米国に本社を置き、データ解析プラットフォームを提供するFullStoryの欧州、中東、アフリカ地域セールス担当VPであるAndrew Fairbank氏による、顧客向けのシームレスなモバイルデジタル体験を提供しようとするブランドへのアドバイス。

 

2023年になり、デジタル体験への期待はますます高まっている。例えば、60%の人が、ブランドとの摩擦のないオンラインインタラクションのために追加料金を払ってもよいと考えている。「2023年版Global digital experience trends(世界のデジタル体験の傾向)」の調査では、10人に1人が25%の追加料金を支払う、と回答している。

さらに、モバイルからのトランザクションが増加し、51%がPCなどの大きな画面よりも、モバイルの利用を好むと回答している。

しかしその一方で、世界的な経済状況の低迷により、消費者の消費頻度のさらなる低下が予想される。今回の調査では、49%はオンラインショッピングの支出を削減し、42%は店頭へ買い物に行く回数を減らし、20%が今年中にサブスクリプションを解約する予定だと回答。

ますますシビアになる買い物予算をめぐる激しい競争に直面し、ブランドは消費者を獲得するため、特にモバイルにおいて、シームレスなデジタル体験を消費者に印象付けることに必死になっている。そこで、ブランドは、デジタル体験を形作っているトレンドに合わせることから始めることができる。 

 

1. 優れたデジタル体験はブランドロイヤリティに勝る

マーケターは、消費者が好きなブランドを入手するためには何でもしてくれると思い込むことも多い。ところが、消費者はそうではないと言っている。英国人の3分の1以上(38%)、ドイツ人の約半数(48%)、オランダ人の半数以上(53%)が「機能する限り」どこから購入するかは「気にしない」と回答している。ブランド体験は、その最弱の繋がりと同程度の強さしかないのだ。消費者にとって重要性が増しているモバイルにおいては、課題が山積していることは間違いない。

小売りおよび食料品業界は、モバイルの機会に力をいれており、アプリ内体験に関する回答でそれぞれ64%と63%のスコアを獲得している。しかし、自動車とゲーム業界は後れを取っており、優れたアプリ内体験は38%しか報告されていない。

 

2. 消費者は読み込みの問題をきっかけだと感じる(しかし、口には出さないかもしれない)

この傾向は驚くことではない。消費者の3分の1は「ストレスまたは停滞を感じるデジタル体験をした」と回答しており、サイトやアプリの読み込みの問題は最も不満を感じさせるものである。72%が「読み込みが遅く時間がかかること」を不満の1位にあげており、63%が「読み込みエラー」を一番の不満だと回答している。

「リンク切れや機能していないボタン」が46%、「入力できないフォーム」が39%のスコアとなった。今日の消費者は、携帯電話の画面で壊れたフォームやページに出くわしたくないのだ。だからこそ、消費者のフィードバックに耳を傾けることはこれまで以上に重要となる。

 

 

消費者の3人に1人が、ストレスを強く感じたり、苦労や停滞感を覚えたりするデジタル体験があると回答。

しかし、フィードバックの提供に積極的なのはわずか43%で、残りは何も言わずに問題のあるページから立ち去ろうとする、というデータがある中で、どうすればフィードバックを得られるだろうか。消費者の声とその不満に耳を傾ける唯一の確実な方法は、デジタル体験分析による知的な手段である。

 

3. 顧客の不満を解消しても、彼らは戻ってこないかもしれない

顧客の認識を変えるということに関しては、第一印象を良くするための2回目のチャンスはないといっても過言ではない。調査データでは、不満を感じた場合、65%がトランザクションを完了せずに離脱する可能性があり、55%が「二度と利用しない」と回答している。消費者エンパワーメントのこの時代、予防は治療に勝っており、リテンション(維持)が肝心だ。シームレスなデジタル体験を提供することは、かつてないほど重要になっている。

 

 

世界の消費者の64%が、オンライン利用中に問題や不満を感じた場合、そのトランザクションを完了することなく離脱する可能性が高い。

 

4. ブランドは直接データを集めなければならない

ブランドが、よりセールスにつながるような重要なターゲット顧客のデータを収集するには、さまざまな方法がある。ファーストパーティデータは、自社のサイトやモバイルアプリから直接収集したものだ。オーディエンスから直接得たもので、正確で有用な傾向がある。サードパーティデータは、貴社や貴社のオーディエンスと直接関係のない別の企業が集めたものであり、プライバシーに関する懸念がある。そこで、Apple、Mozilla(旧ネットスケープやFirefox、Thunderbirdなどのオープンソースのアプリケーションソフトを提供)、GoogleはサードパーティCookieの段階的な廃止を発表した。実のところ、いくつかのブラウザではすでにデフォルトでサードパーティのCookieをブロックしており、実行可能なファーストパーティのデータ戦略をまだ必要とする人々は、データを入手することができなくなっている。

顧客を理解するためにファーストパーティデータは非常に重要であるため、ブランドはサイトやアプリでのデジタル体験からユーザーや訪問者の情報を安全に記録する能力が必要となる。「デジタルエクスペリエンスインテリジェンス」 (DXI:Web サイトの詳細な分析を読み取ることができる一連のツール)は、顧客が希望するデータのみを正確に共有する機会を提供することで、特にモバイルマーケターを支援することができる。これは、顧客の立場に立って、同じ目線でアプリを見る方法と捉えることができるものである。

 

5. スーパーアプリの開発が加速

スーパーアプリ(一つのアプリの中に決済やショッピング、ゲームといったあらゆる機能を備えるもの)は、ファーストパーティデータを収集する優れた方法になりつつある。米国に本社を置くリサーチ・アドバイザリー企業のGartnerは、これらの「なんでもアプリ」をスイスアーミーナイフに例えている。ユーザーは数十のミニアプリ(スーパーアプリを基盤として動作するアプリケーションの通称。予約機能やモバイルオーダーといった様々な機能が、新たにアプリをダウンロードしなくても利用できる仕組み。)にアクセスし、使用または削除することが可能だ。そのため、これは大きな話題になりつつある。スマホ世代のモバイルファースト体験に対応するために作られているため、「スーパーアプリは先見の明がある組織が関心を持つようになるだろう」と、GartnerのVPアナリストであるJason Wong氏は語った。

中国のインスタントメッセンジャーアプリWeChatは、8億人のユーザーがいる世界で最も知名度の高いスーパーアプリかもしれない。インスタントメッセージ、ライフイベントの共有、友人との近況報告、レストランでの食事の事前注文、タクシーの予約、道案内、食事の支払い(または友人に割り勘分を送金)、映画の上映時間確認やチケットの予約、ショッピングなどすべて1度のログインで行うことができる。欧州では、Klarna(スウェーデン)、Lydia(フランス)、Revolut(英国)のようなフィンテックが、複数商品のモバイルサービスを開発し、スーパーアプリを支配している状態だ。中東の企業Careem(アラブ首長国連邦)も、移動、食事の注文、配送予約、送金が可能なオールインワンアプリで新風をもたらしている。

 

消費者はデジタルに大きな期待を寄せている

これらは、2023年にモバイルデジタル体験の展望に必要な開発課題の一部に過ぎない。結論としては「企業は、消費者を維持するために、使いやすく優れたデジタル体験を提供する必要がある」ということだ。幸いなことに、消費者は自身のニーズについて率直に話してくれる。そして、聞く側のオンラインでの行動がすべてを物語るのである。

 

※当記事は英国メディア「Mobile Marketing Magazine」の4/11公開の記事を翻訳・補足したものです。