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公開日2020/09/01

Cookieの消滅がもたらすデジタルマーケティングへの脅威

サードパーティCookieの廃止により、ターゲット広告に混乱が生じる可能性。マーケティング担当者はそれを阻止する決意だ。

 

「喫緊の課題は、(企業が持つ顧客データを元にユーザーを特定できる)アドレサブルメディアでのビジネスのあり方に大きな混乱が生じることだ。今こそ、デジタルマーケティングの経済モデルを継続するために適切なソリューションを考案する必要がある」。

 

ANA(全国広告主協会)のデータ・テクノロジー・計測プラクティ部門のEVPおよび、Partnership for Responsible Addressable Media部門のエグゼクティブ・ディレクターでもあるBill Tucker氏の言葉は、厳しい現実を示唆している。プライバシーを重視する傾向が高まり、一般ユーザーがターゲティング広告やメーケティングに関する脅威を抱くようになり、こうした懸念が生じているのだ。より具体的にいうと、サードパーティCookie(ユーザーが訪問したサイト上の広告のサーバーから発行されたCookie)に対する脅威によって、引き起こされているものである。

 

一部のブラウザ(Safari Mozilla Firefoxなど)では、すでにサードパーティCookieを廃止している。Googleが、2年以内(2021年末まで)にChromeでもこれらのCookieの利用を規制すると発表したことで、マーテック企業やアドテック企業、広告主、パブリッシャーからさまざまな反応が寄せられている。

 

明確にいえるのは、ファーストパーティCookie、つまり、それらのウェブサイトを訪問することを選択したユーザーに関する情報を収集するために使用されるCookieには影響はないということである。

 

 

サードパーティCookieが提供するエクスペリエンス

ユーザーエクスペリエンスにおいて、サードパーティCookieが担う役割は、極めて身近なものとなっている。例えば、自動車保険についてオンラインで調べたい時に、関連ウェブサイトにアクセスしたとしよう。その後数日間は、どのサイトにどのようなデバイスでアクセスしたとしても、自動車保険関連の広告が表示される。これらの広告は、訪問したウェブサイトではなく、サードパーティによって生成されたものであり、サードパーティCookieがブラウザに読み込まれたために、そうした広告が表示されるのだ。

 

MediaMathは、オムニチャネル・プログラマティック・プラットフォームとDSPのリーディングカンパニーであり、この分野の他のベンダーと同様、アドレサビリティ(ユーザーを特定しアクセスすること)に多大な投資をしている。今回は、製品担当SVPのAnudit Vikram氏にファーストCookieとサードパーティCookieの違いや、ターゲティング目的における後者の重要性について話を聞いた。

 

同氏は、ファーストパーティCookieが、利便性の高いウェブ体験に不可欠なものだと説明している。「ブラウザは、ユーザーがブラウザを使用している間は常に、ユーザーの行動を把握しているものだ。しかし、何らかの理由で使用を中断してしまうと、ユーザーが戻ってきた際に、ブラウザはそのユーザーが誰であるかを認識できなくなる」。つまり、ユーザーにファーストパーティCookieが設定されていなければ、そうした事態になるということである。例えば、購入したいものを見つけてカートに入れ、ウェブセッションを中断して後で戻ってきても、カートには以前入れた商品が入ったままになっているだろう。「こうした機能は、Cookieによって実現するのだ」とVikram氏は説明。「ユーザーとブラウザ間のエンゲージメントが、同じウェブサイト、アプリ、エンドポイントで行われる限り、CookieはファーストパーティCookieとみなされる」。ユーザーが頻繁に訪れるウェブサイトにおいて、個々のユーザーが認識されない場合と比較すると、明らかにより優れたユーザーエクスペリエンスを提供してくれているのだ。

 

「このコンセプトは、サードパーティCookieにまで拡張された」と Vikram氏は続ける。ユーザーにとって、例えば米国大手新聞社New York Timesのような出版社は、ファーストパーティの関係となるかもしれないが、同社はそのページに広告を表示する様々なサードパーティと提携している可能性がある。「私に言わせれば」とVikram氏。「それらのサードパーティは私の知らない誰かだ。ユーザーのブラウザにこれらのサードパーティCookieを設定することが許可されていて、Adobe(米国コンピュータ・ソフトウエア会社)やMediaMath、あるいはこのデジタルエコシステムの他のプレイヤーによってCookieが配置されている可能性がある。プライバシー擁護者が主張しているのは、Timesが持ち得る他者(本質的に情報をキャプチャし、自分達の利益のために私のデータを使用している)との下流の関係をユーザーはコントロールできないということだ」。

 

サードパーティCookieの利点とは

ユーザーにとって、見ず知らずのサードパーティが不正に個人の行動データを収集し、収益化することが、不利益になるのは明白かもしれない。しかし、この状況を別の視点から見ることもできる。

 

Vikram氏は次のように語った。「サードパーティCookieの存在と、それらの周囲にエコシステムを構築する能力があるからこそ、ウェブページのパーソナライゼーションやパーソナライズされた広告が可能となり、パブリッシャーがそのプロパティを収益化し、我々が消費するコンテンツを作成することが可能になる」。利用料を請求することなくコンテンツを収益化できるパブリッシャーは、ユーザーにとってメリットがある。例外はあるが、我々はオンラインで消費するコンテンツの多くに、直接料金支払うことはない。「我々は、個人データを提供することにより、支払いをしているのだ」とVikram氏は語る。

 

TrafficGuard(米国のソフトウエア・セキュリティ会社)の創設者およびCOOのLuke Taylor氏はこれに同意する。「我々広告業界は、なぜトラッキングをしているのか、そしてなぜこれが有益であるかをエンドユーザーに伝えるコミュニケーションを十分に行ってこなかった。ほとんどの消費者は、トラッキングがどう動作するかを全く理解しておらず、それ故に拒絶し、ブロックするのは当然のことであろう」。

 

TrafficGuardは、ブランド、代理店、広告主のための広告詐欺防止のプロバイダである。MediaMathとは異なり、同社は広告の提供はしてないものの、広告技術のエコシステムがどのように進歩しているかについて深い関心を持っている。Taylor氏は、サードパーティCookieが消滅し、それに代わるものが何もない世界をイメージしてこう語る。「キャンペーンを実行するブランドは、そのブランドに対する嫌悪感が生じるまで何度も広告を表示する意図はないのだ。それは彼らにとって良い結果をもたらさない。さて、あなたがある1つのサイトでサングラスを見ると、サングラスに対する興味が示されたとして、あなたは他のサイトでもサングラスの広告を見始めることになる。広告主は7~20インプレッションを表示しても、その後はさらなるインテント(意図)を確認できるまでしばらく待つだろう」。 それがターゲティングの世界の現状である。

 

「特定の誰かをターゲットにすることができない世界では」と続けるTaylor氏。「誰もがサングラスの広告を見ることになるだろう。今後5年間、毎日サングラス広告を1回は見ることになるかも知れない。それは、あなたが誰であるか、何を見たかを管理する、フリークエンクシーキャップ機能(同じ相手に何度も広告が流れないようにコントロールする機能)についてのクロスサイトビューがないためだ」。具体的には、広告に最も多くの支出をし、全ての人がオーディエンスと考えるブランドが出稿する “膨大な量の広告 “を見ることになるだろう、とTaylor氏。「ターゲット広告の世界において提供されるカスタマーエクスペリエンスは、はるかに優れている。ターゲティング広告のコンバージョン率が高いのは、興味がある広告が表示されているからである」。

 

一致団結する

サードパーティCookieの廃止が消費者にとって良いことであるかどうかは別として、ブランドや代理店、テックベンダー、広告主、パブリッシャーにとって大きな課題であることは明白だ。そのため彼らは、業界として一丸となってGoogleが提供する機会を活用するだろう。

 

「私たちは団結することにした 」とTucker氏は語る。「世界の最も主要なマーケターを代表するANA(全国広告主協会)とWFA(効果的で持続可能なマーケティングコミュニケーション推進組織)といった業界組織やパブリッシャー、代理店および代理店持株会社、テクノロジー業界が協力していく。私たちはブラウザと対話をしているのだ」とTucker氏は述べた。

 

広告収入に依存していることを考慮すると、広告業界で大混乱を引き起こすことはGoogleの利益にはほとんどならないだろう。(当然Facebookは、膨大な量のファーストパーティデータを使用して広告をターゲティングしている。) 「Googleは、彼らと協力できるよう、2年間の猶予を与えてくれた。我々の一部のワーキンググループでは、Googleのエキスパートを求めている。」とTucker氏は言う。ANAのPartnership for Responsible Addressable Media(主要な広告業界団体とグローバル広告業界のすべてのセクターを代表する企業が共同でカスタマーエクスペリエンスを向上させる取り組み)は、「法律と政策」、「ビジネスユースケース」、「コミュニケーションと教育」、そして「技術標準に取り組むIABのProject Rearc (消費者のプライバシーのバランスを取りながらデジタルマーケティングを再考・再構築する取り組み)tech lab」という4つのワーキンググループで構成される予定だ。

 

TrafficGuardは、Project Rearcに参加している。Taylor氏によれば、「これは、Cookieに代わる単一のユニバーサルIDを具体的に検討するのではなく、デジタルマーケティングスペースをどのように再構築するか、そして、現状の問題が生じた経緯に注目するものである。消費者が広告に不信感を抱くようになった問題点と、それをどのように上手く処理するかを検討している」。

 

しかしながら、この共同イニシアチブは、個々のベンダーによる商業的、競争的なイニシアチブと並行して行われることになる。つまり、Cookieを配置する以外の方法でサポートすることが可能なIDを開発するためであり、Cookie以外の不完全なアイデンティティではなく、永続的なアイデンティティを探すという点で共通する取り組みである。Tucker氏は、これら2つの取り組みが並行して実行されることに問題があると考えているのだろうか。

 

同氏は、いくつかのベンダーの名前を挙げながら「そのようには考えていない」と語った。「我々のグループの一員であるLiveRamp(米国のデータ接続プラットフォームを提供するSaaS企業)と、Neustar(マーケティング業界にリアルタイムの情報と分析を提供する米国テクノロジー企業)は、業界の取り組みに必ず参加するだろう。我々が最終的にアウトプットするものは、ブラウザに取り込むことが可能な標準となり、業界がアドレサブルな作業を行うこが可能となるだろう。プロバイダは、これらの標準をベースとし、独自のカスタマイズ可能なソリューションをそれらに適応させることができるようになる。我々は一つのソリューションを設定するのではなく、一つの共通の標準を設定するつもりだ」。

 

後編では、その中の2つのベンダーの取り組みについてみていく。

 

※当記事は英国メディア「Marketing Land」の8/18公開の記事を翻訳・補足したものです。

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