最新データおよびパフォーマンス向上と、コンバージョン増加のためのハウツー・アドバイス

今年の初め、Facebookはマーケターにとって残念なニュースを発表した。ニュースフィードのアルゴリズム変更により、企業のオーガニックリーチは公式に排除され、苦労して獲得した既存オーディエンスへのリーチが難しくなってしまったのだ。

 

そして、マーケターは、失ったリーチを取り戻すためにSEM(検索エンジンマーケティング)に目を向けるだろう。しかし問題は、既にSEMでの競争は激化していることだ。どうすれば不要な情報を除外し、PPC(pay per click/クリック課金型広告)の成果を生み出すことができるのか?そして、成果を測定するために、どのKPI(主要パフォーマンス指標)をトラッキングする必要があるか?

 

コンバージョン率(CVR)の最適化は、AdWords(Googleが広告主向けに提供する広告出稿サービス)の効率を向上させる最も手っ取り早い方法の1つである。ターゲットとするキーワードやキャンペーン、予算を拡大することなく、新しいアプローチをテストし、ROI(return on investment/投資収益率)の増加を達成できるからだ。

 

ここでは、2018年以降に、PPCによってより多くのコンバージョンとさらなる成果を生み出すためのアプローチ法を紹介する。

 

 

1. キーワードの品質スコアの最適化 

Googleのビジネスモデル全体は、検索ユーザーに関連性の高い検索結果を提供することができるかどうかにかかっている。これはAdWordsと同様に、オーガニック検索結果にも言えることである。

 

的確な検索結果表示のために、Googleはターゲットキーワードに品質スコア(Quality Score/広告やキーワード、ランディングページの品質を表す指標)をつける。品質スコアはCPC(クリック単価)入札単価と併せて、広告ランクを決定する。

 

品質スコアを決定する要素は、次の3つである。

  1. 広告の関連性(企業の提供する広告コピーとキーワードの関連性)
  2. ランディングページ・エクスペリエンスの品質
  3. 推定CTR(クリックスルー率)

 

多くのPPC専門家は、品質スコアを決定する際に最も重要な要素はCTRであると考えているので、品質スコアを最適化する場合はCTRから始めるべきだ。

まず、キャンペーンのキーワード関連性を分析し、広告コピーがキーワードの検索意図と合致しているか確認する必要がある。

キーワードごとに、個別の広告グループを作成することが望ましい。これは、シングルキーワード広告グループとも呼ばれ、不特定多数のユーザーグループではなく、特定ユーザーの検索意図に応えることができる。

 

下記の例(ConversionXL提供)では、英国の小売業者であるASDA社が、「womens red dresses(レディースの赤いドレス)」という検索タームに合致した広告コピーを使用する唯一の広告主となっている。

 

 

関連性と同様に、広告コピーではユーザーに対し、「クリック」するメリットを訴求すべきだ。言い換えれば、なぜ検索ユーザーが広告に注目すべきなのかを強調する必要がある。関連性が高い見出しを作成し、オーディエンスの欲求とペインポイントに注視しなければならない。

 

CTRと品質スコアを最適化することで、より質の高いトラフィックを生成する。そして質の高いトラフィックによって、コンバージョン率が向上する。

 

CTRの次は、ランディングページを最適化する必要がある。動的テキスト置き換え機能(DTR)を用いることにより、即座にある程度の効果出すことができる。この置き換え機能は、ユーザーが企業のページを検索する際に使用したキーワードに基づいてランディングページの特定のコピーを書き換える。DTRは品質スコアを向上させることができ、CVRの向上に役立つのだ。

 

 

2.インテリジェント・リマーケティング

AdWordsの広告出稿の場合、高い直帰率は避けることができない。カスタマージャーニーのさまざまな段階のユーザーがランディングページにアクセスしているからである。例えば、多種のソリューションを検討中の検索ユーザーに対しては、デモへ誘導するCTA(行動喚起)は機能しない。

このように直帰したユーザーに対しては、クロスセルやダウンセルといったリマーケティング手法を活用すべきだ。上記の例で、さらに詳しく説明しよう。購買ファレルの認知段階にあるユーザーに対して、ソフトウェアのデモを提供しても、効果的ではない。認知段階のユーザーは、疑問に対する回答を求めているからだ。

したがって、見込み客が抱える特定の課題に対する解決法を教える電子書籍を紹介することは、適切なダウンセルと言える。自社の製品がどのようにプロセスを改善するかを伝えつつ、ユーザーが利用可能なオプションを提示することができるのだ。

 

 

もちろん、ペルソナや顧客セグメントによって、ユーザーが抱える課題は異なる。したがって、広告クリエイティブを必要に応じてパーソナライズする必要がある。

 

上記のような手法で、リターゲティングを行うことにより、失っていたはずのリード情報を獲得し、キャンペーンのCVRとROIを高めることが可能だ。ここで、多くのマーケターが犯す間違いは、再度デモンストレーションを勧めてしまうことである。ユーザーを無理やり、購買ファネルの下位に引き込もうとするのではなく、上位ファネルのユーザーを教育し、さらなる価値を付加するチャンスと捉えるべきだ。

 

失った見込み客の関心を再獲得するためのリマーケティング広告に、活用できるヒントをいくつか紹介する。

 

  • 異なるリードマグネット(リード獲得広告)をテストする:ペルソナと顧客タイプによって、反応するメディア媒体は異なるので、電子書籍とオンラインセミナーを提供するリマーケティング広告のスピリットテストを実施する。そして、最も高いコンバージョンを生み出すリマーケティング広告を調査し、そのフォーマットを倍加する。
  • ネームドロップインフルエンサー:業界で有名なインフルエンサーと提携している場合は、リマーケティング広告への活用を検討すべきだ。インフルエンサーとの提携は、他のどんな手法よりも信頼性を高めることができる。
  • ダイナミックターゲティング:様々なオーディエンスセグメントに合った特定の広告を配信。詳細は後述。

 

リマーケティングのポイントは逃したユーザーを再度獲得し、顧客を維持することだ。全ユーザーに対し、同じメッセージを配信すれば、そのチャンスを無駄にしてしまう。購買ファネルの上位から下位のそれぞれのユーザーに、さらなる価値を提供する方法を探すべきだ。

 

 

3.機械学習の力の活用 

AIと機械学習を活用することで、即効性があり、効果の高いマーケティングを実現できる。AdWordsに関して言えば、AIと機械学習により、人間がリアルタイムで処理不可能な大量のデータを用いて、自動入札と予算管理を実現している。

機械学習が、PPCパフォーマンスに与える影響を正確に把握するために、自社のAcquisio Turingプラットフォームを使用して32,858件の有料アカウントを分析し、事実を解明した。コンバージョンと機械学習について判明したことは、次の通りである。

 

  1. コンバージョン数増加の平均値は、71%
  2. コンバージョン数増加の中央値は、22%

 

ランディングページの品質問題は別として、平均値と中央値が大きく違う要因は、特定のアカウントでコンバージョン数が大幅に増加していることである。その結果、平均値が大幅に影響を受けている。極端な増加を示したアカウント事例を議論から除外したい場合は、50パーセンタイルでのコンバージョン増加率である中央値を確認すればいい。

さらに興味深いことに、コンバージョン数は増加しているが、CPA(コンバージョン1件あたりにかかった広告費用を示す値)は全体的に低下しているという点だ。実際、CPAの中央値は18%減少し、全体の64%のグループにおいて、CPAが減少した。

上記レポートでは、機械学習によるコンバージョンの増加に焦点を当てている。しかし、最近我々(Acquisio)が実施した調査では、5万件のキャンペーンを対象に、機械学習を導入しているケースと導入していないケースの業界別CVRを調査し、Google AdWords Industry Benchmarksを決定した。ビジネスカテゴリ別に分類されたCVRの結果は、次のとおりである。

 

 

機械学習の導入の有無と業種別CVR

 

 

機械学習を利用したマーテックは、PPCマーケティング担当者が効率的にマーケティング活動を測定、最適化するのに役立だけでなく、コンバージョン向上のための重大な要素となり得る。

 

実際、機械学習テクノロジーは、学習すればするほど、賢くなる。言い換えれば、機械学習アルゴリズムが新しい発見に反応する度に、より適切な結果が導き出されるようになる。詳細については、「マーケターのための機械学習のフィールドガイド」を参照。

 

 

4.新しい広告表示オプションのテスト

ノイズを除外し、できるだけ多くのSERP(検索エンジンの結果表示ページ)の領域を獲得する必要がある。そのためには、関心を引くクリエイティブだけではなく、広告の表示スペースを拡大するべきだ。

 

広告表示スペースを拡大する際には、企業の成果の高いキャンペーンにおいて、異なる広告表示オプションをテストすることが望ましい。Googleは広告表示オプションについて「広告に情報を追加し表示スペースを拡大することにより、ユーザーが広告主の商品やサービスを選択すべき根拠をより多く提供できる」と謳っている。通常のケースでは、広告表示オプションを設定することにより、広告のクリックスルー率は数パーセント上昇する。

 

提供されている数種の広告表示オプションフォーマット:

 

  • サイトリンク表示オプション:広告主のウェブサイト内で特定の関連ページへのリンクを表示
  • コールアウト表示オプション:「在庫わずか」「無料配送」などの提供サービス情報を表示
  • 構造化スニペット表示オプション:特定の要素を強調。たとえば、「イタリアンビーガンレザーブーツ」を販売している場合は、靴のサイズのリストを追加表示することが可能
  • 住所表示オプション:広告コピーに店舗や会社の住所と電話番号を追加

 

よく知られていることだが、モバイルユーザーの行動は、デスクトップユーザーとは大きく異なる。実際のところは、2017年第3四半期のPPCのクリック数の61.9%は、スマートフォンからであった。

そこで、Googleは、スマートフォンからのPPCクリック数増加に対応し、下記のモバイルデバイス対象の広告表示オプションを追加した。

 

  • メッセージ表示オプション:ユーザーがSERPから、広告主に直接SMSメッセージを送信可能。
  • 電話番号表示オプション:ユーザーは広告コピー内で表示されている電話番号に直接ダイヤルすることが可能。

 

 

例のごとく、広告表示オプションの設定についても、まずは小規模なテストを実施し、その後に、効果が高いオプションを全キャンペーンに適用すべきである。また、カスタマージャーニーや顧客意図を常に考慮しなければいけない。ユーザーが1つの検索ワードで複数の検索結果を期待している場合は、サイトリンク表示オプションの設定を検討すべきだ。また、ユーザーが携帯電話で小売店舗を探しているのであれば、モバイル向け広告表示オプションを追加すべきである。

 

 

5.  購入意向の強いユーザー層を対象とする高度なセグメンテーション

Facebook広告は高度なターゲティングが可能なため、マーケティング担当者に人気が高い。しかし、多くのマーケターがAdWordsも同様の機能を有していることを、未だに認識していない。

 

Googleは、ユーザーの膨大なデータを収集している。そして、マーケター自身に活用してもらうためにGoogleがそのデータを提供するのは時間の問題だった。

 

そこで登場したのが、「購入意向の強いユーザー層」カテゴリである。ディスプレイ広告のターゲティング設定で「購買意向度の強いユーザー層」を利用すれば、ユーザーの行動やオンラインで関心を示したコンテンツに基づいてターゲティングすることが可能だ。

 

「購入意向の強いユーザー層」で利用可能なデータは、不動産、旅行、電気通信など、いくつかのマーケットカテゴリに分類されている。そして、具体的な興味や企業名といった詳細レベルで、ターゲティングを設定可能。

 

 

「購入意向の強いユーザー層」カテゴリは、どのような仕組みなのだろうか?Googleによると、閲覧したサイト、最後の訪問日時、クリックした関連広告、コンバージョンなどのデータを全て考慮し、ユーザーを意図的に分類している。

そのため、ディスプレイネットワークに限定されるが、関心を示したユーザーに高度に特定化した広告を配信することが可能だ。ペルソナセグメントから製品カテゴリまで、多様なオプションが提供されている。

 

※当記事は米国メディア「Marketing Land」の3/12公開の記事を翻訳・補足したものです。