MailCon New York 2024」でのPhonexa CEO、Lilit Davtyan氏(左)とMailCon CEO、Kristen Haines氏(画像提供:MailCon)

 

Googleやメールマーケティング業界の専門家が、「ポストYahoogle」時代の戦略について語った。

 

変化の年には、メールマーケターに戦術の転換が求められる。YahooGoogleは今年の初めに、大量メール送信者に対する新しいルールを発表した。今、マーケターは、「ポストYahoogle」時代にメールを拒否されないために、どのような手段を講じる必要があるのかを決めなければならない。

 

この夏、Googleを含め、メールマーケティングコミュニティのマーケターたちがニューヨークのMailCon(メールマーケターのグローバルコミュニティ)に集まり、この新しい時代のベストプラクティスを共有した。

 

MailConを主催するPhonexa(米国のソフトウェア企業)のCMOであるTalar Malakian氏は、「メールを取り巻く状況は、特に2024年にはGoogleとYahooの新しい大量送信者要件により、これまで以上に変化している」と語った。「さらに、GoogleのWebサイトドメインのアップグレードとスパムメールに関する厳格なしきい値はすべて、マーケターにとっての手ごわい障害となっている」。

 

このような状況の中、高いメールデリバラビリティ(配信率)や健全なレピュテーション(評価)を維持するためのアプローチが、Googleやその他の企業から提供された。以下に、メールマーケターが検討すべき戦術をいくつか紹介しよう。

 

送信者のレピュテーションを高める

デリバラビリティを確保するために、大量メール送信者は、SPF(Sender Policy Framework)、DKIM(DomainKeys Identified Mail)、DMARC(Domain-based Message Authentication, Reporting and Conformance)といった送信ドメイン認証を使用して、メールを認証する必要がある。

 

しかし、送信者として良いレピュテーションを築くには、より多くのアクションが必要であり、少なくともGoogleでは、ランク付けに基づく継続的な取り組みが求められる。

 

Googleの主任プロジェクトマネージャーであるEbenezer Anjorin氏はMailConの講演で、「私が送信者から受ける質問は、『GoogleやYahooはいつ私のメッセージを拒否し始めるのだろうか』ということだ」と述べている。「それは間違った質問だと思う。『ドメインは削除されるのだろうか』。それこそが大きな問題である。レピュテーションを高めるには時間がかかるのだ」。

 

レピュテーションはメール受信者が取る一連の行動によって決まるが、それは送信者にとってそれほど影響がないものから、より不利益を与えるものまで、ランク付けされている。

 

・無視

・配信停止

・スパムの報告

・ブロック

 

Anjorin氏によると、メールユーザーからよく聞かれる不満は、価値の低いメールが多すぎることや、ユーザーが簡単に配信停止できないことだという。

 

こうしたユーザーの要求に応えるため、Googleは配信停止に関する2つの新要件を送信者向けに導入した。まず、送信者はメール本文中にワンクリックで簡単に配信停止できるリンクを用意する必要がある。次に、これらの配信停止リクエストは48時間以内に処理される必要がある。

 

上記のリストにおいて、「配信停止」は受信者が取ることのできる、最も不利益を与えるアクションからは程遠い。配信停止をより簡単にすることで、たとえば貴社のメールをブロックしたり、スパムとして報告したりする受信者の数を減らすことができる。もし受信者がブロックやスパム報告をすれば、それは送信者のレピュテーションにさらに大きな影響を与えかねない。

 

「配信停止を簡単にしないと、スパムの報告が増え、そして完全にブロックされてしまう。それは決して良いことではない」と、Anjorin氏は話す。

 

確認メール

メールマーケターは、受信者や彼らが取るかもしれない不利益なアクションに振り回されているだけではない。GoogleやYahoo、その他のサービスと良好な関係を保つために、マーケターが自社でできる対策もある。

 

ワンクリックでの配信停止はGoogleの要件だが、Anjorin氏は、送信者がどのサービスを利用しているかにかかわらず、これは良い習慣であると話す。

 

一括送信者は、ワンクリックでの配信停止機能が適切に動作することを確認する必要がある。それが、より良いレピュテーションと全体的なデリバラビリティを向上させる確かな一歩となる。

 

さらに、送信者は一連のメッセージを送信する前に、必ずアドレスを確認する必要がある。アドレスが間違っていると、受信者はスパムとしてフラグを立てたり、メールをブロックしたりする可能性が高くなるからだ。Anjorin氏は、たとえばフォームでメール受信のサインアップをした後に、確認メールを送るという「2段階の同意確認」アクションを推奨している。

 

また、マーケターは、注文確認などのトランザクションメールや、より汎用的なマーケティングメールに同じアドレスを使用することにも注意が必要である。1つのアドレスから大量のメッセージが送信されるため、これらすべてのメールが自動的にスパムに分類される危険性があるためである。

 

Anjorin氏は、メールマーケターに対し、Gmail特有のアクションを行うためのリソースとして、「Postmaster Tools(使用しているドメインやIPアドレスがGmailのシステム上でどのような評価になっているかを調査するツール)」や「メール送信者のガイドライン」を使用することも推奨している。

 

エンゲージメント指標を毎日確認する

メールマーケターは、単純な開封率を掘り下げて考える習慣がすでに身についている。重要なのは、顧客がメールに反応した時に受け取るシグナルと、その結果としてどのような行動を取るかということである。

 

「健全な指標へのこだわりを持つことは良い習慣である」と、マーケティングオートメーションプラットフォームCampaignerのセールス&マーケティング担当シニアディレクターであるKevin Vaudry氏は話す。「あなたが得るデータは、何かを伝えているのだ」。

 

そこで、AIと機械学習が、マーケティングチームのデータを可視化し、実用的なインサイトを引き出すのに役立つ。このようなインサイトを活用することで、マーケターはメールキャンペーンを調整し、より魅力的で、スパムとしてフラグが立ちにくいものにすることができる。

 

「マーケティングチームが制約を受けていることは知っている」とVaudry氏。「AIが役に立つ。私は日常的に指標を確認している。3、4日で良し悪しが分かる。何週間も何か月も待つ時間はない。そして、すべてはある時点でメールに立ち戻る。あらゆる指標が重要である。データは毎日でも何かを教えてくれるので、それに注意してほしい」。

 

メールキャンペーンを6段階に分ける

Webホスティング会社NamecheapのシニアメールマーケティングマネージャーであるClinton Willmot氏によると、メールキャンペーンを実施・測定する際には、マーケティングプログラムを以下の6段階に分けるのが効果的であるという。これらのステージはメールメッセージに情報を与え、パーソナライズするのに役立つ。

 

・獲得: 顧客が購入し、リストに参加すると、確認メールが届く

・オンボーディング: 新規顧客には、会社に関するウェルカムメッセージが届く

・エンゲージメント: ブランド認知度を高めるため、メッセージが頻繁に送信される

・スーパーエンゲージメント: エンゲージメントの高い顧客には、カートの放棄やブラウザの閲覧などをトリガーに、パーソナライズされたメッセージが高頻度で送信される

・リエンゲージメント: 潜在的または非アクティブな顧客には、特別な取引やオファーを提供することで、再び顧客となることを歓迎するメッセージが届く

・トランジション: 顧客による配信停止の選択を処理できるよう支援する。場合によっては、配信停止や複数のメール配信を管理するためのオプションを提供する

 

ここで、顧客データとインサイトが、顧客がどの段階にいるかを特定するのに役立つ。

 

「大きな課題に直面しているメールマーケターは、MailConとPhonexaを利用して、同業者同士でつながり、学び、適応することで、課題を克服し、ビジネスを成長させるための最善の解決策や戦略を見出すことができる」と、Malakian氏は述べる。

 

さらに同氏は、「今年、私たちが重視したのは、メールマーケティングのパフォーマンスを向上させるための、特にメールのデリバラビリティに焦点を当てた、厳選されたプログラムをMailConコミュニティに提供することだった」と付け加えた。

 

※当記事は米国メディア「MarTech」の8/14公開の記事を翻訳・補足したものです。