投資の減速や予算の縮小、そして生成AIが混乱の脅威に。2024年がマーテックを揺るがす年になるかもしれない理由とは。

この十数年間、マーケティング担当者にとって確実だったのは、HubSpot(顧客関係管理プラットフォームを提供する米国企業)のプラットフォームエコシステム部門VPのScott Brinker氏による「マーテックランドスケープマップ」が成長するだろうということだ。2011年にわずか150社しか掲載されていなかったこのマップは、現在では11,000社以上(*)の企業が掲載されており、これは7,000%を超える驚異的な成長率である!

(*)Scott Brinker氏とFrans Riemersma 氏は12月5日に最新の合計を発表予定。

 

考えられうるあらゆるマーケティング分野に、生成AIを導入する投資が行われていることから、来年のマップも同じ成長軌道をたどることは間違いなさそうだ。

 

しかし、必ずしもそうだろうか。「作ればもうかる」という栄光の時代は終わったのかもしれない。さらに懸念されるのは、かつてLarry Ellison氏(米国のプログラマー・企業経営者、米国のソフトウェア企業Oracleの創設者でもある)がドットコムバブル期のソフトウェア業界について述べたように、マーケティングテクノロジーの状況が「キリング・フィールド(戦場)」に向かっている可能性があるということである。

 

我々の多くはベンダーとして、2023年にクライアントのマーケティング予算が削減されるのを見てきた。経済の先行き不透明感に対する一時的な対応と思われていたものが、2024年の現実となった。そして、状況はさらに悪化している。予算は攻撃にさらされ、人員やテクノロジーに対する投資は削減されている。

 

1. 枯渇する投資

マーテックへの影響はすでに表面化し始めている。2023年第3四半期、マーテックへの投資は大幅に減少した。新製品発表のマーテックパイプラインは、第2四半期の128、そして第1四半期の121から、第3四半期は65に減速している。

 

今年の初めにはChatGPT関連ツールへの大規模な投資が見られたが、これも第1四半期の100億ドルから19億ドルに減速した。既存ベンダーにとって、債務返済は非常に高くつく。それは、2024年のベンダーの財務状況にも影響を与えることになるだろう。

 

投資の冷え込みは、製品環境の減速の一因であるが、マーケティング予算の削減など、他の要因も影響している。

 

2. 革新的なAIツールが既存のツールを陳腐化させる

もう一つの要因は、生成AIそのものである。それは、その革新性だけでなく、代替品となることでも既存製品を脅かす。

 

既存の動画、コンテンツ、SEO製品、メールプラットフォーム、リストジェネレーターなどの多くは、独自のAIソリューションとの統合を直ちに行わない限り、淘汰されてしまう可能性があるのだ。

 

3. マーケティングに対する予算削減の圧力

クライアント側においては、マーケティング担当者が支出の効率化を図ろうとしている。彼らはまた、パフォーマンスに厳しい目を向けているが、状況は芳しくない。不況下では、成果の出ていない投資を守るのは難しい。最近話をしたあるCMOは、2022年にはマーケティングによって生み出された機会の4回に1回は成功したと話していた。2023年には、その数字は10回に1回になった。

 

データ統合の問題は、過去のアトリビューションの課題と同様に、依然として組織を悩ませている。ビジネスへの影響やROIに関する確固たる証拠なしには、既存のツールを擁護することは難しいだろう。

 

マーテックの 「スタック」は非常に大きくなっており、小規模な組織でさえ、バイヤージャーニーのさまざまな段階を対象とした30から50の製品を設けていることは珍しくない。これらのツールについては現在、詳細な調査が始まっており、CMOはこれらの投資を合理化する必要がある。

 

今年末から来年初めにかけて、マーケティング組織が既存のベンダーとの契約を切り離したり、契約更改を見送ったりすることが予想される。バイヤーがより柔軟性を求めるようになるなか、ベンダーにとっても、複数年契約の時代はプレッシャーにさらされることになるだろう。

 

4. 新しい生成AIツールのための余地を作る

マーケティング担当者は、ピカピカの新しいツールを好むが、生成AIには抗いがたい輝きがある。マーケティング組織における効率性の向上に役立つAIの能力に、疑問の余地はない。コンテンツ開発であれ動画制作であれ、生成AIは高速で、適切にトレーニングされていればかなり優れたアウトプットを生み出す。

 

ただし、それがより効果的であるかどうかは、まだわからない。競合他社に遅れをとってはいけないというプレッシャーは、CMOが当面はこうした投資を正当化するのに役立つかもしれないが、それには制約が伴う。最大の制約は、ゼロベースの予算である。それはもはや「足し算」のゲームではなくなる。新たな投資は、他のツールを廃止することで生まれるだろう。

 

5. 異邦人は目前に迫っている

来年はM&Aが大幅に増加すると予想されており、AdobeMicrosoft、Oracleはポートフォリオを強化したり、ソリューションセットのギャップを埋める機会を模索したりするだろう。資金削減に加え、市場需要の(おそらく劇的な)鈍化や負債の高額化が重なることで、革新的なテクノロジーを安価に手に入れる機会が生まれるだろう。

 

また、コスト削減、顧客基盤の拡大、資金節約のために、同じようなカテゴリーにある競合他社が合併する可能性もある。マーテックを取り巻く環境は、まさに過去に対する「キリング・フィールド」となる可能性が大いにあるのだ。

 

「データ主導型」のCMOは、これからは「パフォーマンス主導型」にならなければならない。景気の減速がより永続的になると、社内の資金獲得競争では、営業、マーケティング、プロダクトの各部門が互いに対立することになるだろう。これらの部門は、マーケティング投資が何を生み出すかについて、ますます懐疑的になるはずだ。

 

マーケティング組織やテクノロジープロバイダーは、自社の価値やパフォーマンス、そして価値を守る必要に迫られてくる。しっかり備えよう。2024年は、誰にとっても厳しい年になるかもしれない!

 

※当記事は米国メディア「MarTech」の11/9公開の記事を翻訳・補足したものです。