株式会社博報堂のシンクタンク博報堂買物研究所は、EC領域に特化した組織横断型プロジェクト「HAKUHODO EC+」とともに、次世代の買物の主役となるZ世代の買物行動・買物価値観の深堀、ライブコマース・クイックコマースなど次世代コマースの利用動向の把握を目的とした「Z世代×ニューコマース調査」を実施した。



Z世代の「バイヤー型消費」の特徴

 

調査結果から見えたZ世代特有のコマース行動のことを、買物研究所×HAKUHODO EC+では「バイヤー型消費」と名付た。「バイヤー型消費」は「積極的に情報収集をして、自分が欲しい情報を自ら取りに行く(開拓志向)、良いものを選ぶために国内・海外問わずにフラットに製品を購入する(越境志向)、自分なりの情報筋を確保しつつ、本当に信用できる情報かを見定める(見極志向)、良いと判断したものは、自分の直感を信じて即決で購入する(即決志向)」という特徴が見られ、バイヤー自ら積極的に情報を獲得し、情報の真偽を見極めながらコマース行動を行う姿が浮き彫りとなった。

 

 

「開拓志向」

 

今回の調査では主にY(ミレニアル)世代(26-41歳)とX世代(42-59歳)と比較している。

 

 

「買い物意識に関する質問」に対し、「トレンドや流行りの商品を選ぶ」に該当すると答えたZ世代は39%と、Y世代よりは12ポイント、X世代よりは23ポイント高かった。また、同じ質問に対し、「人と被らないブランド・メーカーを選びたい」と答えたZ世代は42%で、Y世代よりも6ポイント高く、X世代よりも7ポイント高かった。この結果を見ると、「トレンドや流行りの商品を選ぶ」と考えるのは世代によりばらつきがあったが、「人と被らないブランド・メーカーを選びたい」というのは世代での差がそこまでなかった。

 

また、SNSの利用認識について「店舗よりもSNSで商品を探した方が人と被らないファッションを探すことができると感じる」に該当すると回答したZ世代は45%と、Y世代よりも16ポイント、X世代よりも24ポイント高かった。そして生活意識においては、「趣味や好きなことを深く極めたい」という質問に対して、Z世代は74%、Y世代は64%、X世代は63%となっており、どの世代も全体的に該当者が多かった。

 

 

Z世代がソーシャルコマースを利用する理由は、1位が「お店に行かなくても商品が買えるから」が28%、2位は「欲しいと思う商品が多いから」24%、3位が「今まで全く知らなかった商品を知ることができるから」22%、4位が「思いがけず良い商品に出会えるから」20%、5位が「珍しい商品に出会えるから」20%となっており、3位の「今まで全く知らなかった商品を知ることができるから」は、Y世代でも同率で3位だった。

 

 

「越境志向」

SNSの使い方やSNSを使用した買い物方法について、大手ECモールだけではなく、海外の新興ECサイトを通じて購買を行うユーザーも一定数見られた。そのうえで、「自分が知らない海外メーカーの商品でも、SNS上で日本人の評価が高ければ購入したいと思う」と回答したZ世代は57%と、Y世代よりも+14pt高く、X世代は、海外のものに抵抗があるためか3割にとどまった。

賛否がわかれた海外メーカー商品だが、Z世代では、「海外サイトは商品名や着用モデルが日本人向けではないため、利用のしにくさはあるものの、ちゃんと届くのか・生地が丈夫かなどを身近な人に教えてもらったから安心して買える」との声もあり、身近な人のお墨付きがあれば海外サービスを駆使して購入を行うことが分かった。

 

また、「買い物をするときの意識」に対し、「日本のブランド・メーカーを応援したい」に当てはまると答えたZ世代は53%と3世代で最も少なく、Y世代は61%、X世代が66%と年齢が上がるほど日本のブランドに対し信頼を置いていることが分かった。

 

 

「見極志向」

 

SNSの使い方やSNSを使用した買い物について、「企業が発信する情報よりも、評価が高い個人のSNSの情報を参考にして買うことが多い」に該当すると回答したZ世代は51%と、Y世代よりも+16pt高かった。また、「インフルエンサーのアカウントはその投稿に対して色々な人がコメントしており、ファッションの組み合わせ方など参考になるコメントを見ることができる」などの声も聞かれ、自分が好きなインフルエンサーをフォローしている個人のコメントを参考に買物を行う姿も見られた。

 

しかし、「自分の好みではないアカウントをフォローすると、アルゴリズムが崩れてしまい、タイムラインの最適化が崩れる」などのマイナス面もあり、「公式アカウントを見るのはCP時のみ」と、安易にSNS上で企業アカウントをフォローせず、自分が信頼できる情報だけが取得できるように自分のSNSアカウントを調整していることも分かった。

 

 

「即決志向」

 

買い物するときの意識調査で、「衝動買いをよくする」と答えたZ世代は37%と、Y世代よりも+7pt、X世代より+18ptも高かった。Z代の男性の中には、「欲しいと思った商品は、スマートフォンでスクリーンショットをしてたまに保存するが、ほしいと思ったこと自体を忘れてしまうときがある。なるべくそうならないように早めに買うようにしている」などの声もあり、本当に欲しいものは衝動的に購入している人もいるようだ。

 

 

 

まとめ


Z世代の「バイヤー型消費」の背景には、生まれた時から大量のデジタル情報に触れ続けてきたゆえのZ世代ならではの情報価値観、買物価値観があった。また、情報の信頼源を探し、SNSを駆使して自分の「買いたい」という欲求に向き合っている姿も見て取れた。このことから、令和の消費行動をリードし続けるZ世代にアプローチするためには、こうした特有のコマース行動を踏まえた戦略設計・行動デザインを行うことや、Z世代からの信頼、商品情報の伝播方法やZ世代の「買いたい」衝動を逃さないシームレスな購買導線・決済を提供する新しいコマース体験など、彼らの特性をうまく捉えたプラニングが必要不可欠だと考えられる。