2020年より23%増加した2021年のモバイル広告費は、全世界で2,950億ドルに達し、記録を更新した。この傾向は2022年も続き、今年末には3,500億ドルに達すると予測されている。その理由は、私たちがモバイルフォンに費やす時間が長くなっているからである。実際、平均的な人が1日にモバイルに費やす時間は、4~5時間である。先月の時点で、アメリカでのウェブサイトへのアクセスのおよそ53%はモバイル機器からであるという。

 

モバイルショッピングが注目されることで、いくつかの業界、特にeコマース業界は改革を求められている。2021年のアプリストアの支出は、前年比18%増の1,700億ドルとなり、過去最高を更新した。この統計でわかることは、ほとんどの消費者は実店舗に出向いて買い物するよりも、アプリをダウンロードし、自宅でくつろぎながら買い物することを好むということだ。

 

一方、デバイス利用率に加え、モバイル広告費の急増により、残念なことにモバイル広告詐欺とよばれる犯罪行為の波が押し寄せている。モバイル広告のアトリビューション分析サービス企業AppsFlyerよると、2019年には企業の広告費の48億ドル以上が広告詐欺の被害を受けている。ますます一般的になるこの問題は、複数の業界、特に小売業のeコマース企業に影響を与えている。

 

モバイル広告詐欺とは何か、注意すべき様々なタイプの広告詐欺とはどのようなものか、また、オンライン店舗でモバイル広告詐欺が行われないようにするための3つ方法について詳しく説明しよう。

 

モバイル広告詐欺とは?

モバイル広告詐欺とは、金銭的利益や競争上の優位性を得るために、虚偽のインプレッションやフェイクアプリのインストールを利用して、モバイル上のデジタル広告主から金銭を搾取する行為のことだ。

詐欺師は、複数のタイプのモバイル広告から様々な方法を駆使してお金を巻き上げる。たとえば、ボットの使用、クリックインジェクション(クリックスパムの高度な形態の1つ)、クリックスパム、SDKスプーフィングなどである。

これらの手法により、悪質業者は虚偽のデータを使用して広告主の広告費を不当に得る。そして時には長期間にわたって発見されない場合もある。

 

複数タイプ存在するモバイル広告詐欺

モバイル広告詐欺にはいろいろなタイプがあるが、大きく2つに分類できる。それは、「アプリのインストールによるモバイル広告詐欺」と「モバイル端末でのユーザーとのインタラクションによるモバイル広告詐欺」だ。

 

アプリのインストールによるモバイル広告詐欺

SDKスプーフィング

SDKハッキングとしても知られている。アトリビューションプロバイダー(アプリ広告の効果を測定するツールを提供する企業)に対して、アプリのインストール、クリック、その他のインプレッションにシミュレートすることが必要となる。詐欺師はこのテクニックを使うことで、何千、何百万もの架空のインストールを発生させ、広告主の広告予算を消費させることができる。

 

クリックスパム

詐欺師は大量の偽のクリックまたは低品質なクリックをMMP(アプリ計測ツールを開発するモバイル測定パートナー)やアトリビューションツールに送信し、オーガニックインストールが発生するのを待つ。ユーザーがアプリをインストールすると、広告主に行くはずのアトリビューションが詐欺師の手に渡る。

 

モバイル機器でのユーザーインタラクションを介したモバイル広告詐欺

ピクセルスタッフィング

パブリッシャーが肉眼では見えない1×1ピクセルのサイズの領域に広告を掲載した場合に行われる詐欺だ。これらの広告はユーザーには見えないが、それでもインプレッションとしてカウントされてしまう。

 

クリックハイジャック

悪質な業者が、広告のクリックを別の広告にリダイレクトすることで発生する。ユーザーと広告の間の通信を傍受することで、広告へのクリックを盗んだり、ハイジャックしたり、他の広告に転送したりすることができる。

 

モバイル広告詐欺を防止する3つの方法

広告詐欺には様々な形態があり、悪質業者にお金を取られないようにするのは困難である。しかし、詐欺を防止する方法を学ぶことで、不正を早期に発見することができる。

 

IPブラックリストを作成する

特定のIPアドレスは、無効なクリックや偽のトラフィックソースによる広告詐欺の評判が高い。そこで、あなたの広告とのやり取りを発生させたくないIPアドレスのブラックリストを作成しておこう。また、新しくアップデートされたブラックリストと自分のリストを定期的に比較しよう。

 

ads.txtファイルを使用する

ドメインのなりすましやその他の形式の模倣の場合は、ads.txtファイルが便利である。このファイルは、あなたとSSP(広告枠を提供するメディア側のプラットフォーム)やDSP(広告主のプラットフォーム)、アドエクスチェンジ(広告枠をインプレッションベースで取引する広告取引市場)との間で、あなたの広告を再販する権限を誰が持っているかについて合意するためのものである。

 

検証済みのパブリッシャーと連携する

検証済みのパブリッシャーのウェブサイトに広告を掲載するには費用がかかる。しかし、低予算のパブリッシャーよりも、彼らは詐欺師からあなたの広告を保護し、保証してくれる可能性が高い。また、検証済みのパブリッシャーから取得するデータは歪曲されていないので安心できるだろう。

 

モバイル広告詐欺がビジネスに与える影響

モバイル広告詐欺による収益の損失は物語の一部に過ぎない。ブラックリストに掲載されることで、ブランドの評判は多大なダメージを受ける可能性がある。

 

広告インベントリを購入する際、企業はベンダーの過去および既存の記録を調査する。これは、ビューアビリティ(可視性)、ROI、安全性を確保するためだ。露骨な広告キャンペーンや安全でないコンテンツを扱う広告キャンペーンは、あなたの企業が関連づけたいと思うものではない。不適切な広告の報告により貴社がブラックリストに掲載されてしまった場合、貴社のブランドイメージと評判が危機にさらされる可能性がある。

 

広告詐欺の影響がすぐにわからないことはよくある。つまり、すでに被害が発生するまで気づかないのだ。その時点では、もはや損失が生じていて、eコマース事業が立ち行かなくなる可能性がある。また、ブラックリストに掲載された場合、ブランドの評判は低下し、修復に何年もかかる可能性がある。もちろん、その時はもう手遅れだ。

 

パブリッシャーと広告主は、モバイル広告詐欺がその業界にとって相当な脅威であることを認識する必要がある。消費者がスマートフォンで買い物をする機会が増えている今、このことを心に留めておくことが特に重要だ。モバイル広告詐欺をなくすために、両社が協力し合うのは、早ければ早いほど良いだろう。

 

モバイル広告詐欺に対する最善の防御は、ビジネスを保護するための予防策を講じることであることを覚えておいてほしい。

 

※当記事は米国メディア「E-Commers Times」の6/8公開の記事を翻訳・補足したものです。