「ソーシャル・コマース」という言葉は、マーケターの間では長年トレンドであり続けているが、それが本当のところ何を意味するのかについては、多くの業界で混乱が生じている。ソーシャル・コマースの核心は、顧客をアドボケイト(自社ブランドや商品を熱狂的に支持し推奨してくれるファン)に変えることなのだ。

 

<参考>

一周回って再びトレンドとなっている今のソーシャルコマース

最新のソーシャルコマース事情と、それによって変化するブランドのオンライン販売方法

 

ソーシャル・コマースの意味は、その人によって様々に異なる。ある人は、ソーシャル・コマースを資本主義的な「インフルエンサー」マーケティングと同一視している。また、マーケターがソーシャルメディアプラットフォームを介して消費者に直接リーチするプロセスと考える人もいる。

 

実のところ、ソーシャル・コマース本来の最も強力な形態は、日常の口コミによって具現化されている。つまり、人々が家族や友人に自分の好きなものを薦め、その商品が購入されれば報酬が得られるソーシャルシェアリングだ。

 

マーケターは、前に述べた最初の2つのソーシャル・コマースに対してエネルギーと資金を投入しているが、最も影響力が大きいのは3番目のソーシャルシェアリングである。しかし、この戦術を活用することは、マーケターにとって最も困難であることが証明されている。

 

広告主にとっての成功

口コミマーケティングの力は、小売業者やブランドにとって「部屋の中の象(見て見ぬふりをする、タブーな話題)」のようなものだ。彼らは、個人によるレコメンデーション(おすすめ)よる影響力を理解している。しかし、どのようにして顧客のモチベーションを高め、報酬を与えれば大規模に口コミを広めてもらえるか途方に暮れている。

 

人々は、毎日何十億回も製品とサービスを直接薦め合い、これが年間のグローバルコマースを推定3兆ドル規模に押し上げているという。

 

個人的なレコメンデーションが、購入意思決定において最も強力な影響力をもつことは間違いない。Nielsen(米国のデータ・情報・市場測定会社)によると、消費者の84%は、製品やサービスに関する家族、同僚、友人からのレコメンデーションを、「完全に信頼する」、あるいは「やや信頼する」と答えており、レコメンデーションは信頼性の高い情報源となっている。

 

言い換えれば、インフルエンサーでなくても影響力を持っているということである。

 

消費者による口コミでのレコメンデーションは、マルチチャネルではあるものの、主に2つのフォーマットから成る。

 

  • 人々が製品へのリンクをシェアする。
  • または、メッセージ内のテキストで製品に言及する。

 

共有リンク

消費者が製品やサービスへのリンクをシェアする場合は、特定のアイテムに関するものがほとんどである。

 

商品または販売店の紹介

あるいは、消費者はリンクを貼る手順を省略し、単にメッセージの中で商品や販売者について言及する。

文脈に沿ったレコメンデーション

小売業者とブランドによる、個人によるレコメンデーション発信へのモチベーションを高め、それに報酬を与えようとする取り組みが不十分な理由は、次の2つの要因によるものだ。

 

  • 個人的なレコメンデーションは、その性質上、人々がコミュニケーションを取る多くの方法とチャネルにおいて、アドホック(その場限り)で断片化されてしまう。
  • 広告主が、個人的なレコメンデーションの最も強力な側面であるその真正性が損なわれることを恐れている。

 

この2つの問題に対処するプラットフォームが登場し、広告主は、真正性を損なうのではなくうまく利用したマルチチャネルプログラムを実行できるようになっている。

 

最も信頼性のあるレコメンデーションは、会話の内容に関連したもので、上記の例のように DM やテキストメッセージなど、1 対 1 のコミュニケーションで行われるものである。

 

当社の調査では、回答者の99%が、広告よりも友人や家族からのレコメンデーションを信頼しており、回答者の96%は、テキストを介して受け取った直接のレコメンデーションに基づいて携帯電話から購入したことがあるという。

 

広告主にとっての重要な課題は、 彼らが目立ちすぎることなく信頼性がある方法で文脈に沿って会話の中にはいっていくことを可能にする技術テクノロジーの欠如していることである。

 

ソーシャル・コマースのロイヤルティ・プログラムを成功させるための鍵

マーケターにとっての次の課題は、ソーシャル・コマースの未開発の可能性を、真の意味でどのようにして最大限に活用するかということだ。つまり、推薦者が、個人的なメッセージの中で愛用している製品、サービス、ブランドをさりげなく推奨する際に、文脈的かつ自然に推薦者のモチベーションを高め、報酬を与えるということである。

 

マーケターがデジタル口コミで自社製品を推薦してくれる人のモチベーションを高め、報酬を得ようとする場合、4つの原則が役立つ。

 

  1. 努力を要しない: 成功する取り組みや技術は、社会的な会話の中に自然に溶け込むものである。既存ユーザーの行動を利用して、推薦者に余計な手間をかけさせない。
  2. オムニチャネルで: デジタル口コミは、人々がチャットやアイデアを共有する場で生じるため、成功するプログラムと技術は、今消費者がいる場で提供されなければならない。つまり、すべてのプラットフォーム(モバイル、デスクトップ)と、すべてのコミュニケーションチャネル(テキスト、アプリ、ソーシャルメディアなど)で機能する必要がある。
  3. 控えめに: 人々の間で交わされる実際の会話を活用し、その会話の中に自然にかつ控えめに溶け込むことが重要である。
  4. 報酬を与える: ソーシャルシェアリングの正確なトラッキングとアトリビューションを実行することが不可欠である。その結果、推薦者が提案した商品が購入された場合には、推薦者が報酬を得ることができる。

 

ソーシャル・コマース主導のロイヤルティ・プログラムを成功させ、個人的なレコメンデーションによる3兆ドルの取引から利益を得るためには、ブランドは、プログラムがこれらの基準を満たしていることを確認する必要がある。

 

これらの重要な要素が揃うことで、プログラムは信憑性が高く感じられ、ブランドの成果につながる可能性が高まる。

 

お勧めをオーガニックに共有することで報酬を得るロイヤルティが高いアドボケイトに顧客を変えていくことに成功しているブランドにとって、口コミはもはや売上を増加させる不可解なソースではなくなっている。

 

※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の9/23公開の記事を翻訳・補足したものです。