落とし穴を避けるため、時間をかけてキャンペーンをテストし、適切なオーディエンスの規模はどの程度なのかを見極めよ。

 

誰もが、Facebook広告がいかに素晴らしいかについて語りたがる。その数十億人のユーザー基盤や、最先端の広告プラットフォーム、詳細なターゲティングオプション、そして豊富なケーススタディのリストの存在により、Facebookはまさに「オンラインマーケティングを実行すべき場所」として捉えられがちである。

 

しかし、全てが輝いて見える一方で、厳しい現実も存在する。というのも、ほとんどとは言わないが、多くのビジネスにおいて、Facebook広告から望ましい成果を得ることは容易なことではないからだ。

 

Facebookが広告の場としてふさわしくないということではない。Facebook広告からは素晴らしい成果を得ることができる。問題なのは、Facebook広告が、その評判ほど簡単でシンプルなものではないということである。

 

急いで行動に移してしまうため、多くの企業は、キャンペーン開始前に、それを台無しにするような重大なミスを犯してしまう。最近では、Facebook広告は非常に競争が激しいものとなっている。時間をかけて正しく実行しなければ、多くの予算を費やしたにもかかわらず、そのリターンはないに等しくなる。

 

Facobook広告で悪戦苦闘している事業者向けに、キャンペーンを失敗に導く可能性のある5つの問題を紹介していこう。

 

1.キャンペーンのテストを怠る

Facebook広告は簡単に始められる。実際、あまりにも簡単なために、知らぬ間に広告出稿費の支払いが発生していることさえ起こり得る。

 

Facebookは、全体的なキャンペーン作成プロセスが非常にシンプルで直感的なため、「プラグアンドプレイ(接続すると自動的に認識や設定が行われ、直ちに利用できること)」広告のように感じられる。アカウントを設定し、広告を出稿し、獲得するリードと売上を確認すればいい。

 

残念ながら、この一連のプロセスはやや欺瞞的である。キャンペーンを設定するのは確かに「簡単」ではあるが、戦略を練り、メッセージング、ターゲティングを正確に実行するためには多くの労力を要する。はじめから大きな成果が得られると思っていると、のちに落胆することになるだろう。

 

何が効果的な方法かを知る唯一の方法は、全てをテストすることだ。それは、確かに多くの作業を要する。しかし、Facebookでは、実際に自社のキャンペーンの種々多用な側面のスプリップテスト(インターネットマーケティングにおいて、最適なものを選択するために実際にテストしてその効果を検証すること)を非常に容易に実行できる。

 

 

クリエイティブからプレースメントに至るまで、自社キャンペーンのあらゆる構成要素が、収益性と持続性に影響を及ぼしている。クリエイティブテスト(どのような表現が最も魅力的でオーディエンスから高い反応を得られるかを検証すること)によって、オーディエンスと、彼らがどのメッセージングに対して反応するかを知ることができる。そして、最適化されたクリエイティブを使用して配信、オーディエンス、プレースメントを改善することが可能となるのだ。

 

しかし、これら全ては、能動的且つ定期的なスプリットテストを実施している場合にのみ、成し得ることである。

 

あまりにも多くの場合、広告主は、ほぼ推測に基づいてキャンペーンを実行し、Facebookアルゴリズムによって目標とする売上を得られると思い込んでいる。そして広告主は、利益をあげた後に、テストを実行してキャンペーンを最適化し、より良い成果を追求するのだ。

 

残念なことに、そうした方法で成果を出せることは滅多にない。効果的なFacebook広告は、念密に計画され計算されたテスト戦略の結果といえる。はじめから、何が成功するかをテストしていなければ、Facebook広告をビジネスにとって効果的に活用する方法を見出すことは不可能なのだ。

 

2. 不明瞭な価値提案

ここまで述べてきた通り、何が自社のオーディエンスからの好意的な反応を得られるのかを正確に予測することは困難だ。広告を成功させるためには、メッセージングや広告デザインを完璧にする必要がある。

残念ながら、多くの企業は「なぜ」顧客がコンバージョンに至るかを理解していない。彼らは、自社の価値提案を理解していると思いがちだが、実際には、それは「顧客にとっての」価値ではなく、企業にとって価値あるものにフォーカスしているのである。

さらに悪いことに、価値提案を正しく理解していたとしても、効果的にオーディエンスに伝える方法を見出すことが難しい場合がある。

例として以下の広告を見てみよう。

 

 

この広告コピーは明瞭で説得力があるが、非常に紛らわしい画像によって見劣りしている。デザインの観点から見ると、写真は美しいものの、この商品が何なのか、または何をするものなのかについて伝えられていない。キッチン用品関連の何かである、ということがわかるだけである。

コピーから、再利用可能なシリコンバッグを販売していることはわかるが、この画像では、そのバッグが何で、どういった目的で使用されているのかが分かりづらい。結果的に、オーディエンスがこの広告に魅力を感じ、クリックし、コンバージョンに繋げるのは難しいということになる。

 

表面的には、この広告は素晴らしいものに見える。専門的にデザインされており、パンチの効いた広告コピーである。多くの企業は、このような広告を出稿することを誇りに思うだろう。しかしながら、価値提案が不明瞭なため、この広告はコンバージョンにつながるものではなく、人々を困惑させてしまっているのだ。

 

そのため、広告クリエイティブをテストするのと同様に、何が、自社の核となる真の価値提案であるかを確実に理解しなければならない。それから、広告を作成する際にはいつも一歩下がって「価値提案は明確か?自社について何も知らない人が、この広告から何を理解するのか?」と自問自答することだ。自分で出した答えに納得できないのであれば、ふりだしに戻ろう。

 

3. 少数のオーディエンスをターゲットにする

Facebook広告では、非常に高レベルの詳細なターゲティングが可能である。一人暮らしで、間もなく誕生日を迎えるボディビルダーをターゲットにしたければ、そのようなターゲティングが問題なく実行できるのだ。

 

 

原則として、マーケティングは具体的であればあるほど効果的である。そして、ターゲットオーディエンスを絞り込めれば、それだけ、マーケティングを具体的に実行しやすくなる。

 

結果として、Facebookのターゲティングオプションは、Facebook広告を理想的なマーケティングプラットフォームにしてくれるように思われる。これだけ詳細な情報を収集できれば、キャンペーンが失敗に終わることはまずないように感じるだろう。

 

しかしながら、過度に具体的なターゲティングを行うことには問題がある。Facebook広告は、主に「認知を獲得する」ためのプラットフォームである。食事の場所探しや、車の修理やトイレットペーパーを購入するためにFacebookを利用する人はそう多くはないのだ。

 

この点が、マーケティングおいて何を意味するのか?ターゲティングがいかに具体的でも、その広告に反応するのは少数の割合のオーディエンスのみだ。アッパーファネル向けの広告を扱う場合には、オーディエンスの数が全てであり、オーディエンスがあまりにもニッチだと、オーディエンス数では勝算がないのだ。

 

これは特に、最初にFacebook広告を始める場合には当てはまる。未知の要素が沢山ある中で、オーディエンスを過度に具体的に絞った場合、特にメッセージングをテストする際には、意図せずにキャンペーンの効果を損ねることになりかねない。

 

経験上、オーディエンスが100万人未満では、単純にターゲティングが狭すぎる。メッセージングがしっかりと定義されていれば、100万から1,000万人のオーディエンスでも問題ない。しかし、クリエイティブを精査している過程であれば、500万から1,000万人以上のオーディエンスをターゲットとするのが得策といえる。

 

4. 短期的な成果を重視する

多くの広告主が、Facebook広告はダイレクトレスポンスのマーケティングチャネルであると考えている。人々は広告を見て、クリックし、コンバートする。これは、特定のビジネス(特に衝動買いを狙いとしたeコマース事業)には当てはまるかもしれないが、ほどんどの企業にとって、物事はそう単純ではないのだ。

前セクションで述べたように、Facebookは非常に低インテント(意図・目的が低いオーディエンス向け)のマーケティングチャネルなのである。

そのため、キャンペーンを実行する際には、Facebook上で自社の広告を初めて見て、クリックやコンバートする人は、ほぼ誰もいないということを前提とする必要があるのだ。彼らは、その企業のビジネスと提供する商品を発見した段階であり、コンバートに至るには検討する時間が必要なのである。

それを念頭に置き、オーディエンスが今いる段階に応じた広告を制作する必要がある。オーディエンスが、初めて自社の広告を目にした時点で強引にコンバージョンにつなげるのではなく、自社の設定するファネルの段階を踏み、まずは親しみやすさを構築し、丁寧に説得する多様な広告を作成するのがいいだろう。

 

例として、次の広告を見てみよう。

こちらの広告は、極めて高ファネル向けである。会社紹介と、販売商品とその理由関する少しのインサイトを提供し、見る人が自社のサイトをチェックすることを奨励している。それは売り上げに繋がるかもしれないが、それよりは人々の興味をそそる可能性が高い。

 

次の広告と比較してみてほしい。

 

この広告がTruff(トリュフソースのオンライン販売)ブランドにすでに精通している人々向けに作成されているのは明確だ。オーディエンスに自社ビジネスのアイデンティティーやストーリーを理解してもらおうとするのではなく、以前に出向した広告に対して反応が良かった人に実際に購入してもらうことを目的としているのだ。

 

こうしたマルチレイヤー戦略は、単純な「今すぐに購入」を目的とした戦略よりも、長期的にはより良い結果をもたらす傾向がある。認知を促し関心を持ってもらうため、長期的な戦略に焦点を当てていれば、総じて良い方向に向かうものだ。Facebook広告も例外ではない。

 

結論

Facebook広告のインターフェースはシンプルで直感的だが、Facebookキャンペーンから望ましい成果を得るには、多くの労力が必要になる。そのため、たとえ企業にとってFacebookが最適なプラットフォームであっても、多くの企業はFacebook広告に苦戦しているのだ。

 

今回の記事で述べてきた問題点は、非常に一般的なものだが、それらは比較的簡単に解決できる。やらなければならないのは、キャンペーンをテストするために必要な時間と労力を投入し、自社の価値提案を効果的に伝える方法を見出し、ターゲットとする適切な規模のオーディエンスを見つけ出し、長期的な成果を上げることに集中することだ。

 

Facebook広告が簡単に効果を出せるものと期待しているのであれば、きっと落胆することになるだろう。事実、それこそがこの記事を読んでいる理由だろうと思う。しかし、Facebook広告を「一度解いてしまえば素晴らしい結果が得られるパズル」と思って見てみれば、成功への道が開けだろう。

 

※当記事は、米国メディア「Marketing Land」の4/14公開の記事を翻訳・補足したものです。