Amazonは、欧州中央銀行(European Central Bank:ECB)が導入を目指すデジタルユーロ(デジタル通貨)に付加価値を見出している。同社は、eコマースの決済で利用可能なアプリのプロトタイプを構築した。

ユーロ加盟国の中央銀行は、デジタル通貨の可能性を模索している。これは、ビットコインなどの暗号通貨に代わる安定した通貨として機能し、デジタル時代でも中央銀行の資金を確実に利用できるようにすることを目的としている。2022年春、ECBは欧州の決済市場のフロントエンドプロバイダに対し、アイデアの提供や具体的なアプリケーションの構築を要請した。

 

デジタルユーロは、暗号通貨の安定した代替手段でなければならない。

 

eコマース取引のプロトタイプ

Amazonは昨秋、デジタルユーロのプロトタイプを構築し、オンライン決済機能の確認を担当する企業に選ばれた。同社は次のコメントを発表した。「この活動の目的は、電子商取引のフロントエンドプロトタイプを正常に提供し、ユーロシステム(ユーロ非参加国中央銀行を除いたECB及びユーロ圏中央銀行を合わせたユーロ圏の通貨当局)のバックエンドインフラのプロトタイプと統合することで、デジタルユーロが既存の欧州の決済環境にスムーズに統合されるかを確認することだった」。

 

特定のアプリ

イタリアの銀行Nexi、スペインの総合金融機関CaixaBank、フランスの決済処理業者Worldline、ベルギーに本社を置く銀行と決済代行会社のコンソーシアムEuropean Payments Initiative(EPI)の4社にもそれぞれ、デジタルユーロの特定のアプリケーション開発が依頼されている。EPIは最近、ユーロ圏で統一された決済ソリューションの展開を目標に買収を行った。ECBは、EPIによる同買収をサポートしている。

 

得られた教訓

ECBは、プロトタイプを開発した5社から得られた知見と教訓を報告書として発表した。報告書には、「このテストで、新しい機能とテクノロジーの余地を十分残しつつ、それぞれのプロトタイプをスムーズに統合できることが分かった。また、デジタルユーロは原則として独立した設計を用い、オンラインでもオフラインでも機能することが確認できた」とまとめられている。

 

「これは、デジタルユーロの回復力を高めることにもなるだろう」

 

今回開発されたプロトタイプは、将来の決済ソリューションのベースとして使用されることはない。

 

Amazonの前向きな展望

Amazonは、デジタルユーロの導入を歓迎している。同社は、「デジタルユーロがイノベーションを促進し、決済の効率化を図るツールになりうると考えている」とコメントしている。また同社は、この新しい公共インフラが、EUの住民、販売者、そしてより広範なEU経済に「多大な利益」をもたらすだろう、と前向きにとらえている。

 

※当記事は欧州メディア「Ecommerce News」の5/30公開の記事を翻訳・補足したものです。