英国の市場調査会社Kantarの新しいレポートによると、固定概念で人々を描写しているつもりはないというマーケティング担当者に対し、ターゲティング広告の統計では異なる結論が出ているという。

 Kantarが行なった国際的調査の詳細レポートによると、マーケティング担当者の女性の76%、男性の88%が、「広告制作時にジェンダーに固定概念を持たないようにしている」という。しかし、ベビー用品や洗濯用品、家庭用洗剤などの製品カテゴリでは、女性がターゲットオーディンスの98%を占めており、依然としてターゲティング設定の偏りが顕著だ。

 

なぜ気にする必要があるのか

2019年1月28日(月)にKantarからリリースされた「Getting Gender Right」(登録無料)によると、「広告のジェンダー表現に関する固定観念に関して、マーケティング担当者と消費者の意識には溝がある」という。2018年の同データによれば、女性および男性のマーケティング担当者の大半は、「広告を作成時にステレオタイプ化を避けている」と考えている。一方、同社の2015年のレポートでは、消費者のうち女性の76%と男性の71%が、「広告で描かれている男性像および女性像は現実と大きくかけ離れている」と考えているというのだ。

ベビー用品、洗濯用品および家庭用洗剤のターゲティング広告は女性向けに大きく偏っている。Kantarのリンク広告テストモデルでは、43カ国9,560社のブランドからの20,000のリンク広告テストを分析。ベビー用品、洗濯用品および家庭用洗剤の広告の98%が、また食品広告の71%と小売広告の60%が、女性をターゲットとしていることがわかった。

 

一方、2017年から2018年の56カ国、計70,000人を分析した、Katarの「Connected Life」によると、ほとんどの家庭内の購買に関する決定は、男性と女性が共同で行われる。

 

「主に食料品を購入するのは男性よりも女性が多いことは事実だが、ベビー用品、洗濯用品、および家庭用洗剤の広告はほぼ100%女性向けであるという事実は、若干奇妙に感じる」と同社はレポート。

 

データによると、ほとんどのテレビ広告(67%)(デジタルでは72%、アナログでは62%)は、両方のジェンダーをターゲットにしている。しかし、広告が特定の性別をターゲットにしている場合、通常は女性をターゲットに選ぶようだ。Kantarの見解に基づくと、おむつや洗濯用洗剤などの商品を女性向けに宣伝し続けるのではなく、ジェンダーバランスの取れたオーディエンスをターゲットとするブランドに大きなチャンスがあると言えよう。

 

Kantarの「Getting Gender Right」の調査結果詳細

  • Kantarの今回の調査では、マーケティング担当者の男性92%と女性の88%は、「肯定的かつ現実的な」女性像を広告内で描いていると考えている。しかし、KantarのGender Equality Measure(男女共同参画測定)データによると、消費者の45%が、広告に登場する女性は「不適切に描かれている」と考えており、女性を尊重した表現だと考える人は40%にとどまった。

 

  • 広告内で描かれている男性について、マーケティング担当者と消費者がどのように見ているかという違いはさらに深刻である。女性マーケティング担当者の79%、男性マーケティング担当者の93%が、広告内の男性像が「肯定的かつ現実的」だと考えており、44%の消費者は男性が不適切に描写されていると考えている。さらに、広告内の男性を尊重した表現だと考える人は、35%にすぎない。

 

  • KantarによるBrandZレポート(世界で最も価値のあるブランドランキング)によると、男女の社員数の偏りが大きい(男性が多い)ブランドは、ジェンダーバランスが取れているブランドより平均で90億ドル価値が低いという。

 

※当記事は米国メディア「Marketing Land」の1/28公開の記事を翻訳・補足したものです。