B2Bソーシャルメディアにおける戦略的なアプローチと無計画なアプローチ、そしてクラス最高企業の「スイートスポット」の見つけ方とは。
B2Bのソーシャルメディアプログラムほど「アクティビティとパフォーマンスを混同してはいけない」という表現が当てはまるものはない。
ソーシャルメディアを実行するアプローチの方法によって、組織を大きく2つに分類することができる。
- 戦略的に考え、プログラムを計画する組織
- 何かを、また何でもとにかく投稿する組織
簡潔にいえば、これは複数の業界の50社近い企業のソーシャルメディアプログラムを評価した、クラス最高の調査プロジェクトからの発見である。
複数のソーシャルメディアプラットフォームを使用して消費者と関わり、増収に成功しているB2Cの世界とは異なり、B2Bはソーシャルプログラムのための「決め手となるアプリ」を見つけようと必死になっている。つまり言葉を選ばず言うならば、「企業は業績アップのためにソーシャルメディアチャネルをどう使っているのだろうか」ということである。
B2Bでのソーシャルメディアの「スイートスポット」とは
我々の調査から、B2Bの「スイートスポット」を見つけ始めているひと握りの企業を発見した。彼らは、ソーシャルメディアへの投稿を、単純な更新やイベントから、オーディエンスを惹きつけ、ビジネスの目標を推進することを目的とした、より洗練されたコンテンツへと進化させている。
それと並行して、ソーシャルプラットフォームに関連するさまざまな役割に特化した代理店や社内リソースに多額の投資を行っている。これらの投資のおかげで、クラス最高(BIC)の企業は、プログラム計画を、毎週から四半期ごとに行うようになった。
しかしそれは例外であって、一般的ではない。私たちはまだ「投稿できるものは何か」という本質的な週単位の計画にこだわっている組織もたくさん見てきている。
B2Bコンテンツの注目する領域
コンテンツに関していえば、BIC組織はさまざまなオーディエンスを対象とした、次の4つの重要な分類にその取り組みの大半を集中させていることがわかった。
・製品/ソリューション
バイヤーや見込み客を対象とした、高解像度の画像、動画、導入成功のコンテンツ、顧客の声などによる製品の紹介。
・採用/HR(人事)
新入社員、既存社員向けに文化、キャリア、研修、多様性などに関する情報や画像の提供。
・ブランド
ブランドの柱(革新性、包括性、効率性、信頼性など)を伝え、強化することに焦点を当てたコンテンツとブランディング。
・コミュニティ
「アースデイ」「子どもを職場に連れてくる日」「MLKデー(キング牧師記念日)」「ボランティア活動」など、身近な話題に焦点を当てた投稿。
Amazonが提供するクラウドサービスプラットフォームAWS(Amazon Web Services)は、LinkedIn(ビジネス特化型SNS)で毎日ポッドキャストを制作し、フォロワー850万人にストリーミング配信し、他のプラットフォームでも再配信することで絶大な力を持つコンテンツとなった。
コンテンツ制作の品質は劇的に向上している。ほとんどのBIC企業が、ドイツに本社を置くソフトウェア大手企業SAPのように、フォロワーにリーチするために、短く、高度な内容で、様式化された動画を使用している。
B2B向けの主要なソーシャルメディアプラットフォーム
チャネルに関しては、当然のことながらLinkedInがB2B企業向けの最大手である。Twitter(現在のX)は、ビジネス利用者の多くを失い、B2B企業の関心も失っている。Instagram(IG)は、今ではB2B向けの欠かせない4つのプラットフォームの1つである(他の3つYouTube、LinkedIn、Facebookほどの規模ではない)。
たとえばIGは、米国に本社を置く大手コンサルティング会社McKinseyにとって、ソートリーダーシップ(特定の分野において革新的な思考やアイデアでその分野を主導する人や活動)を発信する重要なチャネルとなっている。同社の投稿は教育的価値が高く、ほとんどに研究や調査へのリンクがある。
スイスに本社を置く大手製薬会社のNovartisは、同じようなテーマ(チャリティ、がん研究、文化など)のコンテンツをまとめてシェアしている。これらの「キャンペーン」には通常、一貫したスタイル、トーン、トピックがある。IGでは常時、2~3種類のキャンペーンが実施されており、フィード上で視覚的に結び付けられている。つまり、コンテンツを大量に作成し、戦略的にスケジュールを組むことができるのだ。
TikTokはB2Bのオーディエンスを増やしつつあるが、利用している業界や企業は非常に偏っている。スレッドはまだ不明点が多い。Xよりは安全かもしれないが、B2Bのオーディエンスを増やすのは難しい。
放棄ページとユーザー行動の変化
今回の調査で、他にもいくつかの驚きの事実が浮かび上がった。Facebookのような”レガシープラットフォーム”には、何年も前に企業が慌ててページやグループを開設したものの、放置されたままになっている広大な「墓場」がある。そして、それは便乗主義者につけ込む隙を与えた。企業のブランドを使用した偽のページや、企業のページを使用した疑わしい投稿が見つかったのだ。
また、ユーザー行動の変化も見られ、特にLinkedInではブランドの一貫性に課題が生じている。以前のデジタル世界では、印象を与える時間は平均8秒だった。訪問者はサイトにアクセスし、そのまま探索するか、直帰するかをすぐに判断した。現在、ソーシャルメディアのスクロール機能によって、その時間は秒単位ですらなくなっている。特にリールではその傾向が顕著だ。
たとえば、あるクライアントのソーシャルメディア調査を実施した際、競合他社のLinkedInの投稿をレビューした。私たちのチームは、その投稿に一貫したブランドイメージ(青い背景に漫画の画像)が使用されており、類似性があるため、閲覧者にその投稿を「もう見たことがある」ような印象を与えることが分かった。したがって、もしオーディエンスにあなたの投稿が新たなものであると気付いてもらいたいなら、明確に異なる画像を使うことだ。”ブランド警察”には内緒にだ!
重要なポイントと次のステップ
我々は調査と合わせて、コンテンツ目標(マーケティングとビジネス)と制作の品質(コンテンツ、デザイン、プランニングの機能)を軸にしたソーシャルメディア成熟モデルを作成した。浮かび上がってきた企業を区分し、ソーシャルメディアのビジネスへの影響を高めるためのロードマップを作成したのだ。重要なポイントは次の通りである。
- ソーシャルメディアの初期に構築されたものとパブリックドメインに残っているかもしれないものを訪問し、クリーンアップする。
- 1ヶ月先、2ヶ月先のコンテンツスケジュールの作成を検討し始める。
- そのカレンダーを埋めるための要件を定義する。
BIC企業を参考に、以下のようなプラットフォームとペースで投稿する必要がある。
・LinkedInでは1日1~2回(週末を含む)。
・Instagramでは週3~5回(ストーリーズでは毎日)。
・TikTokで実験したい場合は、1日1~4回。
組織内のどこからコンテンツを発信するか、または発信するべきであるかをマッピングする。人事、営業、製品、企業責任と連携する必要があるだろう(これらは、前述の4つのコンテンツ領域を満たすものである)。
彼らの目標と、その達成や支援にソーシャルメディアがどのように役立つかを話し合わなければならない。そして、彼らのコミットメントを得るとともに、彼らのコンテンツを取得、レビュー、承認、投稿するプロセスを説明しよう。
誰もがこのジャーニーに投資するわけではない。パフォーマンスよりもアクティビティを優先する人もいれば、見込み客や顧客に高い期待を寄せる人もいる。
B2Bにおけるソーシャルメディアプラットフォームの重要性は高まっており、企業は自社のビジネスに最適なものを見つけるために、アプローチを成熟させる必要があるのだ。