Advil(消炎鎮痛剤)やその他の消費者向けブランドを展開する同社は、パンデミックに合わせてソーシャルメディアへのアプローチを変えた。

ソーシャルメディアプラットフォームは、消費者が自分の生活に影響を与えるブランドについて話す重要な場である。そこで、英国のヘルスケア企業Haleonは、多くの一般用医薬品(OTC医薬品)のソーシャルメディアを担当する社内チームを結成した。

 

Haleonは、GSK(英国のヘルスケア企業)とPfizer(米国の製薬会社)が設立した、Advil(鎮痛消炎剤)やExcedrin(解熱鎮痛薬)、Robitussin(鎮咳薬)、Tums(胃腸薬)などの家庭用ブランドを扱うコンシューマー向け製品の合弁会社から昨年誕生した独立企業である。

 

同社は、ソーシャルメディアインテリジェンス、つまり、ブランドに対する顧客の声を理解し、そのインテリジェンスを活用してマーケティング活動を強化するためのツールや戦略である「ソーシャルインテリジェンス」を利用するための社内チームを結成した。

 

ソーシャルメディアインテリジェンスの定義

Haleonはまず、「ソーシャルメディアインテリジェンス」を定義する必要があった。ソーシャルインテリジェンスは、組織によって意味が異なる可能性があるため、各企業においてソーシャルインテリジェンスの運用から得られる目標とメリットを設定することが重要である。

 

「ソーシャルインテリジェンスとは、これらの異なるデータソースをすべて組み込み、このデータが実際に何をしようとしているのか、何を教えてくれるのかを理解しようとすることだ」と、Haleonの米国・北米ソーシャルインテリジェンス担当の分析マネージャーであるDanny Gardner氏はThe MarTech Conferenceで述べた。

 

Gardner氏のチームは、ソーシャルインテリジェンスを、ソーシャルメディアモニタリングとリスニングの高機能版と捉えている。ソーシャルインテリジェンスは、消費者がソーシャルプラットフォーム上で話しているさまざまなトピックを追跡するだけではなく、このデータからインサイトを引き出し、それをマーケティング活動に結びつけるものである。

 

「なぜ、企業はソーシャルインテリジェンスを必要とするのだろうか?」とGardner氏は問いかける。「その核心は、インサイトにある。我々はソーシャルインテリジェンスのデータに基づいて行動することで、社内のどのチームよりも早くインサイトを得ることができるのだ」。

 

ソーシャルインテリジェンスを収集するブランドは、自社製品だけでなく、競合他社に対する消費者の意見にもアクセスすることができる。また、マーケティングキャンペーンに関するフィードバックを得ることで、ターゲットとするオーディエンスについてより詳しく知ることもできる。

 

ソーシャルメディアインテリジェンスのもう一つの利点は、消費者が製品の購入場所についてどのように発言しているかを把握できることだ。Haleonは、顧客がAdvilをCostcoで購入するのか、それともオンラインショップで購入するのかを知ることで、同社のeコマース戦略の策定に役立てている。

 

消費者がソーシャル上でブランドについて否定的な発言をしている場合、それを知ることでブランドは危機管理戦略を実行することができるとGardner氏は述べる。

 

ソーシャルメディアインテリジェンスの4つのカテゴリー

ソーシャルメディアは広大な空間であり、それを賢く聴くには、データの明確なカテゴリーや「バケット」(データを格納する基本的なコンテナ)が必要だ。

画像提供:Haleon

Gardner氏のチームは、ソーシャルチャネルを通じて収集したいと考えていたデータについて、4つの主要なバケットを設定した。同チームは、自社のブランドポートフォリオ、競合ブランド、これらの製品の使用に関連する幅広いトピック、そして「マクロと文化」のトレンドに関連するソーシャルコンバージョンから情報を分析し、インサイトを得ようと考えた。

 

「社会には、いろいろなトレンドやさまざまな出来事があるが、消費者は当社のブランドよりもそれを気に掛けることが分かった。それは当然のことだ。そのため、数年前からこの作業を我々の業務に含めることにしたのだ」とGardner氏。

 

ソーシャルメディアの構築と拡大

Haleonは2022年に企業として設立されたばかりだが、ソーシャルインテリジェンスへのアプローチを含む同社のマーケティング戦略は、何年もかけて作られたものである。

 

以下は、同社がソーシャルインテリジェンスのツールと戦略を導入するために踏んだステップを、時系列で示したものだ。

画像提供:Haleon

「どのようなデータが利用可能か、どのようにデータを入手できるか、データマイニングはどのようなものか、どのようなベンダーが存在し、どのようなことに対応できるかといったことについて、大きな発見があった」とGardner氏は説明する。「実際、私が採用される数年前から、社内でソーシャルインテリジェンスの構築ができるかもしれない、と考えるようになったのだ」。

 

Haleonはまた、ソリューションを構築する場合と購入する場合の長所と短所を議論し、最終的にはMeltwater(オンラインメディア分析用ソフトウェアを提供する企業、本社:米国)が開発したソーシャルインテリジェンスツールスイートを採用することで落ち着いた。

 

パンデミック時のソーシャルメディアインテリジェンスの試験導入

Haleonがソーシャルメディアインテリジェンス機能の一部を試験的に導入する準備が整ったのと時を同じくして、世界が一変した。新型コロナウイルス感染症によるパンデミックが発生した最初の数年間、多くの消費者が商品購入や自己啓発のためにデジタルチャンネルの利用を増やしたのだ。

 

「我々は12か月間の試験運用を終えたが、トンネルの先にあったのは新型コロナウイルス感染症だった」とGardner氏は話す。「パンデミックによって、ソーシャルリスニングに対する需要と関心が加速し、当社が脚光を浴びるようになった。ソーシャルメディアは、消費者が答えを持っていない質問に対して、ある意味、頼りになる存在だったのだ」。

 

そして、「当時は、これがマクロトレンドの追跡機能を高めるきっかけとなったが、今では、当社のブランドについて、かなりうまく対応できることが分かった」と同氏は付け加える。

 

その結果、Haleonは、消費者が自社のブランドに対してどのように感じているかをより深く理解し、顧客にとって適切なやり方で、より大きな問題についての会話に参加できるようになった。

 

 

※当記事は米国メディア「MarTech」の3/7公開の記事を翻訳・補足したものです。