博報堂買物研究所は、この情報が氾濫する時代において生活者がどのようなチャネルを好んで利用し、どのような買物体験を求めているのかについて、25種のチャネルを対象に調査し、結果を分析した

 

「チャネル別買物体験調査」分析結果の要点を見ていくと2点の特徴が浮き彫りとなった。

1つ目は、利用したいチャネルとして、増加傾向にあるのがリアル店舗系のサービスではなくECサービスということだ。利用意向では、今回の調査で取り上げたECチャネルのうち、「テナント型ECサイト」や「マーケットプレイス型ECサイト」を筆頭にECの勢いを感じさせる結果となった。また、「食品スーパー」や「ドラックストア」などのリアル店舗もTop10の上位を占めておりECが注目されていても引き続きリアル店舗の人気は衰えていないことがわかる。

 

2つ目は「楽しめる」チャネルはEC、「選べる」チャネルはリアル店舗が優位にあるという点だ。利用意向Top10に入ったチャネルを利用する際に、利用者は何を感じているのかを分析したところ、「楽しめる」「選べる」の2つのグループに別れた。

「楽しめる」チャネルにはECサイトや動画・音楽の定額制配信サービスなどが含まれる。しかし、ECは買物の効率化が重視されると思いきや、「利用・購入する際にワクワクできる仕掛けがある」「この売り場の情報に発見や驚きを感じる」「いる(見る)だけで楽しい」「ここで商品(サービス)を選ぶことが好き・楽しい」というチャネルでの楽しさ、驚き、発見のある体験が評価されていた。一方で、「選べる」チャネルには食品スーパーやドラッグストアなどが含まれており、「直感的に選びやすい」「深く検討せず、前向きにこれでいいと納得している商品(サービス)がある」「ここで商品(サービス)を選ぶのは、大した手間ではない」など、情報過剰時代にリアルなチャネルに行けば、欲しいモノを直感的に選べる点が評価されているようだ。

 

また、利用意向Top10のチャネルの買物体験をコレスポンデンス分析を用いて分析、解釈した結果、大きく2種類の体験に分類できた。
ECチャネルのみに構成された「楽しめる」チャネルのグループでは、「利用・購入する際にワクワクできる仕掛けがある」、「この売り場の情報に発見や驚きを感じる」、「いる(見る)だけで楽しいと感じる」、「ここで商品(サービス)を選ぶことが好き・楽しい」という評価を獲得。一方、リアル店舗を中心とした「選べる」チャネルのグループでは、「直感的に選びやすい」、「深く検討せず、前向きにこれでいいと納得している商品(サービス)がある」、「ここで商品(サービス)を選ぶのは、大した手間ではない」というように評価されている。

 

「身の回りの情報が多すぎる」と感じている生活者は約7割で、その一方「買物の際に、たくさんの情報があるほうが安心」と考える生活者も約7割存在している。そして、この双方の意識を同時に持つ生活者は全体の約半数を占めている。「情報は多すぎるけど、情報は欲しい」。「楽しめる」チャネル、「選べる」チャネルを求める生活者の動機にはこのジレンマがあるのではないだろうか。

ECを中心とした「楽しめる」チャネルでは、その場にアクセスしたり、行くだけで得られる楽しさ、驚き、発見とともに商品・サービスと出会い「買いたい」という気持ちを高ぶらせることができる。リアル店舗を中心とした「選べる」チャネルでは、編集された分かりやすいチャネルづくりによって、欲しいモノを直感的に「選べる」という確信を得ることができる。

 

生活者はそれぞれの買物体験を通じて、適切な情報を得つつも情報過剰のストレスを回避し、自分にとっての「心地よい買物」を実現しているのではないだろうか。情報過剰時代、買物における情報ストレスを軽減し、生活者のここちよい意思決定を後押しする仕掛けはますます求められるようになるだろう。