CRM(顧客管理システム)を中心とするクラウドコンピューティングサービスの分野で世界トップシェアを誇る米Salesforce.com社は2016年12月13日(火)、新機能「LiveMessage(ライブメッセージ)」を発表した。これは企業がSalesforceのサービスクラウド内で、Facebook MessengerやSMS、MMSなどのメッセージングアプリを通し、顧客と直接的なやり取りができるという新しいチャットボット(自動対話型サービス)だ。

これにより企業は、問い合わせ等のあった顧客の情報を予め得た状態で対応することが可能になり、顧客それぞれに合った最適なサービスを実現できるようになった。LiveMessageでの会話は保存され、時間を置いてまた続きから対話を再開することも可能となる。

Salesforce社は、「企業は今までのカスタマーサポートのフリーダイヤルにメッセージング機能を追加することで、Facebook MessengerやSMSなどを使ったサポートを、その日のうちに提供することができるようになる」と言う。

 

同時に発表された「Service Cloud Bot」は、企業がそれぞれの顧客の問い合わせに対し最適な回答を行うため、必要なあらゆる情報や関連アカウント情報を自動的に収集してくれるというもの。

 

加えて、他企業の持つボット(人間に代わって自動的に実行するプログラム)と自動的に連携して情報収集を整理してくれる「Bring Your Own Bot」という機能も発表した。

これは、例えば消費者からLiveMessageを通して「商品を交換したい」という問合せを受けた場合、その顧客毎の返品交換に必要な情報を即座に返信することができるというもの。より複雑な内容の場合、サービスクラウドのオムニチャネル機能は対応が可能なサービススタッフに自動的にその内容を送り、適切な回答を得ることもできる。

Nucleus Research社のRebecca Wetteman氏はチャットボットに関し、「顧客からの問い合わせに対して、企業はより迅速な対応が可能になり、サービスの飛躍的な向上をもたらすだろう」と話す。LiveMessageは、問題が解決した後も自動的にやり取りの履歴がクラウド内に追加されていくため、「次に問合せがあった際のスムーズな対話につながる」と言う。

 

他のボットとの提携

店の場所や営業時間などの基本的な質問に対応するボットは、既に複数の企業が開発している。更にこのLiveMessageの公開されたAPIを利用することで、企業は自身のボットと提携し、より精度の高い顧客情報を得ることができるようになるのだ。

 

ChatBotの魅力

急速に人々に受け入れられているメッセージングアプリと同様に、チャットボットも広く受け入れられていくだろうと米国のリサーチ会社Forresterは分析。FacebookやOracle、Microsoftは、企業が顧客サービスに使うため独自のチャットボットを設計できるツールを既に提供している。LiveMessageは「企業アプリケーションに与えるITコンシューマライゼーション(消費者化)の良い例」と話すのは、Constellation Research社アナリストのNatalie Petouhoff氏。消費者がずっと抱えてきた「企業と双方向なやり取りができない」という不満を、LiveMessageは解決すると話す。

 

LiveMessageによる恩恵

前述のWetteman氏曰く、「特に近年の携帯端末でのやり取りを好む消費者にとって、LiveMessageは今までのサービスよりさらに使いやすく進化している。そして企業にとっても電話やライブチャットといった既存のカスタマーサービスよりも効率的で、且つ安価であるという利点がある。」

しかしながら、LiveMessageはカスタマーサービスの一部を担うに過ぎない。「最終的にはボットではなく生身の人間による対応が必要とされる場面もあるだろう」とCRM分析会社Beagle ResearchのDenis Pombriant氏は語る。「LiveMessageはチャットボットと生身の人間による対応を使い分けるが、ケースによってはLiveMessageが問題全てを解決できることも。人によってはチャットボットによる機械的で単純な回答が欲しい場合もあるのでは」と示唆。

 

まだ消費者が抱く全ての期待に応えることはできないチャットボット。しかし、企業側は近い将来に向けて、その活用を想定した基盤を整えておくべきだとForrester氏は語る。

 

※当記事は米国メディア「Ecomerce Times」の12/14公開の記事を翻訳・補足したものです。