Amazonで効果的に価格を設定するためには、ボリュームと利益率の観点からスポンサープロダクトとスポンサーブランドの検索キーワードを十分に理解する必要がある。

Jeff Bezos(Amazonの共同創設者でありCEO)が10年前に、「広告は、目立たない製品を取り扱うために払う対価だ」と皮肉を言ったのは有名だ。このロジックは、今日のAmazonに関して言えば、Amazonで販売されている見栄えのいい”ふるい”がすくうことができる水の量程度にしかあてはまらなくなっている。2019年のAmazonは、市場シェアの伸びを維持し押し上げるという点に関しては、ほぼ「定額課金制の有料」プラットフォームであると言えるだろう。Amazonセラーは、こうした現実があるがゆえに、Amazonプラットフォームでの広告支出にコミットする必要がある。しかしそれだけでなく、収益性を維持しながら市場シェアを獲得するためには、予想されるコンバージョン率(ウェブサイトの訪問者のうち、そのサイトで商品を購入した率を示す指標)と検索ボリュームに基づいて、広告を同プラットフォームに出稿する必要があるだろう。

 

現状に至るまで

Amazonセラーにとってのこうした現状は、二つの要因によるものである。まず、Amazonで最も人気のある検索キーワード全体において、特定のキーワードにおける総コンバージョン数に対するシェアを獲得するためには、概して、検索ページに表示される検索結果の上位にランキングされるかどうかが非常に重要となるという点だ。これは以前より言われてきたことだが、Amazonのブランド分析データを見ると、その重要性は今や非常に明瞭である。8月の1ヶ月間、Amazonの上位100万件の検索キーワードにおいて、上位3件のオーガニック検索(検索結果画面に表示されるURLリストのうち、リスティング広告のような広告枠を含まない部分)結果が、平均で62%のコンバージョン率を獲得したのだ。

 

この動きと連動して、Amazon検索ページでの広告の普及が加速している。Amazonのほぼすべての製品カテゴリの、人気のあるほとんどの検索キーワードにわたって、いくつかのスポンサープロダクトのリスティング広告がファーストビュー(アバブ・ザ・フォールド)に表示され、ページの上部にスポンサーブランドのプレースメントも配されている。ユーザー行動の代わりとしてオーガニックに生じるコンバージョンが検索ページに占める割合を用いると、これら上位の有料プレースメントは、コンバージョン全体においてかなりのシェア獲得している。

 

 

とはいえ、Amazonでのユーザー行動に関していえば、すべてのカテゴリが同じように作られているわけではない。例を挙げると、ケチャップ2本をオンラインで購入する場合と、ズボン一着を購入する場合の選択肢の数、そして、買い物にかかる時間について考えてみるとよい。これらの違いは、Teikametrics(米国のソフトウェア企業)における研究基礎データで裏付けられている。

 

Amazonにおけるカテゴリ別の広告の違い

このカテゴリ固有のAmazon広告の現状を把握するために、2019年8月中にAmazonで検索された上位100万件の検索クエリで、検索結果の最初のページに表示された有料リスティングとオーガニックリスティングを調べた。この分析に用いた検索結果データは、2019年8月の最終週に取得されたもので、カテゴリのセグメンテーションは、その検索でサイドバーにリストアップされたAmazonのトップカテゴリーに基づいている。

 

ここでは上位100万件の検索キーワードに含まれるクエリの数に従って、上位20件の物理的な商品カテゴリに注目した。それから、スポンサーブランドのプレースメントに加えて、有料広告とオーガニック検索の両方をあわせた上位10件の検索結果に含まれる広告数を期間ごとに調査し、0から100のインデックスで表した。「100%」と分類されたカテゴリは、上位10件の検索結果に表示される広告数が最も多く、他のインデックス値は、その最大値に対するパーセンテージで示している。

 

Amazon Brand Analyticsによって示されているように、カテゴリで分析した各キーワードの平均上位3件のオーガニックコンバージョン率と、基礎となる検索結果ページにおけるすべての製品の平均価格もコンテキストとして出した。この分析は、Amazonの検索結果ページの上部に表示される広告数に関する、カテゴリごとの差異を明確に示している。

 

趣味とより関連のあるカテゴリ、特に「アウトドアレクリエーション」や「芸術、工芸、縫製」、「自動車」といったカテゴリは、トップ10のキーワードで広告数が最も多かった。これはおそらく、一般的にブランドアフィニティ(ブランドに対する愛着)がこれらのカテゴリでの購入の主な要因であること、そして、カテゴリ全体で多くのプレーヤーがコストをかけていることが理由だと考えられる。たとえば、毎回Coleman(コールマン)やNorth Face(ノースフェイス)といったキャンプ用品を購入している人をあなたは知っているだろう。ブランドにとっては、このような買い物客を引き付け、自社ブランドを知ってもらうことで、より幅広く関連商品を続けて購入してもらうことができるのだ。

 

検索結果トップ10で広告の割合が比較的低いカテゴリは、深く熟考し、多くの付属品を伴うカテゴリとなった。これらには、「おもちゃとゲーム」や「コンピューターと付属品」、「ベビー用品」が含まれる。各カテゴリでは、消費者は幅広い基準(子どもの年齢、色の好み、コードの長さなど)に基づいて、自身のニーズに「ぴったりと合う」ものを探している。この場合、彼らのニーズが特定のブランドに対するこだわりよりも重要視され、一般的にはあまりブランドにとらわれない傾向である。

 

ファッションカテゴリは、広告の比率が比較的高い点と、スポンサーブランドの比率がより低い点の両方で突出している。どちらもAmazonで競争の激しいマーケットプレイスであるが、消費者が上位の検索結果からコンバージョンに至る可能性が低いとう事実があるために、上位のプレースメントの価値が低くなる可能性があるようだ。また、これらのカテゴリには、スポンサーブランドのプレースメントを購入できないリセラー(再販売業者)が非常に多数存在する。

 

異なる傾向として、「美容とパーソナルケア」と「オフィス用品」の両カテゴリでは、トップ3のコンバージョン率は比較的高いが、上位10件の検索結果の広告割合は比較的低い。これは、これらのカテゴリの製品の利益率がより低いため、ブランドが広告に多額の予算をかけることができないという可能性がある。しかし同様に、同カテゴリのブランドにとって採算が取れるのであれば、より多くのコンバージョンを達成するチャンスがあるともいえるだろう。

 

次のステップ

この分析はAmazonでのある瞬間をとらえたものであるが、マーケターは、第4四半期以降の戦略を設定する際に、これを自身の目指す目標と直接的に関連すると見るべきであろう。

 

スポンサープロダクト及びスポンサーブランド広告は、Amazonの特定のカテゴリに、特に集中している。それらのマーケットのセラーである場合、ボリュームと利益率の双方の観点から、どの検索キーワードをターゲットにすべきかを十分に理解し、効果的に入札額設定ができるようにする必要がある。「魔法のキーワード」の罠(検索上位に表示させるためにやみくもに多くの検索キーワード設定に資金をかけてしまうこと)に陥らないように。詳細な情報に基づいた意思決定を行うのに十分なデータが得られたら、第4四半期のようなトラフィックが増加する期間中は特に、ターゲティングするキーワードのリストを絞り込み、予算を再配分し、より小規模でより効果の得られるサブセットをターゲットとして入札額を調整するとよいだろう。

 

逆に、最も高いコンバージョン率が広告掲載率を上回っている数少ないカテゴリでは、マーケターは、これを非効率だと見なすべきである。というのも、こうしたカテゴリでは、販売商品のスポンサープロダクト広告がCPC(クリック単価)ベースで高額にならずに検索ページで上位にランクインするよう、関連性が高くて人気がある検索キーワードを見つけやすいからである。

 

※当記事は米国メディア「Marketing Land」の10/11公開の記事を翻訳・補足したものです。