株式会社矢野経済研究所は、国内のアフィリエイト市場を調査し、市場概況、アフィリエイトサービス事業者の動向を明らかにした。



市場状況

 

2022年度の国内アフィリエイト市場規模は、3,836億3,000万円と前年度と比べ9.4%増だった。増加した背景としては、コロナ禍の影響で打撃を受けた分野(旅行業、来店型サービス)の回復や広告主の予算拡大、在宅勤務をはじめ、オンラインでの生活スタイルが定着し、これまでアフィリエイトで取り扱わなかったオンライン特化型サービスの需要が伸長したためだと思われる。また、業種別の特徴としては、円安などの為替変動の影響により、FX関連や投資関連の金融分野が大きく伸長したことが挙げられる。これに対し、EC(電子商取引)分野においては、以前アフィリエイトで主要分野であった美容健康系は鈍化傾向になりつつある状況だ。

2023年度は、インフレや円安などの市場環境や一部広告主の広告予算の縮小、広告出稿の方針変更などのマイナスの影響を受けた事業者もいるが、取扱商材によっては大きく伸びた事業者も一定数いる。また、インボイス制度の導入により小規模事業者を主な取引先とする事業者においては一部影響を受けたところもあると考えられる。

アフィリエイト市場全体では、成長率が以前に比べて穏やかになっている中、参入事業者間において占有率を競う状況が続いているとみられ、新規顧客や新規分野の開拓に注力したり、クリエイティブ制作などのサービス領域を拡張する事業者もいるとみられる。そのため、2023年度の国内アフィリエイト市場規模は前年度比7.3%増の4,116億1,000万円を見込んでいる。

 

 

AIを活用した取り組み

 

主要アフィリエイトサービス事業者(ASP)のAIに関連する取り組みは、社内の業務効率化にAIを一部活用している事業者もいるが、顧客に対してはまだ具体的な取り組みはみられていない。

もし、アフィリエイト市場でAIを活用する場合は、メディアのコンテンツ制作や情報収集、SNSを通じたユーザーとのコミュニケーションなどが考えられる。一方、広告主に対しては最適な広告素材の制作、ASPにおいては社内業務(オペレーション、営業管理などの作業的な業務)の効率化や広告審査に生成AIを活用する方法などが想定される。

ASPの業務は労働集約型業務が多いため、今後AI技術が進展すれば、事業者内にAIの活用が広がっていく可能性があるものの、現状はAI技術にまだ不確定要素が多いとみられ、各事業者はデータを蓄積しながら、研究している段階にあるとみられる。

 

 

今後のアフィリエイト市場について

 

今後のアフィリエイト市場は、新規ジャンルの広告主や新興アフィリエイトサービス事業者(ASP)、SNSを中心に活動する若い世代のアフィリエイターの参入が増加し、着実に拡大すると予測される。

また、2023年は動画プラットフォームやSNSでの不正広告や違反行為が急増したが、これを受けて特にアフィリエイトでは先駆けて法規制が行われ、健全化に向けた取り組みが進んでいる。2024年以降で、このような規制が進めば、既存のインターネット広告やプラットフォームへの広告予算がアフィリエイト広告に振り向けられる可能性がある。このような背景から、国内アフィリエイト市場規模は2027年度には5,862億2,000万円に達するものと予測する。