多くのオンライン小売業者は、買い物客がどのように商品を検索しているか、どのようにカテゴリやブランドを閲覧しているか、購入に結び付く行動は何かなどのインサイトを得るために、分析ソフトウェアを導入している。


これらの分析ツールがあるために、オンライン小売業者は「eコマース検索を最適化するために必要な情報は、いつでも入手できる」と考えがちだが、それは理論上のことである。

実際は、検索分析に関していえば、この問題は理論と現実が一致することはまれである。組織のサイロ化(部門間の断絶)や、さまざまな利害関係者のスキルセット(業務に必要な能力や資質、経験などの組み合わせ)や目標の不一致によって、買い物客の検索行動について収集した分析データを十分に活用できていないのが現状である。

例として、商品検索Webサイトでのオートコンプリート機能について考えてみよう。オートコンプリートは、買い物客を適切な商品へと誘導するためには、欠かせない機能である。しかし、検索分析における可視性が限られているため、小売業者は買い物客がオートコンプリートをどのように使用しているか、それが企業の目標達成に役立っているかについて、重要なインサイトを得られていない可能性がある。

これらの課題を解決するには、小売業者は従来の分析方法の枠を超えて、より優れた検索最適化をサポートするためのインサイトを引き出せる仕組みが必要だ。検索分析データと、それを最も効果的に活用できるスタッフの間に存在する文化的、組織的な溝を埋めるソリューションが必要になる。


課題:サイロ化はeコマース検索のインサイトを阻む

効果的なeコマース検索分析にまつわる問題の根源は、分析ソフトウェアの不足ではない。それどころか、現代の企業は、買い物客の行動に関する膨大な量のデータを自動的に収集することができる強力な手段を利用できる。問題は、「得られた分析データを適切な人に適切な形で提供すること」にあるのだ。

一般的な企業では、分析チームのようなごく一部の従業員しか分析ソフトウェアに直接アクセスすることができない。買い物客の行動を理解することに関して言えば、分析チームが情報へのアクセス権を握っているということになる。

もちろん、分析チームが次のようなこともできる立場であれば、問題はない。

  • eコマースマーチャンダイザーの小売戦略や優先事項を理解し、それらが買い物客のオンライン行動とどう結びつくのか把握する
  • 開発チームと協力して、分析によって明らかになった小売戦略や優先事項の最適化に必要な技術的な変更を実施する

残念ながら、ほとんどの分析チームはこういった分野に直接関わっていない。小売戦略はビジネスの別の部門によって確立・管理されており、分析チームは小売戦略の全体像を見通せていないことが多々ある。また、彼らは、得られた分析インサイトに対応できるeコマースプラットフォームの開発に関わることもほとんどない。加えて分析チームは常に時間に制約があり、他のチームと深く関わる時間的余裕もないことが一般的である。

その結果、eコマース分析データとビジネスの他の部分の間には深い溝ができてしまう。企業がいくら買い物客の行動についてデータを収集しても、利害関係者が容易にアクセスできず、理解することができず、扱い方もわからないようであれば、その情報に価値はほとんどない。

この「深い溝」が実際どのように発生するのかを説明するために、再び買い物客がオートコンプリート機能をどのように使用しているかを可視化する例に戻ってみよう。

分析ツールは、オートコンプリート機能によって補われた検索データを収集することができる。そのデータを、「どの単語、商品、カテゴリ、ブランドが最も小売業者の目標に関連するか」を理解するビジネスユーザーが利用できるようにならない限り、その価値はないに等しい。オートコンプリートに関するデータ分析がサイロ化されたままである限り、その企業はオートコンプリートが実際の売上促進に役立っているかどうかを判断することができないのである。


実用的なeコマース検索分析方法

一見すると、この難問の解決方法は、eコマース検索分析のビジネスと技術両面を理解できる人を雇うことだと思われるかもしれない。だが残念なことに、これらのスキルは重なる部分がほとんどないのである。eコマース分析、Web開発、ビジネス戦略に精通している人物を見つけることは不可能に近い。

より現実的な戦略は、検索分析インサイトを必要とする人々と、それを生み出すソフトウェアを隔てる文化的、技術的な差を埋めることである。企業はオンライン小売検索結果をどう開発し、どう表示するかを最適化する「検索マーチャンダイジング」のプロセスに分析をより集中的に組み込むことでこれを実現することができる。

これまで、検索マーチャンダイジングを担当するスタッフは、より良いマーチャンダイジングの決定を下すために必要なインサイトを得るには、分析チームの力を借りるしかなかった。しかし、検索マーチャンダイジングシステムと分析システムが接続されたり、分析機能が組み込まれたりすれば、マーチャンダイザーは分析を直接活用することができる。また、ソフトウェア開発者に変更を依頼せずとも、直接マーチャンダイジングの改善に取り組むこともできるようになる。

たとえば、オートコンプリートの例に戻ると、買い物客がどの候補をクリックし、どのように検索結果をたどったかなどのデータが、専門的な技術のサイト分析ツールにサイロ化されているのではなく、ビジネスユーザーが運用する検索マーチャンダイジングソフトウェアですぐ確認できると想像してみてほしい。この情報が正しく統合されていれば、この情報は、マーチャンダイジングチームの目標に沿ってオートコンプリート機能を最適化する方法について有意義なインサイトを提供するのに役立つ。

念のために言うと、このアプローチは専任の分析チームを廃止するという意味ではない。分析の専門スタッフは引き続き、複合的な分析インサイトを生成し、企業が自社のWebサイト上で起きたことを理解するのに必要なデータを集めるために、重要な役割を担っていく。

だが、検索マーチャンダイジングチームが必要とする、少なくとも基本的な分析インサイトを生成する場合、サイロ化された状態で作業したり、チーム間の潜在的な技術的断絶に悩まされたりする必要はないはずである。

企業は、買い物客の行動を理解するためにあてずっぽうに行動する必要はない。eコマースの検索分析を検索マーチャンダイジングと密接に統合することで、重要な可視性の差を埋めることができ、これまで多くの企業にとって手の届かなかった膨大なインサイトを解き放つことができる。eコマース検索分析からの直接のアクションは、可能なだけではなく、簡単に手の届くところにあるのだ。


※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の5/1公開の記事を翻訳・補足したものです。