マーケターの多くは、なんらかのメールプログラムを実行しているが、目的をもってメールを送信しているだろうか。この「既存のプッシュチャネル」を最大限に活かすための戦略として、英国に本社を置くメールマーケティングコンサルタント会社Holistic Email MarketingのCEOであるKath Pay氏が、顧客エンゲージメントを改善し、コンバージョンを向上させるメールのテスト方法について語った。

 

Pay氏の経験では、全てのマーケターがテストに十分な投資をしているわけではない。「テストをしているとしても、なぜテストしているのだろうか」と彼女は話す。「その答えが、実際に何かを学ぼうとする情熱からではなく、ただ単にやらなければならないと考えているからということもある。信じられないような成果とインサイトを生み出す情熱を持っているからではないのだ」。

 

真実をテストする

「メールは数少ないプッシュチャネルの一つであり、プッシュチャネルの元祖でもある」とPay氏。「そして、テストなどの特定の要素において、驚くほどのアドバンテージをもたらす」という。

 

さらに「同じことを何度も繰り返せば、同じ結果になるはずだ」とも。

 

メールは、コピーや他のコンテンツによって、顧客がブランドに求めるものを直接伝えることができる顧客中心のチャネルだ。メールマーケティングは、そこでのインタラクションが、例えば、アンケートに対する顧客の回答より、深いレベルの真実に触れるため、貴重な結果を生み出すだろう。

 

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Pay氏は「『アンケートの質問』には理想の自分として回答する傾向がある。つまり、そうであると思いたい自分、あるいはなりたい自分に向かって答えている」と語る。「必ずしも現状の自分について回答しているわけではない。だからこそ、アンケートから得た情報は話半分に聞かなければならない」。

 

顧客のメールに対する関わり方を確認する方が、はるかに効果的だ。「何をクリックしているか、何をクリックしないか、どのように行動するか、コンテンツやメールなどすべてにどのように関わっているかをモニターすることで、顧客が実際に考えている真実に迫ることができる」とPay氏は述べた。

 

データベースからメールへ

ウェブサイトはもちろんのこと、人々がブランドと関わることができるデジタルタッチポイントは数多くある。しかし、ブランドと関わる人の多くが、必ずしも顧客とは限らない。そうではなく、顧客はデータベースに登録されているのである。したがって、メールでアプローチするべきだ、とPay氏は語る。

 

「自社のデータベースが、ターゲットとすべき市場である」と、同氏は説明する。「データベースは新規購入者、新規登録者、関心を示した顧客で構成されている。また、2回目の購入者、お得意様、購入しなくなった顧客でも構成されている」。

 

さらに、「データベースは、テストで実際にターゲティングを試みることができる、さまざまなライフステージの集まりだ」と付け加えた。

 

A/Bテストとの相性は抜群

メールキャンペーンにおけるテストは、タイムリーに結果が得られ、費用対効果が高い。マーケターは、セグメント、ライフステージ、ペルソナでテストを実行することにより、顧客とのコミュニケーションをより戦略的にすることができる。

 

「メールキャンペーンでは、ランディングページやクリック課金型広告、ソーシャルメディア広告などにオーディエンスを誘導するための費用を支払わなくて良い」とPay氏。「オーディエンスは、どこかへ行く必要がなく、企業はそれに対して支払う必要はない」。

 

データベースに登録されている顧客は、ライフサイクルのある時点で、もしくは特別なセグメントの一部として存在しているので、メールでのテストはベストな結果が得られるよう科学的にアプローチする必要がある。

 

反復学習

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「テストしていることについて、すぐに成果を得ようとする傾向がある」とPay氏は説明した。「しかし、我々がやりたいことは、もう少し進んで『ホリスティック・テスト』と呼んでいる非常に科学的なテストを行うことだ」。

 

同氏は、さらに「テストでは、AがBよりも優れている点を確認するのが目的である。しかし、2つ目の目的は、顧客の長期的に変化するインサイトを得ることだ。そうすることで、繰り返し改善する機会がもたらされる」と述べた。

 

科学的でホリスティックなメールテストでさらなるインサイトを得ることで、マーケターはキャンペーンごとにメール戦略を改善し、インサイトの範囲を広げることができる。そして、顧客と関わりを持つ際に、これらのインサイトを他チャネルにも展開することができる。

 

仮説を検証

顧客へのメール内でさまざまな機能をテストする時、それぞれのメールでブランドが実際に学んでいることを確認する必要がある。そのために、しっかりした仮説を立てなければならない。Pay氏曰く、これがメールでテストすべき仮説「A」である。例えば、短い刺激的な件名が詳細な件名より高いエンゲージメントを獲得するかもしれない、と考えたとする。短い件名の方が効果的であることと証明できれば、今後のメールもそのフォーマットを採用すべきである。

 

また、結果が出たときに、その結果をもたらす他の要因を除外できるかを確認する必要がある。

 

「複数のテストを行うべきだ」と、Pay氏。「(結果が)単なる異常ではなく、天候や政治、世界や国で起こっていることによって、影響をうけていないかを確認したいからだ」。

 

結果を確認し、異常がないことを確認した後、調査結果に基づいて推奨事項を策定する。これらの推奨事項を今後のキャンペーンに適用し、前回の経験をもとにさらに学習してほしい。

 

個別のキャンペーンを超えて

さらに、メールのどの機能が、特定の顧客セグメントにおいて最も効果的かについての多くのインサイトを得られれば、それらをより広範囲な自動メールプログラムに反映させることもできる。

 

自動化キャンペーン A/Bテスト完了までのストリーム

一つの仮説だけを使用。

これらのストリームを恒久的に設定し、勝利のストリームができたら更新する。

 

「メールの自動化プログラムを設定する時は、2つのストリームを設定することを推奨したい」とPay氏は話す。「そしてこれらは恒久的なストリームだが、もちろん内容と仮説は変えていかなければならない」。

 

テスト可能なメールの要素には、メールの件名、メール内に記載されている特別なオファー、画像、その他のアセットなどがある。仮説の重要な部分は、実際に顧客を変えてしまうような、望ましい結果をもたらすリンクやテーマだ。マーケターは、テストしている特定の要因が「理由」で顧客が好意的に反応する、という仮説を立てる必要がある。

 

Pay氏は「(1つのキャンペーンの)メールの量だけでなく、時間にも基づいた成功する結果を収めたら、仮説を更新し、失敗したストリームを次の仮説をサポートする新しいストリームと置き換えていく」と語った。

 

これらの結果を追跡し、今後の仮説に組み込むことで、マーケターは顧客をより適切なセグメントに分割し、適切なライフサイクルステージに割り当て、より高いコンバージョンを得ることができる。

 

 

※当記事は米国メディア「MarTech」の9/17公開の記事を翻訳・補足したものです。