200年以上続く銀座の老舗煎餅店、松崎煎餅。メインターゲットは60歳以上だが、同社は以前から積極的にEC事業を展開してきた。サイトの構築にはGMOペパボ株式会社のカラーミーショップを利用し、立ち上げから10年以上経った今では売り上げが好調だという。創業家に生まれ、8代目社長として松崎煎餅を切り盛りする松崎宗平氏と、GMOペパボ株式会社でEC事業部副部長兼カラーミーショップグループマネージャーを務める寺井秀明氏の2人を迎え、今注目のID決済サービスやECサイトの在り方について話を聞いた。
——松崎煎餅がECサイトを立ち上げた頃のことを聞かせてください。
松崎:弊社がECサイトを始めたのは10年ほど前ですが、当時は社内のメールアドレスが社長用に1つ、営業用に1つ、工場に1つしかないような非常にローテクな状況でした。僕はその頃に入社しましたが、前職がITのベンチャーだったということもあり、最初は全部自分でWebサイトを作ったんです。ECサイトもその流れで作ろうと思いましたが、さすがにそこまで時間をかけるのはもったいないということで、コーディング部分だけ担当し、あとはITに詳しい社内の人間に任せました。
寺井:松崎社長はIT畑のご出身だったんですね。サイト構築には最初から弊社のカラーミーショップを使われたのでしょうか。
松崎:ええ。もともと個人でサーバーを使っていた関係で、GMOペパボさんのサービスはインターフェイスが使いやすいと感じており、Webサイトを作る時もチカッパ!(2011年まで提供していたレンタルサーバーサービス。現在はレンタルサーバーであるロリポップ!のプランの一部として提供されている)で始めたんです。だったらECサイトも同じ会社のサービスを使った方が親和性も高いだろうと思い、またサブドメインの流用もしやすかったので、迷わずカラーミーショップを選びました。
寺井:ありがたいお話です。ECサイトを作る際、参考にされたサイトはありましたか?
松崎:有名なWebデザイナーの方が手掛けたサイトや、同じ業界の虎屋さんのサイトは参考にしていました。この業界は、決して通販が好調とは言えないので、立ち上げ当初はこんなものなのかなという感じでしたね。システム観点では、当時から決済画面を自作にするか、他社のサービスを使うのか、というカートシステム部分の問題には注目していて、懸案事項だったんです。正直、カートシステムの信頼性はやや不安視していました。
▲株式会社松崎商店 代表取締役社長 松崎 宗平 氏
——GMOペパボでは、松崎煎餅がECサイトを立ち上げる3年ほど前にカラーミーショップの事業をスタートさせています。ここに至るまでのことを教えてください。
寺井:今年で13周年を迎えたカラーミーショップは、もともと個人のクリエイターの方々にご利用いただくことが大半でしたが、機能拡張を重ねる中で、結果として大手の法人やベンチャーの方にも選んでいただけるようになりました。法人の方にもご満足いただける機能が増えたことで、お陰様で現在は44,000店舗ほどのお客様にECサイトとしてご利用いただいています。昨年からはAmazon PayなどのID決済サービスを導入し、今まで以上に法人の方にご利用いただける環境が整いつつあります。
▲GMOペパボ株式会社 EC事業部 副部長 兼 カラーミーショップグループ マネージャー 寺井 秀明 氏
——Amazon Payを導入するカートシステムは増えてきていますが、カラーミーショップではなぜ導入しようと?
寺井:ID決済サービス自体が盛り上がってきたというのはもちろんですが、例えばサイトを訪れるお客様が多いECサイト様でも、商品がカゴに入ったまま購入されないカゴ落ちの問題や、クレジットカードの入力に抵抗があるというお客様の声の多さから、ECサイト自体の売上を伸ばせないというケースをいくつか見聞きしてきました。また、カラーミーショップは、自社のブランドをきちんと持って、モールとは違う形で商品を訴求したいという方に使っていただいているケースが多いのですが、逆に独自サイトゆえに信頼感においていささかネガティブな要素が出てくることも少なくありません。そこで、Amazonのロゴが入った決済サービスを導入できるというのは信頼性という点で非常にメリットがあると判断しました。
——具体的にAmazon Payの良さを教えていただけますか?
寺井:店舗様から見たメリットは大きく3つあります。1つは、先ほどもお話ししたようにカゴ落ちの改善が期待できるという点。個人情報やカード情報、配送先情報などの複雑な情報入力を必要とせず、シンプルな操作で購入できるため、カゴ落ちの防止が期待できます。2つ目のメリットは、新規のお客様の獲得が期待できるという点。例えばテレビで取り上げられるなどメディアでバズった際には、非常に多くの新規のお客様がECサイトを訪れます。ところが一度もそのサイトで購入したことがないお客様が、クレジットカード払いを選択した場合にはカード情報の入力から始めなければなりません。そんな時、Amazonアカウントをお持ちのお客様であれば、AmazonアカウントのIDとパスワードを入力するだけですぐに決済の最終画面に進むことができるので、新規のお客様でも躊躇することなくお買い物ができます。
松崎:確かに最近はスマートフォンからの取引が増えているので、購入における煩わしさは極力避ける必要がありますよね。朝の通勤電車なんかでは、特に女性の方は本当に皆さんECサイトを見ていますからね。
寺井:商品購入が目的でなくても、例えばニュース記事を見ていて気になる商品に出合ったら、その場ですぐに購入したくなりますよね。そこでクレジットカード情報の登録から始めるというのは手間がかかりすぎるので、Amazon Payをきっかけにその場でご購入いただけるような環境を提供できるという点は、弊社としても打ち出していきたいポイントです。Amazon Payの実装によって購入までのステップが減れば、当然その分、コンバージョンレートが上がります。たとえ、集客数を増やさずとも、購入者率が数パーセントでも上がれば結果として売上を増やせるので、ID決済サービスの導入がネットショップを盛り上げるきっかけになればと思っています。
——では3つ目のメリットは?
寺井:もう1つのメリットは、不正取引の防止です。連続して高額商品を購入するなど、不正取引とおぼしき取引があった場合、事前に検知して防ぐという仕組みがAmazon Payには導入されています。松崎煎餅さんでは、ID決済サービス導入後、お客様の反応はいかがですか?
松崎:ID決済サービスの決済率は常に一定数を保っているので、決済シーンにおける気軽さを感じていただけていると思います。松崎煎餅という店舗名を見ただけで、お客様に「ここはIT技術がしっかりしているだろう」なんていうことはなかなか思っていただけないので、たとえ店の商品としての信頼はあっても、クレジットカード情報の漏洩などに関する不安は拭えません。ですから、Amazon PayのようなID決済サービスを導入していると、それだけでお客様に安心感を与えることができると感じています。
寺井:松崎煎餅さんは他のID決済も導入されていますよね?
松崎:決済方法が多岐に渡りすぎてしまうとお客様の抵抗感が増すので、3サービス程度導入してお客様に選択していただくのがちょうど良いかなと思って導入しました。一時は売上を上げるためにアドワーズなども導入しましたが、弊社の場合には広告で得られる顧客層とターゲット層が一致せず、アクセスが増えてもコンバージョンレートは上がらないという状態が続きました。そこで今のように決済サービスを増やすということに行き着いたのです。
寺井:松崎煎餅さんは、現在、銀座の本店、世田谷・松陰神社前のコンセプトストア、オンラインショップの3本柱で店舗を運営されていますが、実店舗とECサイトはどのように棲み分けしていますか?
松崎:基本的には、欲しいものを買うなら全部ECサイトでいいんじゃないかという考え方で、だからこそ小売は小売として必要な部分を残さなくてはいけないと思っています。小売のやるべきことはサービスの提供で、「店でファンを作ってWebで売る」というのが、これからの流れとして正しいのではないかと思っています。そういう意味では、ECサイトもきちんとしていないといけないですよね。我々のメインターゲットは60歳以上ですが、調べると80歳ぐらいのお客様もオンラインショップで買ってくださっていて、幸いECサイトの売上自体も上がってきています。
▲モダンな雰囲気の店内には、看板商品である瓦煎餅“三味胴(しゃみどう)”が並ぶ。季節の絵柄が描かれた三味胴は、好きな絵柄を1枚から単品で購入することができるので、記念日やちょっとした手土産に購入する人も多いのだとか。煎餅のイメージを覆す色鮮やかなラインナップだ。
——では最後に、今後どのように事業を展開していきたいか教えてください。
松崎:私は日本全国に煎餅屋を作りたいと思っています。例えば今は高級チョコレートが人気ですが、それは明治さんなどのメーカーがリーズナブルな商品を作ってコンビニなどで売ってきたからこそ、消費者が価格が高いものにも興味を持ち、売れるようになったんだと思います。煎餅にも、たくさんの路面店舗があって、そのおかげで高級煎餅というものも広く世の中で売れていたのだと思っています。今も亀田製菓さんなどが頑張っておられますが、それでもやっぱり煎餅業界の土台は揺れ始めていて、高いものの価値が見えづらくなっているんです。なので、もう一度、煎餅の正しい価値が理解されるような文化を作れるようにしたいなと思っていて、それは極端な話、日本全国すべての街に煎餅屋があれば解決すると思っているんです。
寺井:そういう意味だったんですね。
松崎:ええ。Webで売れるようにする最大の努力は、リアルで頑張ることなのかなと。最終的に便利なのは絶対にWebなので、Webで頑張るのではなく、Webが最終的なゴールだという認識を持ちながら事業を展開していきたいですね。本当に商品が欲しければいくらでもWebには人が集まりますし、コンバージョンも上がりるはずです。だけどWeb側だけで努力できることというのは、どうしても費用とのバランスが取りづらいですよね。せっかく自分たちで実店舗を運営しているのであれば、そこでブランド力を高めてWebに回帰させたいと思っています。
——カラーミーショップとしてはいかがですか?
寺井:我々はECサイトのプラットフォームとしてより多くのサービスをご提供していくという世界を作っていきたいですね。例えば、実店舗があるお客様からレジとECサイトをうまく同期させたいというご要望や、配送センターだけ外部に出したいといったご要望をいただくことも多いので、いろいろなことをうまく連携していければと思っています。カラーミーショップは以前に比べて法人の方のご利用が増えてきたということもあり、商いをされている方のお手伝いを包括的に行いたいという想いがより一層強くなりました。直近では、7月1日からAmazon Payが最大4か月間、月額手数料が無料となるキャンペーンをスタートしているので、ぜひこの機会にカラーミーショップでID決済サービスを導入していただきたいですね。
リアル店舗での努力をWebの売上に結びつけようとする松崎煎餅と、ECサイトの運営をシステムで手助けするカラーミーショップ。両者が共通して願うのは、カゴ落ちやコンバージョンアップ等の問題をクリアにして、ECサイトを訪れた全てのお客様にご購入いただくことを目指してECサイトの売上を伸ばしたいということだ。そのためには、自社の製品を見直すこと以上に、Amazon PayをはじめとしたID決済サービスを導入するなど、ECサイト自体の使い勝手の良さを追求することが重要なのではないだろうか。
松崎煎餅も利用しているAmazon Payとは
Amazon Payとは、Amazonアカウントに登録されている住所情報とクレジットカード情報を利用して、Amazon以外のECサイトで支払いができるID決済サービス。Amazon Payが注目されている理由は決済だけでなく、Amazonのアカウント情報を利用することで個別のECサイトの会員登録を行わずに購買が完了するからである。AmazonのIDを用いることで、すでにAmazonアカウントに登録されている住所・クレジットカード情報が利用でき、入力の手間なく最短2クリックで購入が完了するため、購入者にとってもEC事業者にとっても非常に助かるサービスといえる。
実際に購入者はAmazonアカウントを持っていれば、Amazon Payの利用によって最短2クリックで購入を完了できる。さらに自社ECサイトに導入すれば、決済サービスの信頼性の向上や決済情報入力の簡略化によるコンバージョン率アップが期待できるだけでなく、購入者の同意等一定の条件の下を得られれば、Amazonアカウントに登録した会員情報も利用することが出来るため、新規顧客獲得やリピート率の向上などの効果も期待できる。
7月1日からカラーミーショップでは、ECサイトの運営を行っている事業者向けに、Amazon Payのキャンペーンをスタートしている(Amazon Pay最大4か月間、月額手数料が無料)。この機会にカラーミーショップでID決済サービスの導入を検討してみてはいかがだろうか。詳細はこちら