FullStory(カスタマーエクスペリエンスに焦点を当てたウェブアプリケーションソリューションを提供する米国企業)のEMEA(欧州・中東・アフリカ)担当副社長であるAndrew Fairbank氏が、アプリ内体験に対する消費者の期待について考察を行い、ブランドがその期待に応えるためにデータがどのように役立つかを説明する。

 

消費者は、数年前からモバイルデバイスに傾倒している。たとえば、Guardian(英国の日刊紙)は、2014年に英国におけるモバイルでのオンラインショッピングがウェブを抜いたと報じている。ブランドは以前からモバイルの機会を認識していたが(モバイルデバイスをターゲットにした広告は、欧州のデジタル広告費の48%を占める現在の水準にまで成長した)、新型コロナウイルス感染症の流行がさらに大きな変革の原動力となって、機会を要件にまで高めた。

 

ロックダウンの間、人々は銀行や保険会社とのやり取りや買い物をオンラインに頼った。また、Apple PaySamsung PayPayPalといったモバイル決済の手軽さを再認識し、ロックダウン解除後もモバイルを使い続けることにさらなる魅力を感じた。

 

世界中の7,000人の消費者を対象とした「Global Digital Experience Trends 2023」の調査では、モバイルアプリ内のインタラクションを含む、国、業界、デバイスを超えたデジタル体験について、人々がどのように感じているかが明らかになった。たとえば、かつてデスクトップは取引に基づく体験における主たるチャネルであったが、今日の消費者はより大型のデバイスよりもモバイル体験を選択する傾向にあるという。51%がデスクトップやノートパソコンよりもモバイルでの取引を好むと回答しており、オランダでは63%と、よりその傾向が強い。

 

消費者はブランドロイヤリティを捨て、素晴らしい体験を求めている

消費者はモバイルデバイスを含め、ブランドとの対話について、新たな期待を明確に持っている。かつてはブランドへのロイヤルティが強かったが、今では優れたデジタル体験を求める傾向が顕著に。44%の消費者が、「動作しさえすれば」どこで買い物をするかは「気にしない」と回答した。これは、モバイルを中心とした市場に向かう兆候をいち早く察知し、アプリ開発に時間と予算を投じた企業にとって、素晴らしいニュースとなるだろう。

 

 

また、モバイルを後回しにしていた企業にとっても、(こうした動向を把握しておくことで)事態はより良いものになるかもしれない。ある重要なチャネルで期待はずれの体験をすると、同じ顧客と他のチャネルで接する機会までも失われる可能性が高いという。「可能性が高い」と述べたのは、FullStoryのデータによると、43%が「サイレント・クリティック(無言の批評者)」であり、オンライン上のドアから退出する理由についてフィードバックを与えないことが明らかになっているためだ。

 

不満の残る消費者体験の原因は何か?

一つには、怒りのクリックやタップがある。72%の消費者が、サイトやアプリがうまく動作しないときに怒りのクリックをすると認めている。65%の消費者が怒りの後に取る行動は購入の放棄であるため、そもそもフラストレーションの原因となるような欠陥のあるデジタル体験は、回避する方がはるかに望ましい。英国では、フラストレーションに対する許容度はさらに低く、70%が「立ち去る」と回答しているという。

 

 

消費者は、eコマースの世界では体験が重要であることを、間違いなく我々に語ってくれている。つまり、モバイル体験は優先されなければならない。「デジタルエクスペリエンスインテリジェンス(DXI)」は、このような環境において、体験を誤ることによるこうした手痛い落とし穴を回避するための手段として台頭してきたのである。

 

ブランドは、消費者の要求に応えるべくデータインサイトに目を向ける

ますますオンラインブランドで導入が進むDXIは、本質的には、消費者のアプリでの関わり方を通じて消費者の声に耳を傾け、不満をすばやく解決し、ニーズを先取りする方法である。1秒間に何百万ものイベントのデジタル体験全体を理解することで、消費者が好まない体験を生み出すための時間とコストを節約し、ブランドが好むものを提供することができるようになる。

 

モバイルアプリでは、クリエイターは多忙のためにアプリの体験を常時チェックできないことが多いが、彼らはUI(ユーザーインターフェイス)には期待外れの点がたくさんあることを理解している。DXIはトレンドを把握し、モバイル体験が壊れているときにはシグナルを表示してくれるのだ。このシグナルの例としては、消費者がアプリを操作しにくい、フォームにデータが入力されない、ボタンがクリックできないなどが考えられる。このような問題があることを知ることで、顧客が次のプロバイダーに乗りかえる前に、ブランドはデザインやコーディングの問題を修正することができる。

 

アプリ内体験の提供に成功している業界もある

国別の観点から見ると、オランダと英国では消費者の約3分の2がポジティブな体験に投票し、約3分の1が「デジタル体験が優れている」と評価している。

また、業界別では、小売業がモバイルアプリ内体験の改善に力を入れており、63%が小売業サイトでのポジティブな体験を挙げている。小売、食料品、金融の分野がモバイルアプリ内体験をリードしている一方で、ヘルスケアは大きな(改善の)チャンスに直面している。

 

 

しかし小売業にとっても、すべてがバラ色というわけではない。近時の世界的な物価上昇に伴い、消費者の49%がオンラインショッピングを控えていると回答しているのだ。これは、以下の各調査対象国でも同じようなことが起きている。

 

オーストラリア:消費者の52%

ドイツ:消費者の52%

英国:消費者の48%

米国:消費者の44%

オランダ:消費者の41%

 

では、我々はどうすればよいのだろうか?

 

モバイルデジタル体験の事実を直視する

世界経済の変化や業界、地域によって、モバイルカルチャーにはニュアンスの違いがあるだろう。しかし消費者は、明らかにモバイルデバイスでブランドと対話することを好んでいる。このことは、モバイルアプリに消費者が求める基本的な要素を、ブランドが見落とすわけにはいかないということを意味する。その基本的な要素は、以下の通り。

・シームレスな体験

・価値

・手軽な購入方法

 

消費者は、これらのすべての要素を提供しないブランドからは、何の説明もなしに離脱する用意が大いにあると回答。こうしたことから、ブランドが消費者を満足させて彼らのロイヤリティを確保していくうえで、データの重要なインサイトはますます大きな役割を果たしていくだろう。

 

レポート全文はこちらからお読みいただけます。

 

※当記事は英国メディア「Mobile Marketing Magazine」の3/28公開の記事を翻訳・補足したものです。