ソーシャルメディアにおけるマーケティングとは、フォロワーを獲得するだけではない。コラムニストのAlison Zeringue氏は、企業のソーシャルチャネルを通じてカスタマーサービスを改善し、公の場で、顧客を満足させるためのヒントを教えてくれた。

 

ソーシャルメディアはその登場以来、マーケティング分野において確かに「バズ(噂)」となっている。ビジネスをする上で、マーケティング戦略の不可欠な部分を占めるソーシャルチャネルを必ず活用するべきであるが、過去のソーシャルメディアページの概念から脱却し、“顧客獲得を目的とするマーケティング”という観点のみからソーシャルメディアを管理するときが来ている。

企業はソーシャルメディアを活用し顧客体験を向上させる必要があり、顧客を満足させなければならないということだ。

 

ステージの設定:顧客を引き込み、ターゲットとしないこと

ソーシャルメディアにあまり精通していない企業は、ソーシャルメディアのアカウントを無料広告のパブリッシャーと考えているかもしれない。しかし実際はそうではなく、オーガニックなソーシャルコンテンツへのリーチが減少しているのだ。また、絶え間ない大量の宣伝コンテンツの投稿を喜ぶ顧客はおらず、結果として、顧客は企業に背を向けフォローを外すことになる。

コンテンツの配信スケジュールを作成するときは、フォロワーが何を期待して企業のソーシャルメディアをフォローしているのかを考慮する必要がある。セールやお買い得情報はもちろん、新商品の発売時にはその詳細を知りたいだろう。また、業界ニュースに興味があるかもしれない。

時折の宣伝メッセージに加えて、企業文化を紹介し、顧客からのフィードバックが歓迎されていると感じるような“対話が生まれやすい環境”を構築するべきだ。Instagram Stories(Instagramの投票機能。別名Snapchat2.0)は、顧客の好き嫌いについて調査できると同時に、本当の意味で楽しみながら顧客を巻き込むことが可能な手法の主要例である。

プロのヒント:Storyで投票機能を使うには、スタンプメニューの 「アンケート」スタンプを使用する。 ここでは、質問と2つの回答オプションを入力できる。Storyを見て回答したユーザーは、どちらの回答がリードしているかを確認することができる。投稿者は、Story画面を上にスワイプして、誰がどちらに回答したかを後で確認することも可能。

 

カスタマーサービスへの問い合わせとフィードバックへの対応

多くの顧客は製品やサービスを利用する際、商品やサービスのリサーチ、閲覧、購入といった購買決定をオンラインで行なう。そして購入後のカスタマーサポートへの問い合わせもオンラインにて。オンラインで購入した顧客は、購入後もオンラインで企業とやり取りする可能性が高いということだ。

顧客にとって、ソーシャルメディアが最も迅速で簡単に小売店にコンタクトできる方法である。その顧客が、FacebookやTwitterなどのプラットフォームを使って小売店にコンタクトした場合、そのやり取りは一般に公開されることになる。公開されることにより様々な課題が生じる一方で、オンラインで製品やサービスを販売する企業のマーケティング担当者はまず第一に、これをチャンスとして捉える必要がある。

企業のカスタマーサービスを紹介し、公の場で顧客を満足させるチャンスを得ているのだ。同時にもちろんリスクも上がるだろう。以下、ソーシャルメディアを通じたカスタマーサービスへの問い合わせとフィードバックへの対応について、4つの重要なヒントを挙げる。

 

1.正しいカスタマーサポート担当者を選び訓練する

ソーシャルメディアを介しての顧客体験を向上させる第1段階は、ソーシャルチャネルでカスタマーサービスを担当する従業員または個人を慎重に選択することだ。カスタマーサービス担当者は、企業内の他の誰よりも「ソーシャルを理解する」必要があり、インターンに任せるべき業務ではない。

可能な限りベストな顧客体験を提供するためには、適切なスキルを持つ人材を選ぶことが重要。 直接顧客と会ったり質問に答えたりすることを安心して任せられない担当者候補を、ソーシャルメディアのレスポンダーとして選任してはならない。この業務には、企業の顧客対応ポジションと同じだけのトレーニングが必要なのである。

プロのヒント:私のチームでは、顧客からの苦情、反論、フィードバックに対応するために、略語L.E.A.R.N「listen(聞く)、empathize(共感する)、apologize(謝罪する)、respond(回答する)、and now(対応策の提示)」を用いている。 L.E.A.R.Nは、説明不要なほどわかりやすく、リアルタイムで顧客のことを考え、対応するためのフレームワークを提供する。

 

2.危機感のある対応を行う

時間は非常に重要な要素である。特に、ネガティブなフィードバックに対しては、即時の対応が求められる。企業に対する苦情に対し、回答が得られない場合は、回避、もしくは、無関心と見なされることさえある。使い古された、感情がこもっていない、人間味のない対応は、すでにネガティブな状況をさらに悪化させる可能性がある。

状況を悪化させないためには、ソーシャルでの顧客へのすべての返信をパーソナライズする必要がある。 1日を通してソーシャルチャンネルを管理する全担当者のために、顧客を名前で呼ぶ、誠実に対応する、担当者が時間を割いて苦情や問い合わせに真摯に対応したと顧客に感じさせる、といった基本的な原則ルールを決めるべきだ。問題が発生した場合は、可能な限り対応策を公開することが望ましい。

プロのヒント:問題を調査する必要がある場合は、既に顧客とのコミュニケーションに用いているソーシャルプラットフォームのプライベートメッセージ機能で連絡をくれるよう依頼するべきだ。つまり、顧客がTwitterを通じて企業にコンタクトしてきた場合、カスタマーサービスのフリーダイヤルに電話するように頼むべきではなく、Twitterのダイレクトメッセージで連絡をくれるよう依頼する。更に、言うまでもないことだが、常にプロフェッショナルかつ丁寧に対応しなければならない。

 

3.ポジティブな顧客感情を無視しない

企業は、苦情に対処する必要があることは明らかだが、ポジティブなフィードバックにも反応し、さらに顧客満足を高めるべきだ。口コミを除けば、ソーシャルこそ、すぐに、そして、容易に、顧客が企業のアドボケイト(推奨者)になることができるメディアである。

自身の友人に来店を知らせる店舗でのチェックインや体験の詳細のレビュー、また賞賛する投稿など、いかなる露出も企業にとってはプラスになり、企業はそれらを放置するべきではない。リツイートやシェアをし、企業について言及した顧客にお礼を伝えるべきなのだ。

プロのヒント:満足している顧客をさらに喜ばせるために、割引コード、特典やその他のインセンティブを提供する。これらのツールは、(ご迷惑をお掛けしたマイナス要素からの)サービスリカバリのためだけに利用するべきではない。企業に好意を持つ顧客に、価値ある存在だと感じてもらうことで、その企業の情熱的なアンバサダーになってくれる可能性があるのだ。

 

4.トレンド把握とビジネスチャンス獲得のためにデータを掘り下げる

企業のカスタマーサービスは、個々の顧客に返答するだけが仕事ではない。カスタマーサービスを通じて、あらゆるデータを収集し、トレンド、一般的な顧客の不満、または新機能や新製品へのリクエストを特定するチャンスなのだ。

企業は顧客満足度を測り、ビジネスチャンスを明確化するために調査を行ってきた。 ところが現在は、顧客の方からソーシャルメディアを介して、企業が必要とする情報を直接提供してくれるのだ。

顧客からのフィードバックを記録することは、企業にとって大きな財産となる。 それらは、企業サイトのFAQページ開設や、効果的なインバウンド戦略のためのブログコンテンツの作成、モニターすべきキーワードの特定や、企業内の改善策のために利用することができるからだ。

結局ソーシャルメディアにおいては、 「ソーシャル(社交的)」であり続けることを忘れないことが重要なのである。顧客には価値があり、その意見には時間を割く必要があると考えて対応すれば、フォロワー以上のものを得ることができるかもしれない。企業に対する高いロイヤルティを獲得することができれば、たまに商品を購入するだけだった顧客を生涯のプロモーターに変えることができるのだ。

 

 

 

※当記事は米国メディア「Marketing Land」の10/24公開の記事を翻訳・補足したものです。