インドのソーシャルスタートアップ、新型コロナウイルスとの戦いで成長の可能性があるのは食料品分野 | EC業界ニュース・まとめ・コラム「eコマースコンバージョンラボ」

EC業界で最も深く、鋭く、分かりやすいメディア「eコマースコンバージョンラボ」メルマガ登録はこちらから!業界の最新ニュースとトレンドをお届けします!

  • follow us in feedly
トレンド
公開日2020/05/14

インドのソーシャルスタートアップ、新型コロナウイルスとの戦いで成長の可能性があるのは食料品分野

  •  Meesho(フリマアプリを提供するインドのソーシャルコマースプラットフォーム企業)やShop101(オンラインショッピングアプリを提供するインドのソーシャルコマース企業)などのソーシャル eコマース企業では、従業員のレイオフ(解雇)が行われた。
  • Shop101、Shopmatic(シンガポールのeコマース企業)やMeeshoは、自社プラットフォームで食料品宅配を行っている。
  • ソーシャルeコマースプラットフォームには、エンゲージメントを維持するためのゲームとソーシャルコンテンツが追加された。

 

Sachin Bansal氏とBinny Bansal氏(ともにFlipkart の創設者)が Flipkart(インドの eコマース企業)を設立したとき、彼らは、Amazonのビジネスモデルをただ真似ていることが疑問視されていた。そして Flipkartの成功後、いくつかの新しい eコマースマーケットプレイスが登場したものの、それらはモデルに目新しい点や差別化するイノベーションもない「人まね」のスタートアップと見なされた。

 

もちろん、これらの企業の多くは事業撤退しており、eコマース自体は、マーケットプレイスから電子機器、ファッションブランド、化粧品、ランジェリーやメンズウェアなどのバーティカルeコマース(ある分野に特化したeコマース)へと変化してきている。そして、B2Bのeコマースも登場。これは、中小企業やサービスプロフェッショナル向けの調達ソリューションを提供しているものだ。そして、もっとも最近生まれた新しいものは、ソーシャルeコマースである。

 

投資家に人気のカテゴリーは、インド人が愛するWhatsAppとFacebookの要素とオンラインショッピングを組み合わせたものであるが、独特でパーソナルな味わいを持つものである。これは、関心の高い新たな注目の話題となり、大口投資といくつかの新規参入が見られた。だが、他のすべてのeコマースセグメントと同様、ソーシャルコマースは今起きているパンデミック渦では脇に追いやられている。ニッチなソーシャルサークルそのものの中で、ナノインフルエンサー(フォロワー数500~5,000人規模のインフルエンサー)を活用するソーシャルコマースモデルは必需品の提供には適していない。結局のところ、自分自身が自宅で品物不足に直面しているときには、誰も独立した食料品店にはなりたくないのである。

 

だが、食料品セクターの急上昇する需要に乗じる他のいくつかのスタートアップと同じように、Meesho、Shop101、Mall91(インドのeコマース企業)、ShopmaticやDealShare(インドのeコマース企業)などのソーシャルeコマースのスタートアップもこの分野に進出。顧客の関心を得て、収益を維持している。

 

しかしながら、BigBasket(インドのオンラインスーパー最大手)やGrofers(インドのオンラインスーパー)などにおける労働者の追加雇用とは全く対照的に、ソーシャルeコマースプレイヤーは、トッププレイヤーの何社かが従業員をレイオフ(解雇)し、会社全体での給与削減を発表しなければならなかったために、厳しい目を向けられてきた。

 

ソーシャル eコマースが給与削減やレイオフをリード

ソーシャルコマースプラットフォームのBulBul(インドのライブストリーミングプラットフォーム)は、300名いるスタッフのうち100名の従業員をレイオフした。情報筋によると、特に在庫管理と苦情処理のチーム等でレイオフが行われ、配達部門は現在のところ保留中であるとのこと。さらに、同社は、他の従業員に対し10%の給与削減を導入し、創設者は100%の給与削減、さらに、上級管理職を対象とした3分の1の給与削減を実施した。BulBulのCEO Sachin Bhatia氏は、給与削減を認めたが、従業員のレイオフは否定した。

 

同様に、Meeshoは約200名の従業員をレイオフした。会社の主要部門アカウントマネージャーの約40%、すべてのビジネスリレーションシップマネージャー、そしてビジネス開発チームの約30-40%が解雇された。

 

別のソーシャルコマースのスタートアップであるShop101は、全従業員の約40%に退職を、残る社員に対しては給与削減を求めているとのこと。同社は4月3日、グループ通話を通じて従業員に通知した。

 

Shop101内部のある情報筋によると、400〜500名いる全従業員のうち、さまざまなチームにいる約200名の従業員が退職するように求められているという。また、コールセンターの業務に携わっていた100名近い契約社員を解雇したとのこと。

 

Glowroad(インドのソーシャル販売プラットフォーム)については、ユーザーの活動レベルが50%から60%減少し、注文は1日あたり平均5万件からわずか5千件にまで減少しているという。既に受けている注文は、ロックダウンが終了するまで処理されないとのことだ。

 

収益が停滞していることを考えると、こうした各社の措置は驚くべきことではない。しかしソーシャルコマース企業は、遂行中の業務においてでさえ、配送プロセスを妨げる物流の問題に直面している。物流が常にソーシャルコマースのオペレーション上の課題であったことを考えると、これは新しい問題ではない。実際、AmazonやFlipkartのような巨大なマーケットプレイスでさえ、ハイパーローカルな(超地域密着型の)配送には、助けを求めていた。よって、サプライチェーンの制約は、食料品へのソーシャルコマースのピボットにとって障害となっているのだ。

 

Glowroadの共同創設者であるKunal Sinha氏は、Ninjacart(インドの生鮮食品サプライチェーン企業)との提携を検討する段階においても、他の会社(Meesho)と同様、配送に課題があると知り、提携の道に進まなかったと語った。

 

なお、NinjacartのCEO Thirukumaran Nagarajan氏からは、まだ回答が来ていない。

 

Shopmaticについては、チーフマーケティング責任者のShenaz Bapooji氏は、インドではパンデミックのさなかでも、デイリーの数値が上昇していると語った。いくつかの新しいビジネスが参入している一方で、既存のビジネスにおいても継続的な需要があるとのこと。サプライチェーンの制約についてShopmaticは、顧客はロックダウンを考慮に入れ、遅延に対する心づもりができているように見え、遅滞している注文はロックダウンが解除されたときに履行されると述べた。

同社はまた、自社のビジネスモデルにおいては、小売業者は既存の配送パートナーか、自分で対処するかを選択できると付け加えた。さらにBapooji氏は、現在、必需品のカテゴリーが注文数を押し上げていると語った。

 

Mall91の成長について、共同創設者兼CEOのNitin Raj Gupta氏は、毎日新規ユーザーが5万人増加していると語る。ただし、同社が3月25日から新規注文を受け付けていないため、これは主にアプリで共有されているソーシャルコンテンツによるものである。

同氏は、販売を中止しているためソーシャルエンゲージメントが目立ってきていると説明。彼は、Mall91プラットフォームは高いエンゲージメントとバイラル(情報が口コミでじわじわ広がるさま)を基盤として構築されているため、同社はソーシャルコンテンツやゲームなどに関するユースケースを強化したと主張している。

「ユーザーがコマースを使用していなかったなら、これらすべてをもっと良い方法で使用し始めただろう」と付け加えた。

 

唯一の好調分野「食料品」で事業を進める

ソーシャルeコマースポータルのMeeshoは、食料品宅配分野に参入。必需品を販売する小売業者のリーチを拡大し、継続的なサプライチェーンを確保している。

 

同様に、Shop101は、同社のアプリ上で食料品を2〜4日以内で販売店から配達すると宣伝している。さまざまなブランドのデリバリーサービスは、ビジネスの運営を維持し、またはビジネスをよりよく機能させる上で、重要な役割を果たしている。

 

Mall91やDealShareプラットフォーム上にある必需品のさまざまなカテゴリーにおける配達期間の傾向は、同様に2〜4日の範囲であった。Mall91のGupta氏は、同社は当初、食料品販売におけるテストを試みたが、その課題を検討し、以降は中止したと語っている。

 

新規参入者にとって、供給の確保はより大きな課題であると思われる。特に、家族経営の小規模店舗は、以前からふらりと立ち寄る顧客が多いからだ。

しかし、Meesho、ShopmaticやShop101などのプレイヤーにとって、より重要な課題は、ユーザーが、小売りネットワークで食料品を注文するのに、BigBasketやGrofersなどの食料品専門プラットフォームを選択したり、Dunzo(インドのハイパーローカルデリバリー企業)やSwiggy Genie(インドのフードデリバリープラットフォーム大手)を通じて近くのキラナストア(インドにある小規模な個人商店)からの宅配を選ばず、小売りネットワークで食料品を注文する理由は何か、ということである。ソーシャルコマースプラットフォームは、答えを有していない。

 

食料品以外で成長している別のセクターとして、ゲームとデジタルメディアが挙げられる。一部のソーシャルコマースプラットフォームでは、エンゲージメントを高く保つために、Bubble Wrap(緩衝材(プチプチ)をタッチして弾けさせて遊ぶゲーム)、Ludo(戦略系ボードゲーム)などのゲームやクイズがすでに追加されている。このことは、ソーシャルコマース企業が、単にうまくいきそうなことをやっているだけではないかという問題を提起している。

 

Gupta氏は、プレイヤーたちはできることをやっているだけであるが、これは一時的な転換であると強調する。彼は、ソーシャルコマース企業がロックダウンの期間中、ユーザーを熱中させ続けないと、同じユーザーにプラットフォームに戻ってもらうのが困難になるからだと説明した。

 

ソーシャルコマースはパンデミックを生き延びるだろうか?

一つのモデルとして、ソーシャルコマースは、インドの大都市圏以外の都市にいる中間所得層と低所得層にのみ焦点を当て、ノンブランドのアパレル、食料品や地元の手工芸品を販売している。

スタートアップは、消費者がより得する取引をし、友人や家族からに商品をすすめ購入を促すことで、お金を稼ぐことができると強調している。Facebookの投稿とWhatsAppメッセージで売り上げをあげるソーシャルコマース企業は、最も古い広告形態である「口コミ」に依存している。簡単に言えば、人は、知人や信頼できる人から勧められると、何かを買う可能性が高くなるということだ。

 

しかし、Tier 2/3/4(人口400万人未満の都市)の市場にフォーカスするソーシャルコマースプラットフォームは、同市場に注力しつつある大手eコマースマーケットプレイスの支配と戦っている。さらに、ソーシャルコマース会社がユーザーの注意を引くことができたとしても、配達日、オンライン決済やユーザー定着率が次の課題となるのだ。

 

インド初のeコマース企業 Indiaplaza(2013年に営業停止)の創設者であり、インドのeコマースの父として知られているK Vaitheeswaran氏は、「顧客の気持ちは変わるため、ソーシャルコマースは、皆が思うほど成功することは決してない」と述べた。「買い物ではお金を使って何かを買う必要があるが、ソーシャルは無料コンテンツの消費に関するものだ。これら二つを組み合わせるのは簡単なことではなく、困難な移行である」と付け加える。

 

彼は、世界を変えるような新型コロナウイルス後では、消費者の行動も変化し、それゆえソーシャルコマースで何が起こるかは、この先の12~18ヶ月で見えてくるだろうと述べた。

 

Mall91のGupta氏は、パンデミックがまさに淘汰の時期であると考えており、ソーシャルeコマース市場でユーザーの獲得にまだ 600〜700インドルピー(約845〜990円)を費やしている企業は、存続の危機に直面するだろうと述べている。彼は、ソーシャルコマースの基本は、ユーザー獲得にかかる支出を減らすことであり、これができなければ、ビジネスモデルに問題があると強調した。

その対極で、強力なファンダメンタルズでもって、ソーシャルコマースセクターを推進する企業が存続し、このセグメントを成長させるだろう。また、Gupta氏は、それらの企業は、近い将来、ソーシャルeコマースのクラスター(集団)やバーティカルに重点を置いて作り上げられるだろうと語った。

 

※当記事はインドメディア「Inc42」の4/24公開の記事を翻訳・補足したものです。

close