スペインに本社を置くモバイルアプリのマーケティングエージェンシー、Admiral Mediaの創業者であるAndre Kempe氏にNFT(非代替性トークン)のマーケティングアドバイスを聞いた

 

NFTは、絵画や収集品、さらには限定版のスニーカーのようなデジタルグッズであり、未来の所有権として注目されている。NFTは営利目的で取引・販売することができるが、デジタルでしか存在しない。英国における最近の判決では、NFTを法的財産として認めており、盗難が発生した場合には、盗まれた資産を凍結させるなど、被害者が自身を守るためのオプションが増えた。これは主流となるための新たな一歩であり、希少な靴や時計のような現実世界での物を所有することと等しくなる。

 

NFTはそのデジタルな性質により、物理的な物に対して、以下のような優位性がある。

 

・世界中で利用可能:NFTにトークン化した資産は、世界中で容易に、そして効率的に移動することができる。

・模造品や偽物がない:NFTは完全に唯一無二のアイテムであり、ブロックチェーンにより保護・認証されている。

・透明性:所有権は従来の芸術品よりも透明性があるため、誰でも自分のNFTをTwitterの認証済のプロフィール画像として公開することができる。

 

NFTの固有性によって、マーケティング上のさまざまな課題も発生している。eコマースや旅行アプリと同じ方法でNFT戦略にアプローチすればいいというわけではない。我々はこの新分野に取り組む中で、いくつかの大きな違いを見出した。

 

最近、NFTメーカーのAlphaSkullzは、Admiral MediaにNFTコレクションを発売するためのキャンペーンを依頼した。当社は潜在的なマーケティングチャネルを特定し、AlphaSkullzがピクセルやコンバージョンイベントなどのすべてのトラッキングを実装するべく支援した。

 

広告が始まると、すぐにTwitterが主要なチャネルであると認識した。これは世界的なキャンペーンであり、地域の選択は我々に一任されていた。このとき、我々は次の発売のリードの獲得を任され、NFTが発表されてから2週間で2,000を超えるウォレット接続の獲得に成功した。発売後には、AlphaSkullzがTwitter、Facebook、Instagram、Quora(Q&Aコミュニティサービス、本社:米国)、Reddit(掲示板型ソーシャルニュースサイト、本社:米国)、その他のチャネルでNFTを販売するためのコンバージョンキャンペーンを支援した。

 

ここでは、我々がNFTのマーケティングについて学んだことをご紹介したい。

 

その1. コミュニティの構築がすべて

何よりもまず、コミュニティの構築がすべてである。デジタルグッズ発売の成功には、その商品に気付き、興味を持っているオーディエンスが必要だ。

 

ブランドに既存のオーディエンスがいれば非常に簡単なことだが、それでも、ローンチが近づいていることを事前に伝えておく必要がある。ソーシャルメディアやコミュニケーションアプリDiscord(本社:米国)のようなチャネルでフォロワーを増やし、エンゲージメントを高め、世界的な規模でNFTの購入者に魅力的に見せるのだ。

 

初日で売り切れないNFTの作成は避けたい。だからこそ、認知度や期待感、FOMO(見逃すことへの不安や取り残されることへの不安)を作り出す必要がある。これはヒット志向の経済であり、製品に関する非常に活発なコミュニティの助けを借りた大々的な広告が必要であるが、これにより、コンテンツモデレーションやユーザーを飽きさせない工夫などの課題が発生する。

 

 

 AlphaSkullzのNFTキャンペーンのコミュニティ成長率

 

その2. まだ「多くの」教育が必要

NFTがニュースを賑わせているからといって、人々が、売られているものを理解し、購入方法を知っているとは限らない。NTFは、ウォレットの作成と接続、資金の配分など、まだ一筋縄ではいかない技術的な設定と知識が必要だ。発売までに多くの教育的コンテンツをリリースする準備を行い、NFTが市場に出たときにオーディエンスが購入できるようにしておくこと。

 

その3. 信頼を築く

NFT市場をうまくナビゲートするのは、非常に難しい場合がある。残念ながら、技術的な問題、詐欺師、その他の予期せぬ複雑な状況はよくあることだ。この分野は穏やかではなく、誰もが詐欺や不正行為に関する怖い話を耳にする。だからこそ、信頼できるパートナー、プラットフォーム、インフルエンサーと協力して、あなたとあなたのNFTが正当であることをコミュニティに示すことがより一層重要なのだ。

 

信頼構築の要素は、もちろん、DiscordやメッセージングアプリTelegram(本社:UAE、ドバイ)の一貫性のある活動、クリエイターへのアクセス性、潜在的なロードマップ、そしてNFTコレクションの背後にある大きなビジョンだ。

 

その4. ターゲット地域の特定

すべての設計面が、あらゆるオーディエンスにうまく機能するわけではない。NFTは世界的な現象だが、自社のオーディエンスにより適する地域があるはずだ。販売は匿名化されるため、設計面だけではなく、販売と収益を測定する方法も知っておく必要がある。購入者についての情報を得ることができないので、キャンペーンを真に理解し、いつ、どこに資金を投じるかを決定するには、ある程度の知識と業界の専門知識が必要になる。

 

その5. ターゲットとなるオーディエンスについて知る

NFTはまだマスマーケットではない。数十億ドルも投資したのは、ごく少数のユーザーであり、大がかりなマーケティングキャンペーンは成功につながらないということだ。友人に、ウォレットを持っているか、これまでにNFTを購入したことはあるか、尋ねてみてほしい。次に、あなたの日常的なテック領域の外部にいる人々について考えてみてほしい。Metamask(米国に本社を置くConsenSysが開発・運営するイーサリアムブロックチェーンに対応した仮想通貨ウォレット)が何であるかを知っている人は少ないだろう。マーケティングにおいては、適切なタイプのオーディエンスをターゲットにすることがいつも以上にずっと重要なのだ。

 

AlphaSkullzによるNFT発売のために行ったAdmiral Mediaキャンペーンの結果

ローンチ前のウォレット接続数 2週間で2,000以上

広告を打ったチャネル Twitter、Instagram、Facebook、Quora、Reddit、CoinTraffic

NFTの販売 2週間で3,333 ROAS 500%超え

 

まとめ

我々は、NFTコレクションのプロモーションを成功に導く戦略を考案し、クライアントのために高いROAS(広告の費用対効果)を生み出すことができた。1か月以内に、100万ドルを超える価値のあるNFTを100%売り切ることに成功した。適切な広告素材とともに地域とオーディエンスのターゲットを定め、TwitterとDiscordを最も効果的なチャネルとして活用することができた。

 

NFTは未来の所有権となるか、それとも一過性のブームとなるか。将来どうなるかはわからないが、NFTを立ち上げる際は、ブランドとしてのアプローチ方法を学び、確実な市場投入戦略を立てることが賢明であると考える。消費者は、NFTを受け入れる準備ができており、熱望しているのは明らかだ。10年前のモバイルアプリでも同じようなことがあった。確かにまだ早いのかもしれないが、ブランドがNFTを利用する機会はとても素晴らしいものであり、利用しない手はない。

 

※当記事は英国メディア「Mobile Marketing Magazine」の5/5公開の記事を翻訳・補足したものです。