートは強調している。
すべての世代が、異なるレベルではあるが、ウェブサイトでのショッピング問題に悩んでいる。驚くべきことに、最近小売業者からオンラインで購入するのに苦労したことがあると回答した人の割合が最も高勝ったのは、完全にインターネットに囲まれた環境で育ったZ世代であり、その数は46%に達した。
戦略的リアクションをする
goMoxieは、顧客とのインタラクション・チャネルを最適化することにより、顧客のオンライン上のトラブルを解決することを推奨している。小売業者は、顧客がトラブルを抱えていることを検知した時、ウェブサイトの訪問者の緊急性とニーズに基づいて、積極的にライブチャットやeメールでのサポートを提供する必要がある。顧客の障害となっているものを無視してはいけない。それらを排除しなければならないのだ。
マーケティング担当者は、オンライン顧客サポート技術に投資する前に、買い物客がその技術を実際に使用することを確認する必要がある。オンラインヘルプを強化することが解決策となると期待するかもしれないが、それは間違った考えだ。goMoxieの調査によると、オンラインでヘルプを求めたのは、4人に1人にすぎない。
オンラインで問題に直面した場合、62%の消費者が、そのショッピング体験を放棄する。そして、デジタル消費者の52%は、競合他社のウェブサイトでオンラインショッピングを完了させる。
時には、より少ないことがより多くの結果を生む
Quentelliの Jayaraman氏は、オンラインショッピング利用者に対し、質問形式のガイド付きエクスペリエンスを提供することを提案している。例えば、商品が表示される前に、最初に1つだけ質問を表示する。
例えば、「今日は、何をお手伝いできますか?」といった質問である。そして、「ギフトを購入する」、「特定の製品をチェックする」など、いくつかの回答オプションを提供する。
個々の買い物客の反応によって、小売業者は追加の質問をすることが可能である。このプロセスにより、表示する商品を絞り込むことができる。
調査レポートは、現在のような非常に短期間での大幅なオンラインへのシフトは、多くの小売業者にチャンスをもたらすと結論づけている。この点は、Jayaraman氏も同意している。
「これは、小売業者にとって、売上増加だけでなく、当面の間オンラインショッピングをすることになる新規消費者層を固定させるチャンスでもある」と、同氏。
販売事業者は、オンライン購入をする消費者の中には、人間とのインタラクションを望まない明確なペルソナが存在することを認識する必要がある。現在では、知識が豊富な典型的な買い物客だけではなく、より多くのオンライン消費者が存在しているのだ。
小売業者は、WhatsApp、ライブチャット、人間がアシストするチャットボットなどの革新的なショッピングチャネルを提供する必要がある。コールセンターへの投資を削減しようとする圧力がある一方で、小売業者は、今シーズンは、例年とは根本的に異なることを認識しなければならないとJayaraman氏は言う。
例えば、価格照合、返品、製品に関する質問などは、カスタマーサポートの件数を増加させる可能性のある分野である。レジリエンスへの投資、旧式バックオフィスシステムの近代化、そして十分な教育を受けたカスタマーサービスチームは、小売業のリーダーとなるためには非常に重要であると、同氏は説明している。
「事実、カスタマーサービスは、近い将来、主要な競合他者との戦いの場となる」とJayaraman氏は語る。
積極的で明確なコミュニケーションが重要
確かに、消費者が必要とする情報は、間違いなく、ウェブサイトのどこかにあるのだろう。しかし、買い物客は、必要なときに必要な情報を見つけることができずに困惑しており、これが、彼らが直面している問題である。この問題は、モバイルデバイスで買い物をする場合に、特に多く発生している。
小売業者は、消費者がオンラインで基本的なタスクを完了できるように誘導する必要がある。そのためには、コンテクスチュアルで関連性の高い情報の抜粋を提示することが最も効果的である。
「顧客のエンゲージメントを継続させ、購入を完了させるために必要なのは、軽い後押しだけかもしれない」と、goMoxieのSporrer氏は述べている
例えば、サイト訪問者に対し、エラーになる前に、クーポンやギフトカードの入力方法を伝える。ロックアウトを回避できるように、顧客にパスワードの再設定を案内する。そうすれば、フラストレーションをなくし、電話やメールでのやりとりを必要とする手間を避けることができるのだ。
フリクションレス・ショッピングを目指す
新規オンライン顧客を維持するために、利便性の高い誘導機能を準備すること。基本的な情報を得るために、小売事業者にコンタクトする必要をなくすこと。これらの2つのポイントは、小売事業者にとって極めて重要であり、消費者と小売業者の両方にとってより良いオンラインショッピングを成功させるために不可欠である。
顧客が事業者に連絡する前に、「注文した商品の配送状況」ページに誘導したり、返品ポリシーを提示したりすべきである。そうすることにより、価値が高いインタラクションに現場エージェントを活用することが可能となる。さらに重要なことは、オンライン小売業者は、顧客の貴重な時間を節約する必要があるとgoMoxieレポートは示している。
「多くの企業は、顧客の障害を想定したサービスモデルを構築している。ウェブサイトを開設し、問い合わせ電話番号を提供し、消費者が問題を解決するか、ヘルプを求めることを想定している」と、Sporrer氏は述べている。
このモデルには欠陥がある。消費者のトラブルに対応するだけでは、コンバージョン率が低下し、顧客のフラストレーションが溜まると研究結果が示していると同氏。
そうではなく、小売業者は、販売モデルを、ガイダンスをベースとした使いやすいものにシフトする必要がある。フリクションを取り除き、障害を予測することで、企業と消費者の両方に成功をもたらすことができる。
ボトムライン
消費者を、オンライン取引で困らせてはいけない、とSporrer氏は主張している。しかし残念なことに、多くの消費者が苦戦し、結局は離れていってしまう。
「ホリデーショッピングシーズンを目前にし、小売店の顧客とのインタラクション・ボリュームは前年比で2倍以上になっている。小売業者は、取引を増やし、満足度を高め、2020年のホリデーシーズン、およびそれ以後に向けて販売機会を最大限に活用するために、すべての顧客を成功に導くための対策を今こそ講じるべきである」と、同氏はアドバイスする。
※当記事は米国メディア「E-commerce Times」の11/12公開の記事を翻訳・補足したものです。