国際的な専門サービス企業が1月4日に発表した調査レポートによると、ソーシャルメディア・プラットフォームでのショッピングは、従来のeコマース・プラットフォームの3倍のスピードで急成長しており、2025年までに全世界で1.2兆ドルに達する勢いだという。

 

Accenture(アイルランドに登記上の本拠を置く総合コンサルティング企業)は、ソーシャルコマースをユーザーがソーシャルメディア・プラットフォーム上で商品の発見から最終的な購入までのすべての体験を行うことができるショッピングと定義し、その成長の大部分(62%)はZ世代とミレニアル世代の買い物客が牽引していると報告している

 

「将来、我々は、ある所で商品を発見し情報を収集するために多くの時間を費やし、それからそこを離れて、購入手続きのために別の所に行かなければならなかったことを奇妙に感じるようになるだろう」と、AccentureのマネージングディレクターであるKevin Collins氏は述べる。

 

最初は若年層の買い物客で活気づくが、ソーシャルコマースの利用者層は時間とともに広がっていくだろうと同氏は予想する。

 

「多くのインターネットトレンドと同様、ソーシャルコマースも若い世代から始まると予想されるが、利用者層が若者に限定されることはないだろう」と、同氏は語る。

 

「今は、TikTokママ(TikTokを利用する母親)がいる。そして、X世代とベビーブーマー世代が去年からTikTokに加わって評判となり、このプラットフォームでとても面白いことを始めている」と同氏。

 

「ソーシャルコマースも同じ道をたどるだろう」と、同氏は続ける。

 

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インフルエンサーの影響力

ニュース、解説や分析を提供するウェブサイトNear Mediaの共同設立者であるGreg Sterling氏は、ソーシャルコマースは最終的にはすべての買い物客にとって主流になるかもしれないが、現時点では主に若い買い物客を引きつけているという見解に同意する。

 

「これは、ソーシャルコマースを推進するのはインフルエンサーであり、若年層や10代の若者がソーシャルメディアのインフルエンサーと関わりフォローする傾向が強いことに一因がある」と同氏。

 

また、同氏は、ソーシャルコマースの収益は今後も伸び続けると予想する。

 

「中国では、ソーシャルコマースの収益はすでに莫大な額となっている」と同氏は述べる。「欧米が中国に追随するというわけではないが、収益が大幅に伸びることを示す要因はいくつもある」。

 

「既存の従来型eコマース活動の一部がソーシャル・プラットフォームに移行する可能性もある」と、同氏は付け加える。

 

Gartner(IT分野を中心とした調査・助言を行う米国企業)のディレクター兼業界アナリストであるChelsea Gross氏は、ソーシャルコマースは過去数年間、漸進的な成長を見せており、エンドツーエンドでの取引機能の完成度が高まるにつれ、2桁台の成長が続くと予想されると指摘する。

 

「しかし、消費者はソーシャルメディア上で購入する際の重大な障壁として『信頼』を挙げている。プラットフォームは、マーチャンダイジング機能を改善し、決済の安全性を強調することでこれらの障壁を解決する必要がある」と、同氏は語る。

 

消費者の信頼の問題

こうした「信頼」に対する懸念は、Accentureのレポートにも記載されている。同レポートでは、調査対象となったソーシャルメディアユーザーの半数は、ソーシャルコマースでの購入が適切に保護されない、あるいは返金されないことを懸念しているとして、従来型のeコマースが始まった時と同様に、「信頼」が導入の最大の障壁になると指摘する。

 

「ソーシャルコマースをまだ利用していない人は、躊躇する理由として、ソーシャルセラーに対して信頼感を持てないことを理由に挙げている。一方で、ソーシャルコマースを積極的に利用するユーザーは、返品、返金や交換に関するポリシーが不十分であることを改善すべき点として指摘している」と、Accentureのグローバル消費財・サービス部門のリーダーである Oliver Wright氏はニュースリリースで述べている。

 

「『信頼』は乗り越えるのに時間がかかる問題だが、こうした分野に注力するセラーは市場シェアを拡大する上でより有利な立場に立つだろう」と、同氏は付け加える。

 

現在、「信頼」は、従来型のeコマース企業がソーシャルコマース企業よりも有利な立場にある分野の一つだと、Collins氏は主張する。

 

「消費者は、従来型のコマース企業がソーシャル企業よりもコマースの基本を適切に実行していることに大いに信頼を寄せている」と同氏。

 

「コマース企業には、取引をうまくナビゲートしてきた長い歴史がある」と、同氏は続ける。「ソーシャル企業は、取引をうまく実行できることをまだ証明できていない」。

 

広告詐欺

一部のソーシャル・プラットフォームにおける広告の質が、ソーシャルコマースに対する消費者の懐疑的な見方を助長している可能性があると、オレゴン州ベンドにあるアドバイザリーサービス企業Enderle Groupの社長兼主任アナリストのRob Enderle氏は指摘する。

 

「Facebookが広告主の品質管理を行わなかった結果、多くがプラットフォームで詐欺に遭い、結果としてそれらの広告をクリックすることが少なくなった」と同氏。

 

「特にFacebookでは、お金を支払ったにもかかわらず約束とはまったく違う商品が届いたり、何も届かないような詐欺広告があまりに多すぎる」と、同氏は続ける。「そうしたことが、これらのプラットフォームで購入しないように人々を教育していることになる」。

 

Sterling氏は、「信頼」の問題は複雑だが、ソーシャルコマースの成功には不可欠であると指摘する。

 

「いつくかのプラットフォームでは、他より大きな成功を収めることができるかもしれないが、重要なのは、ブランド、セラー、インフルエンサーであり、必ずしもプラットフォームではない」と同氏。

 

「InstagramやFacebookは、事業者としての信頼度が低いもしくはわずかである。ソーシャルメディアのインフルエンサーの信頼度の方が高いかもしれない。だからこそ、インフルエンサーは、商品の宣伝や販売において大成功する可能性がある」と、同氏は付け加える。

 

小規模事業者にとってのメリット

ソーシャルメディアは、消費者が新商品を発見する方法に劇的な影響を与え、商品発見のトップチャネルとして頻繁に挙げられているとGross氏は述べる。

 

「さらに、ソーシャルメディアは、マーケティング戦略における認知度形成の重要な要素として、インフルエンサーを生み出した」と同氏は付け加える。

 

Accentureによると、ソーシャルコマースにおける商品発見の効果は、中小企業やネット上であまり知られていないブランドにとっては恩恵になり得るという。

 

同社のレポートでは、ソーシャルコマースは大企業にとって大きなチャンスである一方、個人や小規模のブランドにもメリットがあると指摘する。

 

同社によると、調査対象となったソーシャルバイヤーの半数以上(59%)は、eコマースのウェブサイトで買い物をするよりも、ソーシャルコマースで中小企業を支援する可能性が高いと回答しているという。

 

さらに、63%が同じセラーから再購入する可能性が高いと回答しており、ソーシャルコマースがロイヤルティ構築とリピート購入の促進にメリットをもたらしていることを示しているという。

 

「ソーシャルコマースは、人々の創造力、工夫や能力によって推進される水平化をもたらす力である」とWright氏は述べる。「ソーシャルコマースは、小規模なブランドや個人に力を与え、大規模なブランドには、何百万もの個人からなるマーケットプレイスとの関連性を再評価させている」。

 

ソーシャルコマースは、従来型のeコマースに取って代わるだろうか。Collins氏はそうは考えていない。「これからは、従来型のコマースとソーシャルコマースの境界線が非常に曖昧になり、その比較は重要でなくなるだろう」と、同氏は語る。

 

※当記事は米国メディア「E-commerce Times」の1/5公開の記事を翻訳・補足したものです。