0から売りを作っていくために必要な2つのマインドセットと3つの改善の軸
ECの売上を上げるための集客とサイト構築をテーマにしたイプシロン株式会社主催のセミナー&個別相談会が、3月8日に開催されました。
本日はそのセミナーの中から、エンパワーショップ株式会社代表西澤が講演した内容から、特に皆さんに知って欲しい部分を抜粋し、「0から売りを作っていくために必要な2つのマインドセットと3つの改善の軸」と題して紹介していきます。
前編では、2つのマインドセットとはどのようなものかを考えていきます。
そもそもネットショップの置かれている環境とは
“デジタルでものを売ること”が多様化した現在、ECサイトの運営は非常に難しくなっています。
7、8年前であれば、お店を開いて商品を並べるだけである程度の収益は見込めました。
しかし近年は、複雑なネット広告への対応やスマートフォンへの対応、さらにソーシャルメディアの使い方など、売上を上げるためには幅広い知識と能力が求められるようになってきたのです。
また、お客様であるユーザーのインターネットのリテラシーも向上してきており、少しで品質が悪かったり、他と比較してメリットの感じないショップからの購入はほとんど行わなくなってきています。
ここで一度、現在の非常に難しくなったECサイト運営の特徴をまとめてみましょう。
- 作業内容・範囲が広い
商品の仕入れや企画から、集客、サイトの構築、ユーザビリティ対応、商品画像撮影・加工、コピーライティング、更には顧客対応や、メルマガなど、他の業界や他のジャンルの職種に比べると、かなりの幅広い業務をこなさなければいけないと言えるでしょう。
- 単純作業ではない
SEO対策やリスティングなどをはじめ、データ解析、ソーシャル活用、利益率管理など、いずれも単純な流れ作業で行えるものが少なく、知識が必要な業務が多いのも特徴と言えます。
- 売上アップも必要
課題の把握・解決、キャンペーン実施、モール別のテクニックなどを駆使して、結果としての売上を作っていかないといけないため、非常に難易度も高いです。
これは、大企業であれば、複数の担当者が少しずつの工数を分け合って対応をするのが基本です。
分業化が進んだ現在のワークスタイルでは、あまり考えられないような幅の広さと難易度と言えるでしょう。
また一方で、経済産業省などのデータによると、国内のECサイトの9割以上が月商500万円以下だと考えられます。そして、その半分程度(もっと多いかもしれない)が月商50万円以下だと推測されます。
月商500万円というのはショップにとってひとつの壁で、大抵は1〜2人でショップを運営していて、やることが多くてテンテコマイになっているケースが多くなります。
そのため、売上の低いショップほど月商が上がりにくい構造ができてしまうのです。
いわゆる、「悪いスパイラル」です。
そして、このスパイラルに陥ったショップの担当者からは一様に
アクセスも売上もなかなか上がらないし、上げ方も分からない
時間も限られているし、投資も限られている
と言うコメントを聞きます。
では、このような月商500万円以下のショップが売上を伸ばすには、どのような対策を取れば良いのでしょうか。
気を付けたい3つのよくある勘違い
では今までの経験から、そのようなショップの担当者の方によくありがちな勘違いをチェックしてみましょう。
1. 自分ひとりで何でもやればタダ!
外に何か頼むより、自分が何でもやってしまった方が安い、と思っている担当者は結構多いと感じます。
これはECサイトの運営だけに限らず、中小企業ではよくある考え方だと思います。
しかし、幅広い業務を行わなければならないECサイト運営において、何でも自分でやることは出来るだけ避けなければなりません。
自分でその業務を行う時間とアプトプットの品質と比較して外部サービスの方が投資対効果が高ければ、積極的に外部サービスを使うことを考えていきましょう。
自分にも人件費がかかっているということを忘れないことが重要です。
2. 投資をしないで集客したい!
利益の少ないショップであれば、やはり集客は投資をしないで出来るものならしたい、と言うのが本音でしょう。
確かにSEO対策などは自力でやれるような印象もあり、出来るのではないかと考えているショップも多いのではないでしょうか。
確かに、SEO対策は全く効果がないことはないですが、しっかり売上を作っていくためには不十分です。
特に独自ドメインのショップでは、抜群の商品力がない限り、投資をせずに売上アップを図るというのは難しいと考えた方が良いでしょう。
全体の15%ほどのショップは広告への投資をせずに売上を上げていますが、それは抜群の商品力があってこそなのです。
3. SEO・リスティングや売上の上がる絶対法則を知りたい!
売上の高いショップだけが知っているSEOやリスティング、更に売上の上がる絶対法則があって、それを教えて欲しい、と言うような話を時々聞きます。
しかし、これらには絶対法則などはなく、どちらかと言うと、そういうマインドがNGだと言えるでしょう。
売上を上げているショップは必ず独自の発想で工夫しています。皆さんのショップに合った方法と言うのを見つけていく必要があります。
0から売上を作っていくために必要な2つのマインドセット
それでは、文字通り「0」から売上を作っていくために、まず行うべきことは何か。
そこで、重要な2つのマインドセット(ネットショップを運営する姿勢やスタンス)について紹介していきます。
マインドセット1:ショップの現状をしっかり把握する努力をする
売上アップに悩んでいる多くの担当者と話すと、
どうして売上が上がらないのかよく分からない
と言う声を聞きます。
確かに、先ほど紹介したように非常に難しい業務をされているので、分からないと感じることは多いと思います。
しかし、その一方で、現状を把握する努力をすることから、少し疲れて逃げている部分も多いのではないでしょうか。
なぜアクセスや売上が上がらないのか、なぜ以前より落ちたのか、何が問題で何を改善していかなければならないのかを把握しましょう。
分からないではなく、分かるような努力をしてください。
では、どのように把握していけばいいのでしょうか?
ここで、現状を把握するために必要な“6つの視点”を、紹介します。
1. コストの把握
仕入れ、固定費、人件費、外注費、販促費などのコストをしっかり把握してください。
人件費は、必ず皆さんの人件費も含めるようにします。
2. データの把握
アクセスや売上などの各種データだけでなく、検索エンジン上での順位などもしっかり把握します。
3. 課題の把握
商品、集客、サイト、運営など様々な切り口での課題があると思います。
どのような課題が発生しているか、競合と比較してどこに問題があるか、しっかり把握してください。
弊社の提供しているShopnoteでは、それらの課題をデータから自動的に判定して連絡することで、課題の把握を容易にすることを支援しています。
4. 商材の特性の把握
皆さんの取扱っているショップの商品の季節トレンドや流行廃り、どの程度リピートする商品なのか、一般的に高額なのか廉価なのかを把握してください。
5. 競合の把握
競合の商品、検索順位、価格、口コミ、サイト、販促手法などをきちんと把握してください。競合、特に皆さんのショップよりも売上が高いショップは、ヒントの宝庫です。
あそこの真似はしたくないんだよね、などと言わず、きちんと盗めるものは盗んでください。
6. スキルの把握
特に特殊なスキルが必要な画像加工、撮影、サイトデザイン、ライティングなど、皆さんで対応することによる品質は大丈夫ですか?
得意ではないものはしっかり得意ではないと理解し、専門家にその部分だけ依頼するなどの対応が必要になってきます。
これらの視点から現状を把握することにより、今後どのように対応をしていくべきかの方向性が見えてくるものです。
マインドセット2:お客様の利用シーンを徹底的に考える努力をする
皆さんのショップで取扱っている商品はどのような時に購入され、どのように使われているのでしょうか?
そんなことは考えなくても分かる、と言わず初心に戻ってしっかり考えることが重要です。
今まで想定していなかった使われ方に気が付き売上が大きく伸びることもあるのです。
多くのショップ担当者は、時間と共に客観性が無くなっていってしまうものですが、以下の3つのポイントを考えてみてください。
- いつ、誰が、何のためにその商品を買いたいと思うのか?
お客様はどのような時にその商品を欲しくなり、どのように検索し、どのようにサイトに到達し、どのように買いたいと思うのか、客観性を持ち、お客様の立場に立って考えてください。
- ユーザーが買わない理由は何か?
逆に、お客様が皆さんのショップで商品を買わない理由はなんでしょうか?
- ユーザーに買わせるために何が足りないのか?
そして、あと少しで買わなかったお客様、全く検討もしてくれなかったお客様に振り向いてもらって、買ってもらうためには、具体的に何が足りないのでしょうか?
これらの答えは、ちょっとした日常を変えることから見えてくるケースが多いのではないでしょうか。
例えば多くのショップの担当者は、驚くべきことに、あまりネットショッピングを活用していないことが多いという事実があります。
最低でも月に5回から10回は積極的にほかのショップで買い物をして、ユーザーの視点に立ち、ユーザーの思考をトレーニングすることが必要です。
最近のユーザーは賢くなってきているので、細かい部分でショップや商品の比較をし、ドライな視点でネットショッピングをしています。
まずはそのユーザーのレベルについていかなければ、改善策は何も出てこないのです。
たとえネットで買う必要がない商品でも、ネットで頼み、日常的にネットショッピングと接してみてください。
きっと皆さんのサイトに足りないものが見えてくるはずです。
もう1つ、利用シーンの検討の際に役立つ考え方として、他のショップと比較しながら、お客様の購買に至るまでのステップ毎に検討を行う手法をおすすめしています。
お客様は様々なきっかけからショップや商品を探して、購入へ向けた準備・調査を始めていきます。
その際に、大きく分けて3×3つのステップでお客様は購入へ到達することになります。
1. 集客
知名→認知→関心と言う、ニーズを持っているお客様に、商品やショップを知ってもらえているかと言う視点。
2. 訴求
ランディング→回遊→絞り込みと言う、サイトに辿り着いたユーザーに満足感を与え、商品を検討してもらえているかと言う視点。
3. 購入
決定→手続き→安心感と言う、最終的に購入してもらい、手続きが完了するまでのステップ。
この3×3のステップは、購入に至るステップを標準的にモデル化したものであり、弊社のECサイト調査などにおいても頻繁に用いるものです。
このモデルの説明は後日行いたいと思いますが、まずは利用シーンのブレークダウンのヒントになったのではないでしょうか。
後編では、悪いスパイラルに陥ってしまっているショップが改善するための3つの取り組みの軸について紹介していきます。