eコマース業界のM&Aを専門的に手掛ける Fortia Groupは、eコマース事業の売却を検討しているAmazonマーチャントの支援を行っている。同社は設立から1年で、7件の買収を成立させ、最高買収金額は1,600万ユーロを超えた。CEOのEmmett Kildff氏は、「2022年に30件の買収を成立させる予定だ」と話す。

 

Fortia Groupは、”eコマース業界でトップの投資銀行”を目指している。ダブリンに本社を置く同社は、評価額が100万ドルから1億ドル(90万から9,000万ユーロ)となるイグジット(創業者やベンチャーキャピタルが投資した資金を回収すること)について助言を行っている。同社は、2020年に始まり、急成長を遂げている新しいビジネスモデルであるAmazonアグリゲーターの波に乗っている。

 

年間売上は200万ユーロに迫る

Fortia Groupは、ちょうど1年前の2021年5月に事業を開始し、これまでに7件の買収案件が成立している。「買収の最高額は1,600万ユーロ以上、最低額は90万ユーロ強だった」と、CEOのEmmett Kilduff氏は話す。

 

「ペット関連ビジネスが割高に評価されている」

 

対象となる企業は、ベビー用品、ベッド、スポーツ、美容、サプリメントといった分野のAmazonセラーで、年間売上は200万ユーロに迫る。「ペット関連ビジネスも、現在評価が高いため、重要視している」。マーチャントは、主に米国と欧州の事業者だ。

 

Fortia Groupは買収前に、売り手にイグジットに至るまでの助言を行う。「そのプロセスは広範囲にわたる」とKilduff氏。「より困難な部分の一つは、在庫コストの検証であり、過去12か月間におけるサプライチェーンの諸経費の大幅増が事業にどのような影響を及ぼしているかということだ」。買収当事者のほとんどは、アグリゲーター、プライベート・エクイティ、企業や個人である。

 

 

Amazonアグリゲーターのトレンド

M&Aアドバイザーは、2020年に始まり、急成長を遂げている新しいビジネスモデルであるeコマースアグリゲーターのトレンドの一つである。これらのアグリゲーターは、オンライン販売業者を買収してビジネスを拡大させる。Marketplace Pulse(eコマースに特化した米国のビジネスインテリジェンス企業)によると、現在、世界中に99のAmazonアグリゲーターがあり、これまでに140億ユーロという巨額の資金を調達しているという。

 

「Amazonアグリゲーターは、これまでに140億ユーロを調達している」

 

急成長はバブル崩壊の懸念も引き起こす。例えば、数十億円を調達したことで有名なアグリゲーターのThrasioでは、従業員のレイオフが行われた。また、最近、いくつかのアグリゲーターの買収が鈍化している。

 

しかし、 Fortia GroupのCEOは、現時点では、資金はハードルではないと話す。「むしろ、最大のハードルは『時間』だ。買い手は毎週何十件もの案件を目にしている。我々は、買い手が投資機会をすぐに理解できるような形式で顧客データを提示して、デスク上にある他の案件よりも当社顧客の買収案件を一番に考えてもらえるようにしている」。

 

新たな投資部門

Fortia Groupに不安はないようだ。実際、同社は最近、eコマースアグリゲーターの株式取得のための新しい「投資シンジケート(協調融資)」を立ち上げた。最初の投資先は、美容用品を扱う「Founded Brands」という名前のAmazon買収企業である。

 

「その投資部門は、eコマースアグリゲーターの株式取得を目的としたものだ」

 

この新たな投資部門は、Fortia Groupが「eコマース業界でトップの投資銀行」となるための助けとなるはずだ。それでも「我々は、eコマースの起業家が成功裏に事業を売却するための支援を行うことに引き続き注力したい」と、Kilduff氏は話す。「現在、案件進行中の顧客とエンゲージメントレター(委任契約)段階の潜在顧客とで、2022年に30件の買収を成立させる予定だ」。

 

※当記事は英国メディア「Ecommerce News Europe」の5/23公開の記事を翻訳・補足したものです。