非接触型決済は、COVID-19パンデミック前でさえ、小売業界で最も顕著な変化の一つであった。

 

Forbes Technology Council(Forbesのテクノロジ関連エグゼクティブをメンバーとするコミュニティ)の投稿記事によると、世界の非接触型決済市場規模は、2020年の103億ドルから、今後5年間で180億ドルに達すると予測される。

 

商品購入や配送において、「すべて」を非接触型へという要望は、トレンドではない。人々が買い物をし、自宅で荷物を受け取る方法において、パラダイムシフトが起こっているのである。

 

小売業

かつては、非接触型取引は、レジでの支払いにおける便利な決済方法だった。クレジットカードをタップしたり、スマートデバイスをリーダーにかざして決済したりすることを望まない人はいないだろう。しかし、COVID-19の発生によって、非接触型決済は、利便性ではなく健康上の問題へと変化した。買い物客が、店員との物理的なやりとりを最小限に減らしたいと考えているからである。

 

現在、小売業者は、カーブサイドピックアップやローカル配送などを重視した新しい顧客サービスを導入している。消費者の欲求が、小売業運営方法を、根本から変化させている。

 

デジタル化におけるインサイトを提供するIncisivが2020年7月から8月にかけて実施した調査が、これを裏付けている。同調査結果によると、80%の買い物客が、今後6か月間にBOPIS(buy-online-pickup-in-store:オンライン購入商品の店頭ピックアップ)とカーブサイドピックアップサービスの増加を期待し、90%の買い物客が、店頭での買い物よりも宅配を希望しているという。

 

小売業者は、「すべて」が非接触型となる新しいサプライチェーン構築によって、自社顧客エクスペリエンスを一新する新しい方法を模索している。そこでは、人工知能(AI)とコンピュータビジョンテクノロジーが極めて有効な助けとなる。

 

多くの人がオンライン購入商品を取り出すために触ったであろう分厚い金属製の扉を開けなければならないロッカーは、もう存在しない。

 

ロッカーに代わるのは、AI、コンピュータビジョン、そして、ピックトゥライト技術を使用したスマートシェルフシステムである。同システムは、事業者と消費者にデジタルブレッドクラムを提供し、事業者による商品の追跡と管理を可能にする。

 

これは、かつて硬直していた小売店のフルフィルメントモデルに柔軟性をもたらす歓迎すべき変化であり、中小地元企業だけでなく、WalmartTargetBest Buy(家電量販店)、Urban Outfitters(ファッション小売)、Dick’s Sporting Goods(スポーツ用品小売)などの大規模小売店でも導入されている。これらのどの大規模小売店も、最近の業績発表において、BOPISを「ゲームチェンジャーである」と言及している。

 

実際、Adobe Analyticsよると、BOPISによって、2020年の感謝祭におけるオンライン売上高が、21.5%増の過去最高である51億ドルに押し上げられたという。効果的なBOPISフルフィルメントソリューションによって、安全、安心、かつ、迅速な商品受取りや返品が実現し、店舗体験を向上させることができる。

 

重要なのは、すべてのBOPISシステムが同じではなく、オムニチャネルのクリック&コレクト(オンライン購入商品を自宅以外の場所での商品受取)プログラムの導入を検討している小売業者は、その違いを知る必要があるということだ。小売業者がBOPISソリューションを選択する際に考慮すべきトップ3は、以下の通りである。

 

  1. 迅速な商品引取り:顧客が到着してから、購入商品の引取りまで2分未満にするべきである。スピードは財産であり、一般的には、顧客を購入商品受け取りまで2分以上待たせた場合、リピート客となることはないだろう。

 

  1. スケーラビリティ:優れたシステムは、小売業者の日常的なボリュームだけでなく、季節性のボリューム増加にも容易に対応できるように拡張することが可能である。BOPISシステムの拡張性が低い場合、特定の時点においてキャパシティ不足、または、オーバーキャパシティとなるだろう。

 

  1. 柔軟性:同じシステムで、様々なサイズのアイテムに対応し、かつ、ユーザーとスタッフが使いやすいものである必要がある。BOPISシステムは、ロッカーベースのアプローチの代わりに棚を利用する。そのため、サイズ上、保管スペースが制限されるロッカーとは対照的に、棚には商品を置くためのオープンスペースがあるため、本質的により柔軟性が向上する。これらの棚ベースのシステムは、店頭だけでなく、カーブサイドピックアップ、消費者自身による商品受取りにも使用することができる。

 

 

リート

同様の傾向は、大規模な集合住宅でも起きている。そこに住む住民はCOVID-19を恐れて配達員や施設管理者との接触を避けたいと考えている。また、自分宛ての配達物を受け取る際にも、非接触型のエクスペリエンスを望んでいる。

 

2022年までに、米国でのAmazonの配送物量が2倍以上の65億個になる可能性を考慮すると、配送物マネジメントは非常に重要である。金融機関グループMorgan Stanleyによると、2020年には、Amazonの配送物量は、UPSの50億個、FedExの34億個を上回ることとなる。

 

非接触型へのニーズは、新たなワクチンが登場したからといって消え去るようなトレンドではない。人々の生活の一部として、存在し続けるプロセスである。大規模住宅向け小包受取りへのニーズは、小売店での購入と同じ特徴がある。つまり、人との接触を極力減らしたい一方で、日々の生活に必要なアイテムは入手する必要があるということである。

 

リート(集合住宅や学生寮、オフィスビル、メールセンターのオーナー)の場合、宅配業者は、近距離通信(NFC)付きキーフォブを使用してスマート配送物ルームにアクセスし、パッケージラベルをスキャンして自動で宅配物を居住者に振り分けられるようになっている。

 

その後、パッケージは、スマート配送物ルームの中の棚に置かれ、小売店で使用されているのと同じコンピュータビジョン技術がすべてのアイテムをモニターして追跡する。パッケージを引き取るには、居住者は自分のQRコードをスキャンし、レーザーと音声による案内によってパッケージを受け取ることができる。

 

このようなスマート配送物ルームを、テナント向けに提供することで、非接触環境を提供できるだけでなく、強く望まれていたセキュリティ面も向上している。2020年に実施されたマーケットリサーチ会社であるC+R Research調査結果以下の通りである。

 

  • 米国人の43%が、宅配物盗難の被害に遭った経験がある。
  • 61%が、小包を盗まれたことがある人を知っていると回答。
  • 43%が小包盗難被害に遭った隣人を知っていると回答。
  • 盗難小包の平均被害金額は136ドル。

 

住民は、玄関先に監視カメラを設置したり、宅配ドライバーに荷物を隠すよう依頼したり、友人や親戚宛に配達物を送るなどの対策を講じて宅配物を盗難から守ろうとした。しかし、同じ2020年C+R Researchの調査では、住民が好む盗難防止策の第1位は、店舗での受け取りであることが示されている。今日の新型コロナウイルス流行状況を考えると、買い物客は、非接触型エクスペリエンスを提供する小売店での購入を増やしているだろう。

 

しかし、宅配物の盗難で損害を受けているのは、住民だけではない。企業の収益に深刻な影響を与えるため、小売店も同様である。また、C+Rリサーチは、盗難商品のリプレイスに平均109ドルのコストがかかると結論付けている。これには、盗難被害にあった商品にかかる全コストと、同じ注文を2回受けた場合と同額の送料と手数料が含まれている。そして、ビジネスを成長させるために費やすことができたはずなのに、1人の顧客へのサービス提供に追加で費やさなければならない時間コストも含まれることは言うまでもない。

 

 

結論

小売実店舗や自宅での荷物の受け取りに関しては、人との接触が多いインタラクションは、利便性を向上させるためにデジタル化されなければならない。販売員や配達員との対面でのやりとりは歓迎すべきエクスペリエンスであるが、今日では、その大部分を安全性の高いセルフサービスのオペレーションへと進化させる必要がある。

 

小売業者は、これを実現するために、既存の自社POS(Point-of-Sales)システムを一新する必要はなく、REITが、大きな面積を使用する必要もない。新しいBOPISとパッケージ管理基準を満たすために迅速に設定できる革新的でインテリジェントなソリューションが存在する。

 

「すべて」において非接触型エクスペリエンスを採用している小売企業は、より低コストでより多くのリピート客を獲得し、この指針を導入する REIT は、より満足度が高く、より長期間入居するテナントを見つけることができるだろう。

 

※当記事は米国メディア「E-commerce Times」の2/23公開の記事を翻訳・補足したものです。